ひっそりと群生

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【雪子の国】感想

【男性主人公全年齢】



2017年08月11日発売
スタジオ・おま~じゅ』様 ※リンク先公式HP
雪子の国】(PC) ※リンクBOOTH
以下感想です。
必然的に「みすずの国」と「キリンの国」のネタバレも若干しています。








逃げてきた所がある。失った所がある。その先で二人は…出会った。
変わらないものは無い。きっと人はどんな理由でどこに行っても誰かには出会うのだろう。



『舞台は風光明媚な地方城下町。
 そこでは不可解な連続怪奇事件がおこっていた。

 夜な夜な屋根にのぼる、少女の霊。
 神社に灯る、狐火。
 人を取り込む、峠の魔。
 五十年前の神隠し。

 全ての謎は、一つのメッセージへと帰結していく。

 「俺たちで謎を解き明かそうぜ!」

 東京の少年ハルタと天狗の少女雪子がおくる、青春ハートフルラブコメディ+地方都市ミステリー!

 やがてくる冬は、最後の冬になる。
 少年と少女でいられる最後の時を、鮮烈に駆ける、今を生きる物語。』
(公式より引用)



プレイ時間は約9時間45分くらい。
選択肢は無し。
前作未プレイでも推奨。


国シリーズを『みすずの国』『キリンの国』(※リンク先感想)と続けてプレイして来ましたが、スタジオ・おま~じゅ様の形作られる世界は本当に素晴らしいと再確認しました。
生きている、この作品の中の人物達は間違いなく生きているのです。
生活音が聞こえます、季節が変わるのを感じます、彼らが生きている姿が直に見えるのです。
今作は夏~春先の約一年の物語なのですが、登場人物達の過去や生き様が余すところなく描かれていて…
彼らの過去が垣間見える度に彼らの性格や行動原理に矛盾が無く深みが出て、血肉の通った人間をしっかりと描いていました。
人間だけではなく、町や国なども丁寧に細やかに描かれ、人を描いただけでは表現できない、彼らが足を踏みしめる大地…地盤、故郷などがまるで本当にあった歴史のように形作られていて…
時は止まらない、人も、町も、国も、必ずいつかは消えていく、滅んでいく…
諸行無常」という言葉がこんなにも当てはまる作品も中々に無いと思いました。


「天狗の国」は滅びる、人は歳を取りいつかは大人になる。
彼も彼女達も変わり同じ場所に居続ける事は出来ない。
それでも、その中で新しく踏みしめる大地があり、新しく紡ぐ関係がある。
そして…きっと、変わりゆく中ででもほんの少しだけれども「変わらない大事もの」もある。
「変わらない大事なもの」を探し、見つけ、抱えて生きていく一年間の壮大な物語でした。



『システム、演出』
Nscripter製。
基本操作は「キリンの国」と同じく揃ってます。
今回は「キリンの国」よりも起動が早く有り難かったです。


『音楽』
今作からオリジナル曲がありどれも素敵でした。
BGMが入っている初回版を購入していて良かったです。
特に「childreninwinter」と「いろなき風」が好きです。
「childreninwinter」は流れるシーンも相まってズルいです、涙腺が刺激されます。
「いろなき風」は「ここから始まる!」という気持ちになり、高揚感がたまらないです。
もちろん素材曲の使い方も素晴らしく、和風の曲は国シリーズにはピッタリでした。


『絵』
国シリーズの立ち絵枚数は尋常じゃないです…
「キリンの国」同様、一枚しか使わない立ち絵がわんさかと出てきます。
その上で今回は夏~春という一年の物語で、登場人物達が季節に合わせてコロコロと洋服を変える姿は見ていて楽しかったです。
それぞれのセンスが溢れた服選びをしていて、洋服からも性格が垣間見えました。
一枚絵もピンポイントで必要な時に挟まり。
どの一枚絵も素晴らしいのですが、釣りをしていたり、稲穂の中に立っていたり…季節を感じる一枚絵はシーンも相まって美しすぎました。


『物語』
あいも変わらず一行一行が短く、分かりやすく、ノベルゲームに適した文章でとても読みやすかったです。
その読みやすい中ででも特殊な用語や難しい状況が入って来ますが、それでも端的に分かりやすい表現を使われるので置いて行かれるという事が殆どありませんでした。
「国」に関しての政治的な話題や作中設定の特殊な状況などが出てきますが、どの状況も状況自体は難しくも文章で難しさを感じる事は無く…
地頭が悪い自分でも付いて行けたので、作者様の素晴らしい手腕とはからいだと思います。
文章の単語一つ一つや所々で出る民俗学の知識からも学を感じて…ご自分が得た学を創作物として形作られているのが本当に凄いです。
文章が読みやすいのもですが、20分くらいの頻度で細かく区切りが入りキリが良く、シーン毎で楽しいひとときや何らかの動きがあるので飽きる事も無くサクサクと進む事が出来ました。
登場人物達が出会い、彼らの追い求めている「町の不思議」が姿を表すにつれて彼らが後に抱えた悩みや過去が明らかになり。
解決したり受け入れたり、彼らが前に進む姿は時に格好良く、時に情けなくも彼らが肩を寄せ合う姿は美しく。
かけがえのない仲間を得る、そんなお話でした。


『好みのポイント』
子供である今を全力で楽しめ!山陰ストレンジャーズを結成し、数々の不思議を追っていく主人公達。
「夜な夜な屋根にのぼる、少女の霊。」「神社に灯る、狐火。」「人を取り込む、峠の魔。」「五十年前の神隠し。」
町と周辺の不思議を、楽しい事を全力で追っていく彼らはとても楽しそうで…
「キリンの国」では夏を全力で駆け抜けましたが、今作では子供の今を駆け抜けて…そしてその先で大人になり。
逃げた場所は確かにあった、逃げ込んだ先はとても素敵な所だった。
じゃあ、大人になったら逃げた場所とどう向き合うのか?
大人になっても素敵な場所に居続ける為には逃げた場所とどう一度話し合い、折り合いをつけるのか。
子供の逃避行でもあり、けれど、逃避行するだけではなく、大人になりしっかりと逃げた場所にもけじめを付ける。
子供の頃の万能感だけが描かれる事は無く、皆が綺麗に納得する事は無く、どこかにしこりが残ってしまうそんな大人の関係もあり、都合良く終わらず、子供の万能感から大人のままならなさまで、子供から大人になる過程が描かれていて…
過ぎ行く時は戻らない、諸行無常
けれどそんな中でも傾蓋知己の出会いもある。
時代は国シリーズの中では現代を描きながらも、やっぱりどこか懐かしく。
郷愁を感じる所がとても好きでした。





以下ネタバレ含めての感想です





時代軸的には「キリンの国」→「みすずの国」→「雪子の国」になると思います。
美鈴が出てきた上で、あんなに落第生だったのに立派になっていたり、祐太朗も立派だけれども結婚に失敗していたり。
ヒマワリに子供が出来ていたり。
ウルマがホオズキが取り込まれそうになった際に助けてくれたり…
国シリーズを通していると各キャラクターの成長を嬉しく感じる展開が目白押しでした。
虹子はヒマワリの子供だと明確に分かりますが…父親は語られなかったのが凄く気になります…
個人的にはキリンだったら嬉しいのですが…国の事や地位の事を考えると政略結婚の可能性も捨てきれず。
でも国が崩壊しているので案外その辺りが緩くなっていたら良いなと思いつつ…個人的にキリンと結ばれていて欲しいです。


「キリンの国」ラストで示唆されていたのでそこまでの驚きは無かったのですが「国の崩壊」に関しては時代を感じました。
本当に諸行無常
各キャラクターは成長している中で虎彦は安定感が凄く。
どこまでも小物で有り続ける所が虎彦だなと思うのと同時に、雪子との対比がとても良かったです。
亡国に、過去の栄光に縋り停滞し続ける虎彦と、亡くなった国を受け入れ強く前に進もうとする雪子。
水が止まったら腐ってしまうように、人も止まったままでは腐るという姿がしっかりと描かれていて。
祖父との思い出や国が失われていく姿を見ていても尚、立ち続ける雪子は本当に強いなと。


「強く可愛い雪子ちゃん」…本当にその通りです。
今作はとにかく雪子が強くて。
最初は失った国…祖父との思い出の場所の再興を求めていたけれども、諸行無常の流れを感じ、時代を感じ、流れ行く時を受け止めて「失った物は戻らない」と過去ではなく未来を見つめていく姿が本当に格好良く。
諦めたのではなく時代のあるがままにを選択する姿がとても逞しかったです。
国シリーズのタイトルになっているキャラというのは「自分がしっかりと有り、ブレない強いキャラ」なのかもしれないと思いました。
そんなキャラクターそのものが「揺るぎない一つの国」である…そんな風に思っています。


今作の主人公のハルタも、最初は逃げだったのかもしれないけれど、逃げた先でも気になった事や楽しそうな事にグイグイと首を突っ込んでいくタイプで。
若干乙女心が分かってないデリカシーの無い部分もありますが、前作のキリンに近い「自分の興味のある事にグイグイと突き進んでいくタイプ」でありながらもキリンよりも現実を見据えている所があり…
キリンが小学生男子なら、ハルタは中学生男子のような、そんな子だと思いました。
どちらも「少年」である事には変わりなく、青春を全力で駆け抜けていたなーと。
ただ今作は、「最後の子供時代」だとも思っていて。
自由に、奔放に、人の目を気にせずに、全力で子供を満喫する、満喫出来る…まさに「最後の青春の一年」だったと思います。
ハルタはこう…グイグイと突っ込む所が好き嫌い分かれそうですが、個人的には突っ込んで行くけれども一番踏み込んで欲しくない所の一歩手前では立ち止まれる聡い所もある主人公で個人的には好みでした。
「哀しい方に流れていってしまう」という部分だけが気がかりですが…でも、だからこそある意味で強く逞しく、けれども一番孤独だった雪子と添い遂げたと思っているので…運命的だなとも感じています。


全ての出来事が一本の線で繋がって行く流れが大好きなので、後半の怒涛の展開はとても好きです。
ユウとか…本当に良い友人キャラで…とても好みで今作で一番好きなキャラで。
前々作のヒマワリ姫といい、前作の圭介といい、スタジオ・おま~じゅ様はとても良い友人関係を描かれます。
こんな友人関係を築けたらなーという個人的理想形です。
後半のホオズキ救出シーンも。
かなり幻想的な空間と展開で、個人的こういう抽象的な流れが得意ではないのですが、国シリーズの独特な世界観。
天狗という存在が居て、当たり前に不思議な事が起こる事が前提の世界観なので凄く自然に受け入れる事が出来ました。
得意でない物が違和感なく受け入れられるというのは本当に凄いです。
確固たる世界観やしっかり固まった民俗学、そこから形作られる溢れ出る郷愁がそういう抽象的な演出を可能にしていたと思います。

どこもかしこも素晴らしく、まさに最高の出会いに溢れた一年間の物語だったのですが、一点だけ、個人的な好みの部分で申し上げるなら…
ハルタに!ハルタにデレが少ない事!!
雪子はハルタ好き好きオーラが出ていますが、ハルタが雪子に対してのデレが少ないように感じて…
デレが少なすぎて最後の「早春賦」で一瞬、「あれだけ熱烈な告白を受けたのに雪子と別れたのか!!?」と不安になりました…けじめを付ける為に東京に戻ってて別れてなくて娶る気満々で良かったです…
いやね、後半で婚約宣言かましますし、初夜を求めた雪子に対して「逃げた先では出来ない、20歳になったら迎えに来る」とか行動とかはかなり格好良いなとは思うのですが、もう少しデレが欲しかったというか…
雪子7:ハルタ3くらいの好きの比率な気がして…
作中で「恋とか愛とかをハッキリと線引したくない」みたいな事を語るので、分かる、そういう気持ちは分かりますし、そういう関係はとても好きです!!
でも…こう…もう少し雪子にドキッとするようなシーンが欲しかったなーと思いました。
雪子の強さに惹かれていく…ドキドキする…みたいな、そんなシーン。
そういうシーンがあまりないので、「雪子の哀しさに惹かれた人」みたいな感じになってしまって…
そういう部分もあるのでしょうが、もっと雪子の強さに惹かれたシーンが見たかったです。
それがラストの雪子が海に潜ってまで助けて告白して受け入れるシーンなのだと思いますが…
もっともっと「強い雪子ちゃん」に惹かれてデレるハルタさん、見たかったなーと思いました。
東京でどんなに女の子に声をかけられても雪子一筋なのと、天狗と添い遂げる事がこの世界でどんなに難しいかを知っていれば、ハルタの覚悟や雪子に対する気持ちがどれだけ本当かはしっかりと伝わって来るので…これは完全に好みの問題になります。
(あと、前作のキリンがヒマワリ姫好き好きーだったので、これくらい落ち着いて見えるのも有りだなとは思うのと、キリンの「小学生男子」な恋愛表現に対してハルタは「中学生男子」的な恋愛表現だなとも思ってます。)


本音を言い合う女の友情だった「みすずの国」、熱い男の友情だった「キリンの国」、どの国シリーズも素晴らしいですが…やっぱり自分はボーイミーツガール物が大好きなのだと実感しました。
前2作があった事でキャラクターの関係も一応は全員理解出来ている上で、町や国、そして歴史の諸行無常を感じさせながら、それぞれのキャラクターの過去や気持ちと向き合い、山陰ストレンジャーズの強い友情を描きながらもハルタと雪子がお互い惹かれ合うボーイミーツガール物の流れを組み、逃げてきたものとしっかりと向き合い折り合いや精算をつけ子供から大人になり添い遂げる…
話は一年間の物語でありながらも大きな人生を一本見終えた気持ちになりました。
本当に、本当に素晴らしかったです!!
今作を初回版で購入していて本当に良かったです…


国シリーズは次回、「みすずの国」で登場され、今作でも何度も名前が登場した「ハルカの国」に続くとの事。
クラウドファンディングはひっそりと参加させて頂きましたが、国シリーズを3作プレイして改めて参加出来て本当に良かったと心から思いました。
「ハルカの国」も必ずプレイさせて頂きます!


故郷を失うとはどういう事なのか…
現代日本で田舎ではありますが廃村になるほどの所に生まれた訳ではない自分にはきっと完全には理解する事が出来ない気持ちだと思います。
けれど、いつかは自分の実家が無くなったり、ゆっくりとではありますが住んでいた場所も形を変えては行って…
子供の頃にあった場所が無くなったり…同じ風景は二度と見る事は無い、けれどいつかどこかには帰る場所はあるのだと強く感じました。
自分の辿った時代ではない、けれど、どこか懐かしいと感じる、そんな風景を見ているような。
日本人の心に深く響く郷愁を感じさせる作品に出会えた事に感謝します。