ひっそりと群生

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【真昼の暗黒】感想

【ダブル主人公15禁】



2018年08月17日配信
Summertime』様 ※リンク先公式HP
真昼の暗黒】(PC)(15禁) ※リンク先ふりーむ!
真昼の暗黒】(PC)(15禁) ※リンク先夢現
真昼の暗黒】(PC&ブラウザ)(15禁) ※リンク先ノベルゲームコレクション
以下感想です。








誘拐された姉、残された妹、妹の平穏な…けれど既にどこか危うかった日常は簡単に脆く崩れ去った。
やって来たのは微笑みを絶やさない謎多きカウンセラー、彼と彼女は誘拐犯を捕まえる事が出来るのか?
常に恐怖と隣り合わせのサイコサスペンス、起動。



『2028年・多摩ニュータウン
 あの頃はそれなりに楽しかったし、平和に暮らしていた、と思う。
 だけど、お姉ちゃんが消えてから……全ての歯車が狂い出した。
 お父さんもお母さんもどっか行った。大事な人はみんないなくなっちゃった。

 その代わりに、先生が現れた。とても優しくて温和な人なんだ。
 私のこと、殺人犯から守ってくれるかな?
 仲良くできるかな?

 私のこと、見捨てないでいてくれる?』
(公式より引用)



MINDCIRCUS』(※リンク先感想)と同じ作者様と聞き、惹き込まれるイラストや文章に期待してプレイ。
その期待は外れる事無く、むしろ期待を軽く超えて下さり本当に最高でした。


誘拐事件、毎話毎話で明かされる真相、そして、次話が気になる引き込みの仕方に繊細で綿密な心理描写。
とにかく最高のサイコサスペンスでした、本当に面白かったです。
細かい部分が何もかも公式で語られて居ないので、どれもネタバレに触れる事になり、「好みに合致し過ぎて最高でした」と小並感な感想しか言えないのがもどかしいのですが、驚いたのは一人称視点と三人称視点の分岐です。
こちらのゲーム最初に心理テストのような物が用意されており、選択する事により一人称スタートか三人称スタートかに分かれます。
一人称で見える部分と見えない部分、三人称で見える部分と見えない部分が綺麗に分かれていて…
片方だけでは全てを把握出来ない仕様になっています。
今まで、群像劇というか…視点がキャラ毎に毎回変わる作品はプレイして来ましたがこちらのようなシステムは初で新鮮でした。
最終的にどちらも見ないといけない仕様になっているので、片方だけで大丈夫なの?となっても安心設計だとは思います。


ただ、私はDL版を起動したのですが、全8話(話数は公式に記載があるのでセーフなはず…)の内の三人称視点で途中のとある仕掛けが起動しませんでした…
そのまま進んでしまい…
クリア後に他サイトでも確認したのですが、三人称視点でもその仕掛けは作動するらしく、私だけのバグかな?となりました。
なので、タブレットでノベルゲームコレクションにアクセスし、初期の状態で一人称→三人称…とクリアして行きました。
他の方でももしかしたら同じ様な状況になるかもなので、基本的にはノベルゲームコレクション版の方が安定しているかもしれません。
オススメは一人称→三人称ですが…最初の選択が心理テストでの結果に左右されるので、故意に選べないのが若干難点かもです。


あと、難点…ではないですが、R15の割に文章でのグロ描写が細かく丁寧で性的描写がかなり濃いです。
グロエロい…
個人的に文章描写はR18Gクラスかも…とも思うので苦手な方はご注意を。


「理性が強く、決められた正しさを貫き過ぎる上に、誰よりも物事を客観視出来てしまい生き辛い人」

「世間と相容れず生き辛い人」
ほど良い感じにダメージを喰らうと思います。
オススメは…し辛いですが…もしそのような方でダメージを喰らいたい方がいらっしゃれば是非……



『システム、演出』
ティラノ製。
古いパソコンを起動したような演出で、昔の資料を読むように進めて行く演出が斬新でした。
ノベルゲームでパソコン画面をクリックする事になるとは…
起動が遅めな所があるのですが、昔のパソコンの起動を待つように、待つ事に苛立ちをあまり感じる事が無かったので、この演出は本当に良かったです。
そして上記で書いた通り、一人称と三人称の分岐、表現は斬新でした。
他の作品でも見てみたいですが…ライターさんの苦労を考えると簡単には見たい!と言えないのがもどかしいです…


『音楽』
MINDCIRCUS同様、日本ではあまり聞かない素材曲でした。
MINDCIRCUSで使用されていた曲はありましたが、他ゲームで「聞いた事がある!」となるタイプの曲は無かったので、他のゲームのイメージに左右されず大変嬉しかったです。


『絵』
今回は絵の枚数が増えた事と、一枚絵でも何らかの動きが、そして立ち絵で目パチが実装されており驚きました。
そして、MINDCIRCUSでも語りましたが、Summertime様の絵は良い意味で「ズルい」です。
本当に、一目みただけで一目惚れする人が絶対に居るレベルの個性的な絵をしていらっしゃいます。
「あらすじも内容も何一つ見てないけど、絵に惚れたからゲームプレイしてみよう」となる方が絶対に何人もいらっしゃるレベルです。
それだけ本当に個性的。
数々のフリゲ作家が欲しい個性の要素を絶対に持っていらっしゃるので、本当に強みだと思います。


『物語』
MINDCIRCUS同様、本当に読みやすくて素晴らしい文章です。
特にSummertime様の文の真骨頂は「狂った時の文章」だと思います。
とにかく、キャラが狂った時の描写が匠過ぎます…
キャラクターの思考が唐突に明後日の方向に飛んで、飛んで、どこにも着地出来ない…ような、そんな狂い方が本当にお上手です。
一行前とナチュラルに唐突に全く違う思想をし出しそれが途中まで分からず、何らかの拍子に?となり履歴を読み返してしまう程…
静かに、ゆっくりと、確実に狂っていく工程を楽しめました。
そして、MINDCIRCUSの時に感じた、
「選択出来そうなヒロインらしき人物を多く配置しているのにラストは一人に固定化されてしまい、キャラの描写に差が有り過ぎる」
という部分が、ヒロインを完全固定にする事で一気に解消されていました。
ヒロイン…というかある意味で主人公の片方なのですが、主要キャラを減らす事で、
「魅力的なキャラクターが沢山居たけれども描写が足りなかった…」
という状態にはならず大変良かったと思います。


『好みのポイント』
好きな所が沢山あるのですが…
何もかもが公式HPには載っていないネタバレ部分なので「キャラの関係性部分の好み」はここでは省略します。
ただ、登場人物全員が華麗に闇を抱えていたのは本当に好きでした。
皆、自分の為に生き、誰かを巻き込んで生きていくんでしょう…きっと…





以下ネタバレ含めての感想です





まず最初に、一人称→三人称がオススメと上記で語りましたが、
◯→喧嘩→恋人で一人称
△→遊び→他人で三人称
になると思います。


もし、最初に攻略見ても良いからオススメ順でプレイしたいと言う方は是非。



そして、ネタバレ有りなのでようやく色々と語れます。



本当に、一人称と三人称の分け方が上手だと唸らされたゲームでした。
三人称…暮方さん中心の物語では事件の全貌は分かるし、他の人物の行動も把握出来るけれどミサの心情が掴めず、一人称ではミサの心情は深堀りされ掴めるけれど、ミサ以外の人物の行動はミサが見えている部分でしか分からず事件は一部しか見えない…
どちらが先になるかで事件の印象180度変わる物語でした。
個人的にですが、三人称視点だと、ミサが一番行動原理というか…思考というか…そういう物の意味や基準が分からなかったので…
だから、その「一番分からなかった」部分を一人称で突き詰めていくの本当に上手い構図だなぁと思いました。


そして、感じる恐怖も180度変わる物語でした。
一人称…ミサ本人の感覚は別としてプレイヤーは「姉は無事なのか?」「この事件の犯人にミサ自身は狙われないのか?」という恐怖が付き纏います。
逆に三人称ではプレイヤーは「暮方の犯行は警察にバレないか?」「死体は上手く隠せるのか?」という恐怖が付き纏います。
そう、恐怖の方向性が全く異なるのです…これは本当に凄い、としか言えませんでした。
視点とはこう使うんだ!のお手本のようです…



そしてもう、ネタバレ有りなのでとにかく語らせて頂きます!
いやぁ…暮方さんとミサちゃんの関係性がとにかく最高で最高で最高で…(以下エンドレス)
どこに惹かれたのかずっと考えてたら一つの答えに行き当たりまして…


「自分の信念や目的の為なら人殺しすらいとわない、気にしない、気にしても仕方ないと割り切ってしまえるし、きっと肉親ですら殺せる」
ような人物が、
「一つの自分が起こした事柄のせいで子供を世界から一人ぼっちにしてしまい、明らかに生かしておく方がハンデになる子供を「世間から見れば都合が良い」と思い(込み)引き取る」


分かってしまいました…私は「加害者と被害者の擬似親子」がめちゃくちゃ好きだという事に…今まで好きになったコンビなどがまさにソレだという事に…
もう…「真昼の暗黒」で自分の新たな性癖が言語化されました。
「私は、加害者と被害者の擬似親子が好きだ!!!!」と。


そして、最近別の作品でも「加害者と被害者の擬似親子」で惚れ込んだ2名が居たのですが、そちらは主人公が光属性でした。
だから、とても明るい物語になっていましたが…真昼の暗黒が違ったのはミサちゃんも闇属性であってしまった所。
そう、真昼の暗黒ではミサもまた闇属性なのです。
闇属性×闇属性=深淵。みたいな構図になってます。


暮方さんは間違いなく怪物です、本能で生きる怪物。
本能しか持ち得ない人間の皮を被った怪物。
そしてミサもまた怪物です、けれど、彼女は全く真逆でした。
理性しか無いのです、感情的になろうとしても、それが全く追い付かない…
理性が有りすぎて人間に成りきれなかった怪物だと思います。
理性しか持ち得ない人間の皮を被った怪物。
だから彼女は姉の死も、両親の死も、何もかもを事実でしか受け取れず感情的にはなれません。
理性で固められているからこそ、「常識」は守ろうとし、「正義」は人一倍貫こうとします。
穣介君がいじめられていたら率先して助けようとし、助けた様に。


三人称視点では正直、ミサの心境が一番わかりませんでした。
それは三人称では暮方さんが中心に描かれているから、被害者の、ましてや子供の心情は暮方さんからは最も遠く、理解出来ない物として描かれていた所が大きいと思います。
だから正直三人称ではミサが一番分からなかった。
けれど、ミサの視点になった時に一変しました。
「あぁ、彼女は理性で決められた正しさを貫き過ぎる上に、誰よりも客観視出来てしまい生き辛い人間なんだ…」
という事に気付かされました。
彼女の一人称になった時に、なんとなく「わかるな…」と感じてしまう部分が多々ありました。
「「世間で決められた正しさ」を貫き続けないと辛い」「食事を雑に扱われている自分を豚のように感じる」「友人や家族を大事に思っている、思うようにしていても心のどこかでどこまでも理性的利己的な自分が居る」


…ちょっと病の話で申し訳ないのですが、ある病の傾向に凄く近いなと感じてしまいました。
ミサはきっとそういう病の重いもの(ミサが診断はされてない以上断定はしません、あくまで「的なもの」)だと思います。
そして更に、本来なら周りの人間の助けによって改善出来る事が沢山あっただろうに、改善する正当な段階や手段を身に付ける前に暮方さんという怪物に養われ大人になってしまった。


世間一般では「正しくない」暮方さんと一緒に居るのはミサにはきっと耐え難い事だと思います。
それでも彼女は一緒に居る、それは何故か…
それは多分ベクトルは違うけれども、世界で唯一無二…見つけようとしても早々見つかる事がない怪物同士だからだと思います。
多分、ミサが初対面の時に感じた
「この人はヤバい」
という感覚は半分は子供特有の第六感で、一人称でも第六感と受け取るように描かれていますが、もう半分は違うと思います。
残りの半分は「同じ怪物だから」…多分同族嫌悪のようなものなんじゃないかなぁって…


「自分の人生をめちゃくちゃにした人殺し」
と世間から許されない行為を嫌悪しながらも、
「一人になるのは嫌だ」
という人間らしい感情(でもこれはきっと建前かもしれない…)や、
「自分が知る唯一の同一の怪物だから」
という本能的な部分で逃れられないのかな…と。


暮方さんも、
「ミサとの取引があるから」
という自己防衛がある上で、
「養ってた方が世間のウケが良いから」
と世間体を人間らしく気にしながらも(これもきっと建前かもしれない…)
「同一の怪物だから」
という本能的な部分で捨てられないのかな…と。


だって、正直、暮方さん程になれば殺して捨て置いた方がリスクはある意味では少ない気もします。
正体がバレた穣介君だって殺してますし…
殺したら更に危うくもなりそうですが…こんな精神疾患を起こしているミサと一緒に居るよりは精神的に正直楽なんじゃないかなと。
本能に忠実で時間の乱れを嫌いに嫌う暮方さんが、一緒に居たら何もかも予定が狂いそうなミサと一緒に居るってそういう事なのだと私は思っています。
…唯一ミサは死の淵から助けた女性ですし……


二人共とんでもない共依存です。
そして、同時に二人共、どこまでも「怪物」でありながらもどこまでも「人間」を捨てきれない、諦められないのだなぁと感じました。
世間体を捨てて人間を捨てればもっと楽に生きられるかもしれないのに…そういう所も含めて「同じ種類の怪物」だなとも。


最後にミサは正気に戻り気付いてしまいます。
暮方への思いと暮方の信念が好きな自分に。
そして、この世の中ではもう、暮方の信念は貫けない程に世間が勘付き自分達を追い詰めて居る事に。
ED3の暮方とミサは最後きっと……まぁ、なんとなく想像は付きます。


暮方さんは捕まらない事で、自分の本能…屍姦を貫けなくなる事はなく、最後の最後まで本能のままきっと要られたでしょう。
ミサは暮方さんと共に逝く事で悪を裁く…ある意味で、穣介君を助けた時のような「社会的正義」を貫けたでしょう。
二人共お互いの本能と理性の…普通の人が理解できない「誇り」を失う事無く要られたのではないか……
私は、ED3にそういう気持ちを感じました。
(最後の音声で生きてるかもしれないので、ミサだけ生きてるかもですが……)


ED2は自らの「正義」を貫いたミサ。
ED1はそれでも共依存しながら二人で生き抜く。
それぞれで違う結末があり、新鮮でした。


そしてED4(の扱いでいいのかな?)EP9ですが…
うん、一人の「怪物」が更に別の「怪物」を生み出したEDで好きです。
元々「理性の怪物」だった娘が、更に高みの…「怪物」を堕とす「怪物」へ成り果てる…
「正義」と「理性」を重んじてきた少女が反転し…いや、ある意味で「正義」を貫き過ぎて堕ちたEDで、物凄く好みです!
決して繋がる性行為はしないけど、直前まではするのが妙にエロいです。
シチュはグロいですが…


…が、私はED3が好きです。
共依存したまま、「誇り」を持ったまま闇に消えるって…良くないですか?最高じゃないですか?
少なくとも、
「私が一番嫌なのは、大切な人が自分の誇りを失うことなんだ。」
というセリフがある以上、ED3が超超超好きです!!


異常な二人が、怪物の二人が最後まで男女ではなく、お互いを別の存在として認識していた所が…良いですね。
そういう意味では間違いなく「父娘」だったと思います。
背負った物が大きすぎて、決して「尊い」や「美しい」や「儚い」など良い意味での言葉では二人を括る事は出来ませんが、人間という名前の細い細い綱を一生懸命手を取り合って渡っている二人の共依存は最高でした!!



しかし、この物語、皆綺麗に闇を抱えていて、ミサ以外は綺麗に自分の事しか考えてないの最高ですね。
暮方さんは言わずともがな。
讌さんも、「母のような存在に成りたくない」という一心で「母親とは違う母を演じる」為にミサを育てている所があります。
結局は同じ穴のムジナになり、母と同一になっている事にも気付かずに…
穣介君も、自分の天才性には気付かず出来ない周りの方に疑問を持ち、自分をある意味で過信してグイグイと問題ある方へ、危ない方へと首を突っ込んで行きます。
きっとミサの初恋は穣介君で…例え穣介君の想いは讌さんに向いていても、何か別の方向でミサの心を救えたかもしれないのに……
一番の引き金は暮方さんだとしても、皆自分の好きな方、好きな方に進んだ結果、一人の「世間と相容れず生き辛い少女」を地獄の底まで追い詰めていった…
そんな物語にも感じました。
そういう意味では「自分の事」しかしなくなったED9はある意味で吹っ切れEDで、暮方への因果応報EDなのかもしれませんね…


最後に、ミサの「一人称」と、暮方さん中心の「三人称」にしたのは上手いなぁと本当に思います。
ミサの「世間のズレと生き辛さ」というものは一定層から共感を得られる心象なのに対して、暮方さんは絶対に共感は得られません、得ちゃいけない何かです。
そんな暮方さんの方を「一人称」で描くとおそらくどうしてもチープになりがちな中、あえて「三人称」で行動だけ追っていく…というのが…
「描けない物は、絶対に理解出来ないものはあえて表現しない」感があって物凄く好きでした!!