ひっそりと群生

ひっそりと持ってるCDの情報やゲームの感想上げたり。購入物の記録など。気ままに。飽きっぽいので途中で止まったらご愛嬌。

【メタの神様】感想

【群像劇18禁】



2022年08月04日配信
ポロンテスタ』様 ※リンク先公式HP
メタの神様】(PC&ブラウザ)(18禁) ※リンク先エロゲと饗(18禁)
以下感想です。








信じる者は救われる。
救われたい部分のみ祈り給え。



『●学2年生の葉山姫(はやま・ひめ)は無職で酒浸りな父親と2人暮らし。
 姫は毎晩、マッサージと称した性的行為を強要されていた。
 肉体的快楽に溺れ、自分が変わっていくことに恐怖心を抱く姫。
 藁にも縋る思いで、所属している宗教団体の神
 アマツカガミノ様へ救いを求める。』
(公式より引用)



プレイ時間は約1時間くらい。
分岐有り。
攻略は『公式サイト様(18禁)』にあります。


父親から性的虐待を受けている葉山姫。
姫の事を知り助け出そうとする兎村天満。
姫の父に取り入りながら姫の虐待を探る海亀かなめ。
三人の思惑と人間関係は入り混じり、物語は一つの救いへと向かっていく。
「援交」「性的虐待」「宗教」。
アングラにアングラを重ねたような世界観の中、祈りは神へ届くのか?



『システム、演出』
ティラノ製。
基本性能有り。
チャプターが細かく区切られており、タイトル画面からも各チャプターに飛べるので、操作性はかなり良かったです。
エロシーンでは画面のスクロールなども活用されており、女の子の体を舐め回すように見るような演出が悲壮感を際立たせていました。


『音楽』
タイトル画面の音楽からエロゲらしさを感じる選曲と、嫌なシーンでの不穏な曲。
EDでの救いはあるような…でも、全てが救われているわけでは無いような、明るい曲により、明るさが全面に押し出される事により感じるモヤッとした空気。
「全キャラクターが救われているわけでは無い」…そういう空気を感じさせる曲から感じました。
あと、全体的に「エロゲ!」というのを強く感じさせるBGMが多く、選曲が良かったです。


『絵』
メインキャラには立ち絵有り、ドット絵のような絵柄がどことなくレトロゲームを彷彿としており、懐かしさがありました。
表情差分が多く、相手を苦手がっている時の表情がとても良かったです。
エロシーンではかなり一枚絵が多く、エロのシチュは父親からの性的虐待など汚いオッサンエロのみになりますが、オッサンの立ち絵は無い中で、一枚絵で脂ぎったオッサンの肉体と舐め回す口元の影絵がしっかりと表示され、「汚さ」においては抜群の表現をしていました。
純愛要素は無いので好みは分かれるかと思いますが、「汚いオッサンからの陵辱」という好みさえ合えば物語の救えない展開と合わさってとてもエロさを感じるかと。
エロのみを鑑賞出来るモードもある為、実用性もバッチリかと思われます。


『物語』
要素の一つ一つはとても暗く、父親の性的虐待により虐げられている娘の救済物語…では確かにありますが、それだけに留まらないのが中々にコクが有りました。
虐待する父親も、虐待を受ける娘も、娘を助けようと行動する側も、全員に満遍なく暗い要素が備わっており。
正義と悪と、白と黒とハッキリと分けられない、そんな灰色な部分で満たされた作品でした。
全員満遍なくどこかクズであり、利己的に行動していて。
「救いたい」という気持ちがありながらもどこかで「こうすれば自分も得をする」という打算で動いており。
醜い人間達が蠢く醜い世界の物語で非常に毒がありました。


『好みのポイント』
選択肢でEDが分岐しますが、「完全に全員が救われる」という事が無いのが世界観と合わさって魅力的でした。
この人を助ければこの人が救われない、この人が救われればこの人が終わる。
そういうバランス感覚でEDが分岐する為、悪人だけ裁かれて善人が全員救われる…という展開は無いです。
というか、そもそも、本作には完璧な善人は居ない為、「善人が救われる事」自体が無いです。
そういう人間達の歩みが本当に不安定でグラグラしており、ポップな絵柄と合わさる事で余計にアンバランスさを引き立てていて。
独自の世界観を作られており、その独自性がとても面白かったです。





以下ネタバレ含めての感想です





娘に性的虐待をする父親が最も救えない中で…
可愛そうな自分に酔いしれながら救いだけ願い行動を起こさない娘の姫も救われず。
姫の兄、宝の植物状態の原因であり、夢の中で宝から姫を救って欲しいと願われ、姫が可愛いからワンチャンあると救おうとする天満も救われず。
天満から姫の現場を押さえて欲しいと頼まれ、姫の父に援交で迫り肉体関係を楽しみ、同時に趣味であるスプラッタ行為も行えるという理由で姫の件に手を貸すかなめも救われず。
父親が壊れる原因を作りながら夢の中で天満に助けを求めながらも、天満の窮地を願い、天満が父に襲われ意識が危うい中で天満の肉体を狙い天満との肉体交換を企む宝も救われず。
そんな誰一人救えないような人間ばかりの詰め合わせセットで満たされた世界で驚きました。


どのEDも必ず犠牲者が出て、嫌ーなEDを迎えるのですが、彼らの本性を知れば知るほど「いや、なんかもう、誰が助かるとかどうでも良いや」とプレイヤーに思わせる話の流れは本当に秀逸。
そういう流れを辿りながら、プレイヤーを「メタの神様」として重要箇所で「神の力」として本来なら人の力では何ともならないような、一種の「奇跡」を起こすかのように選択肢が現れるので、プレイヤーに「どうでも良い」と思わせながらもしっかりと作品の重要部分で介入させるという…いやらしい「メタでの関わらせ方」をしてくる作品で、本当に性格が出ていました(褒め言葉)。


「HAPPYEND1・パパのお嫁さん」は天満はお亡くなりになりますが、現状維持で父親は咎められる事は無く。
父親が大勝利で終わるEDになります。
あと、かなめさんはニッコニコでスプラッタ出来てるので楽しそうです。
「HAPPYEND2・畜生道へ落ちる」は一番最初に攻略無しで辿り着いたED。
天満が気絶している内に事が進み、いつの間にか父親は姫に殺され自由に。
けれど、父親との子を生んだ姫は今度は自分が娘に父親と同じような性的虐待を行っているという、蛙の子は蛙ED。
「HAPPYEND3・お兄ちゃんが神様」は天満と宝が肉体交換を行い姫を宝が救い出し宝の大勝利ED。
けれど、天満は宝の肉体で植物状態になり、他EDを見るとおそらく近い内に宝の肉体は死ぬので…天満は保たないと思っています。
「TRUEEND1・光の世界」はTRUEという名目ではありますが、姫は救わず、父親も特に罰さず、宝とも肉体交換しない為、葉山家はそのまま放置に。
けれど、天満はずっと引きずっていた宝との事や宝が出てくる夢から開放され、自由になるというEDで。


…いやぁ、改めて文書にするとどのEDも酷い(褒め言葉)のですが、TRUEが葉山家放置が真実のEDというのが中々に好きでした。
父親も、姫も、宝も、わりと精神状態が酷く利己的な人間ばかりで関わると碌な事にならない一家なんですよね…
天満が宝にした事は最悪ではありますが、精神世界での宝との会話で、宝も「憎んでは無いけど贖罪する気持ちがあるなら肉体が欲しい」とか言っちゃう為、人の罪悪感に漬け込み邪悪な事を無自覚に貫き通すタイプなんだなーというのが伝わり。
「行われている事は最悪だけれど、関わると周り全てを地獄に引きずり込むタイプ」なんですよね葉山一家。
なので、序盤を見ると「父親をなんとかして姫を救出したい!」と思っていましたが、進めば進むほどに「いや…こんなに本人達が泥沼から這い上がる気が無いなら別に良いのでは?」という気持ちになり、かなめから姫に対しての「演技してるでしょう?」という問いかけを聞いた時に、被害者が自分の被害に酔っているタイプで逃げる気は無いと悟り、かなり「うわぁ…」な気持ちに包まれました。
正直、こういう家庭でも助けなければいけないとは思いつつ、でもそれは天満がどうこうする問題でも無いので、TRUEの葉山家放置を見て、「ある意味で正解、あとは警察や福祉に任せよう…」となり、TRUEにとても納得しました。


胸糞の状態から始まり、救済の為に進むか…と思いきや、誰も彼も救われない精神構造の奴らばかりという、とても邪悪な作品でした。
プレイヤーは「メタの神様」ではありますが、まぁ、TRUEがTRUEしてて良いと思います。
「悲惨な事への救済は確かに必要だけれど、あまりにもあまりな人間なら救いの手を伸べるのも躊躇う」
ある意味での人間の本質だと思います。
自分も人間なので「メタの神様」ではありますが、救済する手を伸ばすのを躊躇いました。
どのEDが良いかと言われると…とても悩みますが、一応は一番最悪なのは父親だと思うので、「HAPPYEND1」か「HAPPYEND3」を求めたい気持ちはあります。
その場合、姫の娘と天満が悲惨ですが…
そういう、「この人は救われるけど、でも、逆にこの人が…」となり、救済の選択を悩ませるという部分でプレイヤーを試す。
全員が救われる事は無い、ならば貴方はどうする?
そんなトリアージのような選択を迫られる、暗く、ポップで、邪悪な、面白い作品でした。