ひっそりと群生

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【親戚の男の子を引き取った話】感想

【男性主人公15禁】



2022年05月02日配信
冬紀』様 ※リンク先公式HP
親戚の男の子を引き取った話】(PC&ブラウザ) ※リンク先ノベルゲームコレクション
以下感想です。








知らぬが仏。



『先日、親戚の男の子を引き取りました。
 その子はどうやら親に虐待されていたらしく、身体だけでなく、心の傷もとても深いみたいです。
 なんとか癒やしてあげたくても、方法が全くわからない。
 だからお願いします。この動画を見た方、俺にアドバイスを下さい。』
(公式より引用)



プレイ時間は15分くらい。
分岐無し。


幸太という親戚の男の子を引き取る事に。
幸太は亡くなった両親に虐待を受けていたらしく、ボロボロで寝室から出られないほどに弱っていた。
動画主はナナシジミと名乗り、動画サイトに幸太との交流の日々を投稿し、コメントで幸太の心を開くアドバイスを募る事に。
果たして幸太の心は開かれるのか…?



『システム、演出』
ティラノ製。
メッセージスピード変更無し。
オートセーブ方式の為、コンフィグなどは無かったのですが、プレイ時間的には気になりませんでした。
選択肢は無く、画面の中のクリック出来る箇所をクリックし、話を進めていくタイプになりますが、プレイヤーが気付くか気付かないかによって大きく作風が変わる所にゲームとしての面白さが詰まっていました。


『音楽』
幸太との交流を後押しするような心温まる曲が多く、穏やかで優しい曲が上手く選曲されていました。
さらに効果音の使い方が上手く、コップが割れる音は幸太と同じ用にビクッと震えるようなSEで効果的だったと思います。


『絵』
幸太の一枚絵のみで進行。
痛々しい最初の姿から徐々に回復を見せていく可愛らしい姿にはとてもホッコリ。
笑顔や元気一杯の姿もですが傷付きながら俯く表情など全体に渡って少年へのこだわりやフェチズムを感じました。
画面全体の作りも良く、某動画サイトのような画面の作りやコメント欄などもあり、幸太を見守る一体感がありました。


『物語』
幸太の最初はビクビクしながら虐待に怯える子供の表情や動きの表現が良く、段階を踏んで他人に慣れていく姿が健気で。
動画にしてアドバイスを募るというコンセプト通り、コメントからも温かみがありました。


『好みのポイント』
クリック出来る場所を探す事で得られる情報が広がっていくのが楽しかったです。
あと、作者様のあとがきがとても好きです。





以下ネタバレ含めての感想です





……とは語ってみましたが、クリックした先を知っていると自分の感想ですら「どの口が言うか」状態になっていますねコレ。
シンプルにクリック出来る箇所を探していくゲームになるのですが、ノベルゲーム初心者は笑顔の幸太くんのサムネで終わる方もいらっしゃると思います。
が、それなりにノベルゲームをプレイしているとなんとなーく感じる怪しさが…
その予想の通り、コメント欄にて不穏なコメントがあり、クリックをすると真実が垣間見えてくる作りになっています。


作者様のあとがきにある、「本や映画とは違い、ゲームは"本当にここで終わりなのか?""もしかしたら続きがあるのでは?"がある」というお言葉に激しく頷きました。
そういう「終わった終わった詐欺」のような状態を作り出せるのもゲームという媒体の強みだと思っているので、本作のような「気付いた人には先がある」というゲームの作りはとても大好きで、本作でもそれを味わう事が出来、とても楽しかったです。


…まぁ、エンタメとしては楽しいですが、内容で見ると最悪の邪悪になるのですが……
一応、本作を知った某所にて闇にカテゴリされていたので、「幸太には何かあるはず…」「もしかしたらこの動画そのものが演技のようなもの?」などと予想をつけて挑んだのですが、逆行は予想外でした。
コメントにあるように、背景にある小物の変化には最初気付かず、コメントクリックからの動画再再生には冷や汗ドキドキで。
最後のコメントの「もう遅いかもしれないけど」の一言と削除された動画群に頭を抱えました。
幸太は…もしかしたら…きっと…もう…な不穏な終わり方、闇のED好きとしては素晴らしいです…
逆行モノと知ると本来はきっと健全な両親の元に生まれていただろう幸太がこんな奴の所に引き取られてしまった事の悲惨さをヒシヒシと感じます。


今作の主人公にあたる存在はきっと動画を見てコメントを打つoreという鳥アイコンの人で、動画主とは別になっていたのも「こんなクソ野郎は主人公ではない」という意味ではある意味で優しく。
けれど、初期プレイ段階では幸太が幸せになっていく過程よりも「裏では何かあるのかも…」という闇の方を想像しながら進めていた身としては自分も承認欲求の為に他者を傷付ける動画主と同じ穴のムジナのような人間だなぁと感じてしまい。
そういう「直接手は出さないけれどエンタメとして動画の中の悲劇を消費するのを楽しむ人間」というのも突き付けられ、プレイヤーの邪悪さも浮き彫りにさせられた感があって「やられたなぁ」という気持ちにもなりました。
でも、おそらく、プレイヤーの大人数がすぐ近くに見える優しい世界よりも奥に隠された悲劇を見たがってると思います(偏見)…特にノベルゲーマーならおそらく、きっと。


作者様のあとがきもまた秀逸で、最初のあとがきで「いつも闇の作風だから今回は~」みたいなお言葉に対し、トゥルーED(?)を見ると自分の上記のネタバレ含めての感想最初ように「どの口がおしゃるか…」とも思いますし、上記でも書いた通り、「まだ先があるのでは~」の感覚にはとても頷かせて頂きました。
こういう作者様の「あ、貴方がそれをおっしゃるか!!?」みたいなあとがき、本当に好きです。
おそらく今作は気付かない人やGOODなEDが好きな人は第一ED(GOOD?)、気付いたり邪悪なEDが好きな人には第二ED(トゥルー?)という想定で作られていらっしゃるのだろうなぁと。
そして、どちらのEDもきっと正しいのだろうなと、そんな風に感じ。
ゲームとしての可能性と、動画から溢れる人間の承認欲求の邪悪さを感じるとても良い作品でした。