ひっそりと群生

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【人形は檻の中で君を見る】感想

【乙女15禁】



2019年05月16日配信
Achromatic color』様 ※リンク先公式HP
人形は檻の中で君を見る】(PC&ブラウザ)(15禁) ※リンク先ノベルゲームコレクション(15禁)
以下感想です。








人形は自分よりももっと弱い人形を手に入れた。



『あなた(デフォルト名、涼子)には大切な恋人がいる。
 上司でもある彼(アキ)は、ちょっと独占欲が強いけれど、あなたのことを溺愛してくれる。

 ――「君がもう許してって泣くほど我慢してから愛されるのと、何もかも忘れるくらいの快楽に落とされるの。どっちがいい?」

 そんな彼が、最近少しだけ落ち込んでいる気がする。
 大切な彼のため、あなたはどうにかして彼に元気になってもらいたいが……。

 ――「俺が君に愛されてるって、証明してくれないか」』
(公式より引用)



選択肢有り。
男のヤンデレゲー。
コンセプトに抗うようで悪いのですが、男のヤンデレは実は苦手なタイプで…
一周目は正直「やっぱり、やっぱりこう来たか…」と思う部分が多々ありました。
しかし、この作品が本領を発揮するのはとある条件が出現してからの二週目にあると思っています。
二周目で様々な情報が明かされるにつれて「なるほど…」と思う部分が多く、一周目とは違う印象…というよりこの物語のある種の本質が見えてきました。
カテゴリ的に「ヤンデレ」というカテゴライズをされており、一周目ではこのコンセプトに間違いはないのですが、二週目に触れるときっとこれは「ヤンデレ」でも、ましてや「愛」であったのかも疑わしく……
一周目だけでは正直そんなにノリきれなかったのですが、二週目のあの情報開示でタイトルを含め色々と別の見方が出来たのが楽しかったです。



『システム、演出』
ティラノ製。
カスタマイズもされていて良かったです。
ただ、タイトル画面でメニューを選択するとアキさんが語りかけてくるのには思いもよらず驚いてしまいました。
あんまりボイス付きの乙女ゲーしないんですが乙女ゲーだとこういうのデフォルトなのかな?
エロゲだとたまにシャットダウン時に声が出たりはしますが…なんか、新鮮な体験が出来ました。


『音楽』
BGMの選曲は良し。
声がフルボイス、名無しのオッサンまでフルボイス。
同人にありがちな録音環境の差も感じず、音質は徹底されていました。
メイン…というか唯一の攻略キャラ、アキの声を担当された三橋さんですが、別のサークル様の同人ゲーム2作品でお聞きした事があり。
いやぁそちらでもアクが強いというか性格に大変難がある男性を演じられていらっしゃったのですが、三橋さんそういう男性お上手ですね。
3連続でヤバい男性キャラの上お上手だったので、同人声優界の地雷系男子を演じられたらお上手な方にカテゴライズさせて頂きました。
いや、うん、ご本人は不本意かもですが、これからも是非クセの強い地雷系男子を演じて頂きたいです。


『絵』
背景も綺麗で立ち絵も良かったです。
ただ、立ち絵のポーズが一枚しか無かったのは残念かな。
個人的にアキよりもソラの見た目が好みでした。
結構乙女ゲーでは見かけますが、ウィンドウメッセージ枠に常に主人公が表示されるので苦手な方はご注意かもです。


『物語』
物語は短めで話も会話を中心に進むので、地の文よりも会話劇が好きな自分としてはサクサクと読めました。
話の流れも必要なイベントで進むので読みやすかったです。
一周目だと普通のヤンデレゲーですが二週目に仕掛けがあるのも個人的にGOOD。
ただ主人公が怯え続けるだけのヤンデレゲーだけで終わらなかったのが好きでした。
(これはプレイヤーから見た事であって、主人公側からしたらあった物事や最終的にたどり着く結末を見ると怯えてばかりなのに間違いはないのですがw)


『好みのポイント』
苦手な要素は確かにありつつも、二週目に良い物を見れました。
ああいうタイトルの回収の仕方好きです。
それは愛や恋なのか、それともある種の都合の良さなのか…
考えれば考えるほど「人形」とは人にとって都合良く作られた遊び相手なんだなとおもいました。





以下ネタバレ含めての感想です





なるほど、主人公がヤンデレ男(アキ)に囚われて人形になり君(ヤンデレ男)を見る…かと思いきやアキもまた人形側だったのですね…
「人形(アキ)は檻の中で君(主人公)を見る」というタイトル回収が二周目でされた時に、コチラの方がしっくりくるなと思いました。
これは…人形(アキ)が自分より弱く自分よりも自分を表現出来ない人形(主人公)を手に入れた話なんだなと。
そう考えるとこの物語は恋愛でもヤンデレでもなく支配ゲーだなと思いました。
ヤンデレの定義がとても難しいのですが、個人的にヤンデレは「あなたと私の為に世界(周り)が無くなれ」なタイプだと思っています。
「世界(周り)の方に怯え自信を無くし、どうせ自分なんて…あなたは私を想ってはくれないの?」と自分の方を追い込んでいくタイプはヤンデレよりもメンヘラの方に近いと思っていて。
アキの思考は主人公が自分に反した言葉を言う度に「オレの事を好きじゃないの?」と言い、二週目で「こんなオレを想っていてくれる人なんて…」と自分を追い込んでいる姿が見受けられたので私の中ではヤンデレよりもメンヘラの気質だったなと思いました。
(ヤンデレとメンヘラの違いは個人差がありそうで定義も違いそうなのでここは意見に差がでそうですが)


そして、アキは果たして本当に主人公が「好き」だったのかもとても疑問でした。
「優しいから好きになった」と彼は言いますが、それは嘘偽りなく本当なのか…
たまたま自分よりも自己犠牲的で弱く自己主張が上手く出来ない存在を…自分以上に人形の存在を見つけて自分が支配下に置けるから興味を惹かれた、「好き」と思ったんじゃないか?とも受け取れる「好き」の有り方だったのが印象深かったです。
この物語は人形(アキ)が人形(主人公)を見ている物語。
そう考えると主人公の選択肢でアキの好みを無視すると健全なEDに、好みの通りに…まるで好みの人形を演じるような選択をするとヤンデレ側に突入するのも納得出来ました。
アキの好みを無視し檻から離れる道はとても健全なソラとの明るい敵対ルート。
アキ好みに演じて人形になれば健全な道は絶たれ。
健全な道を絶った後にそれでも人形を演じ続ければ主人公も精神面は人形として檻に閉じ込められる「グッドEND」と、人形を演じる事が出来ない道を選べば檻の中ですら自由に歩き回れない肉体すら人形になる地獄のような後味の「ヤンデレEND」に分岐するのではないかな?と思いました。
「人形(アキ)は檻の中で君(主人公)を見る」から始まり、その檻の中に引き込まれないように人間として平和なENDに行くか。
望む人形を演じ続けた結果、人形に檻の中に引きずり込まれ「人形(主人公)は檻の中で君(アキ)を見る」になるENDに行くか。
タイトル回収的には「グッドEND」と「ヤンデレEND」の方面が正しいのかもしれませんが…
アキは自分でも気付かない部分で「好き」という感情よりも、ただ自分の言う事を何でも聞く人形が欲しかっただけじゃないのか?と思うと…アキはとんでも野郎でやっぱり地雷男だったんじゃないかな?と強く思いました。
そういう意味で支配ゲーという感想です。
とんでも野郎ですが、やっぱり三橋さんの地雷男は最高だなと思います。


最後になりましたがサブキャラで非攻略キャラのソラが正直メインのアキよりも好きです。
子犬系男子、良いですね。
彼もメインのお話を製作中との事らしく。
彼には明るいお話が似合いそうですが果たして光の作品になるのか闇(再びヤンデレ)の作品になるのか…
どちらに傾くかは分かりませんが楽しみにしています。