ひっそりと群生

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【キリンの国】感想

【男性視点全年齢】



2014年09月10日配信
スタジオ・おま~じゅ』様 ※リンク先公式HP
キリンの国】(PC) ※リンク先ふりーむ!
以下感想です。
必然的に前作「みすずの国」のネタバレも若干しています。








歴史から取り残されたような「天狗の国」で二人の男が熱い友情と熱い夏を駆け抜ける"最高の夏"の物語。



『京都丹波の山奥にある、鞍馬特別行政区。通称、天狗の国。
 そこでは天狗とよばれる民族が、独自の文化をもって暮らしていた――。

 ある日、キリンと圭介のもとに、一通の手紙が鞍馬特区から届く。
 それは鞍馬のお姫様、ヒマワリ姫からの招待状。

 夏休み。

 キリンと圭介は、二人、旅にでる。』
(公式より引用)



プレイ時間は約5時間30分くらい。
選択肢は無し。
前作未プレイでも推奨。


スタジオ・おま~じゅ様の作品は『みすずの国』(※リンク先感想)に続いて2作目プレイになります。
「みすずの国」もでしたが、昔ながらの生活の中で人々が息づく「天狗の国」の描き方がただひたすらに素晴らしく。
息を吸い込めば夏草の匂いが香ってくるような、耳を澄ませば「天狗の国」の人々の生活音が聞こえてくるような…
そんなゲーム越しからも伝わる情景描写に溜め息しか出ませんでした。


人々の営みもですが、今作の語り手であり主人公でもある少年の圭介と、タイトルにもなっているもう一人の主人公である少年のキリン。
どちらの主人公もとても魅力的でどちらの生き様も輝いていて。
キリンは自分の決めた事を絶対に変えない一途さと信念があり、圭介はそんなキリンの面倒を見つつも見捨てず絶対に付いて来て助けてくれる情があり…どちらの男性も見ていてスッキリするくらいに格好良い主人公でした。
作品の本来の目的から「キリンが初恋の相手に会う為に追放された国に行く」という恋愛物に見えましたが、恋愛物というよりも男同士の熱い友情物で…少年漫画的な熱い友情と戦闘描写に作者様が得意でいらっしゃる郷土学や民俗学的な生活感と空気、そして国シリーズの設定が上乗せされて独自の世界観と作風が形成されていました。


どの場面も30分くらいの単位でこまめにタイトルが入り途切れ、ダレる事が無くサクサクと読み進む事が出来、随所から夏を感じる事が出来ました。
そして、何よりも、圭介の目線になってキリンを追う事で、「子供の頃」を思い出すような気持ちになりました。
子供の頃に感じたあの夏を再び感じる事が出来ました。
プレイ中の2020年の夏は様々な事が重なり外の夏の空気に触れる事が中々に出来ない状態ですが、今作をこの夏にプレイできた事に感謝します。
家の中で、パソコンの前で、"最高の夏"を感じる事が出来ました、有難うございます。



『システム、演出』
Nscripter製。
基本性能は揃っていました。
今回Nscripterになった事で前作の吉里吉里と性能差があるか?と思いましたがそんな事はなく。
読みやすく使いやすかったのでとても集中して読む事が出来ました。


『音楽』
素材曲、選曲はピッタリ。
作風もあり和のテイストの曲が多いのですが、ここまでピッタリと合致する作品も珍しいと思います。
特に煉獄庭園様の和風BGMが素晴らしく合致したのと、ここぞ!という時に流れるピアノ曲が最高で…
どの曲も本当に素晴らしくクリア後に音楽鑑賞モードが欲しいくらいでした。


『絵』
ここまで描きますか…というくらいの量でした。
立ち絵の差分がとにかく多く…「みすずの国」もでしたが、キャラクターの一挙一動に妥協が無さ過ぎます!!
キャラクターが食事するシーンに専用の立ち絵があるのは当たり前、物を担いだ時に担いだ立ち絵があるのは当たり前…
一箇所でしか使わない立ち絵ばかりで目眩がしました。
もったいなさすぎて「このシーンでしか使わないだろうな…」と思った立ち絵をしばらく眺めていた程。
一枚絵も「ここ!」という場面で必ず入りますし、キャラクターが立つ夏の草原や祭りの風景など、背景から全部描かれていらっしゃるイラストも多く、キャラから引いて背景と一緒に写ったイラストが大きく表示される瞬間には夏の風が通り過ぎたような気持ちになりました。
そして何よりも描写される料理が美味しそうで…素晴らしかったです。


『物語』
文章は読みやすく丁寧で、所々で入る天狗の国の物産品の名前や郷土料理の名前が世界観を更に広げていました。
情景描写と雰囲気から日本人なら誰しもが感じる郷愁が作品の随所から感じる事が出来て。
特に郷土料理に関しては見ているとお腹が空いて空いてたまりませんでした。


『好みのポイント』
「今の時代の流行りに頼らない」そんな作風がとても好きです。
とても普遍的で全ての人に受け入れられるような…そんな物語で…
「スタジオ・おま~じゅ」のサークルロゴから察するようにおそらく某有名アニメ映画制作会社様からリスペクトしている部分が多く見えますが、作品をリスペクトというよりも、そういう普遍性をリスペクトしているように感じました。
話の流れ自体は穿った所は無く、本当に純粋にストレートな物語で。
良い人と悪い(嫌味な)人が分かりやすく、とても受け入れやすく。
その中でほんのりするような甘い恋愛があり、主人公達の格好良い生き様があり。
今作はきっと、この普遍性で10年後も20年後もそのまま美しく有り続けるのだと思います。





以下ネタバレ含めての感想です





ヒマワリ姫が出てくれた!嬉しい!!
そんなに沢山は出ていないのですが、「みすずの国」でヒマワリ姫がとても好きだったので大変心が踊りました。
「みすずの国」では活発なヒマワリ姫が今作では恋する少女になっていたのには思わずニヤリとしたほど。
ヒマワリ姫が語っていた、おクワさん、幼馴染の男の子のキリンなどなど、前作で語られて「それはまた別のお話」とされていた存在が今作で沢山見れたのがとても楽しかったです、こういう所が連作物の醍醐味だと思います。
最初の会議のシーンから考えると今作は「みすずの国」よりも前の話になるのかな…と。
ヒマワリ姫が「女性に成った」という描写や「みすずの国」の冒頭で月のモノの話から始まった事を察するに多分「キリンの国」→「みすずの国」で合ってるはず…多分…構造考察系は苦手なので合ってなかったら申し訳ない。
でも、「みすずの国」では簡単に入れた天狗の領域に入るのも一苦労な所が立場の違いを感じました。
そしてヒマワリ姫が乙女で乙女で!!姫なのもあって今後簡単には結ばれないでしょうが、キリンと結ばれて欲しいです…
でも、作中で「天狗の時代は終わる」という表現があるので、この閉鎖的な環境は今後変わって行くのだろうなとは思いました。
そこに二人が結ばれる未来があると信じたいです。


ヒマワリ姫に会うお話で、ヒマワリ姫大好きなのですが…今作は完全に男二人の熱い友情のお話だったと思います。
キリンの人とはズレたような言動で振り回される圭介だけれど、教室を抜け出すシーンは凄く神秘的で…
色々と型にはまった生活をしているけれど、キリンと一緒に飛び出せばきっと夏を感じる事が出来る!
それが伝わり二人で学校を飛び出して旅に出る…
あぁ…凄く懐かしい気持ちになりました。
子供の頃の万能感、あの頃は何でも出来た、そういう気持ちを思い出しました。


後半のキリンを救うシーンも…どんな目にあっても立ち上がる圭介、そして庇ってくれるホオズキに涙腺が刺激され。
進んで進んで、危ない目に合っても、危ない場所に言ってもそれでも進んで。
作中しっかりと語られませんが圭介にも超過者と偽るような天狗としての過去があって。
もう認められるくらいに、自分が認めるくらいに頑張って倒れて…それでも尚、立ち上がって。
圭介が本当に格好良くて仕方が無かったです。
キリンが目覚めた事で限界と安心によってフェードアウトする所が…これはキリンが中心の物語だけれども同時に圭介の物語なんだとも強く感じ。
正直、キリンが覚醒した後に起こった事も見たかったのですが、エピローグで圭介が元気そうにしていたのに凄く安心しました。
(それに、覚醒したキリンが無双したのだろうというのは分かりますし…絶対に強い…)


『自分でいられないくらいなら、死んだほうがいいんだ!』


自分を絶対に見失う事の無いキリンと、自分を一度見失い生活していた圭介。
キリンと出会った事で自分を取り戻し、キリンの為にただひたすらに突き進む。
どこまでも真っ直ぐに格好良い二人。
好きな子の為に真っ直ぐ一生懸命になる男の子と、大事な友人の為に真っ直ぐ一生懸命になる男の子のお話で。
その上で少年のまま夏を駆け抜けるようなお話で。
凄く少年の心を刺激されるお話だと感じました…これ、正直、少年時代を経験した人がプレイしたら凄まじく心を揺さぶられるのが分かります…
今作を1000%の状態で楽しむ事が出来るのは多分、少年を辿った人だと思います…自分も心揺さぶられてとても好きですがそれでも多分敵わないなと思う所が大きかったです。
井上◯水さんの「少年◯代」という楽曲がとんでもなく似合う作品だなと思いました。


夏に相応しすぎる作品でした。
根底はどこまでも変わらない日本の夏と、恋と、友情と、人々の生活と…
とても普遍的で大事な物がそこかしこにある物語で素晴らしかったです。