ひっそりと群生

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【AlexiA~アレクシア~】感想

【男性主人公全年齢】



2019年08月31日配信
Operation:Novelty』様 ※リンク先公式HP
AlexiA~アレクシア~】(PC) ※リンク先ふりーむ!
以下感想です。








究極の自己愛の果てに…



『上條游雅(かみじょうゆうが)と東雲穂多留(しののめほたる)は同じアパートに住む高校1年生。
 2人は毎日一緒に登下校をするくらい仲が良かった。
 そんなある日の放課後、游雅は「まなみ」と名乗る1つ年上の先輩に出会う。
 游雅と穂多留、2人だけの日常にまなみが加わり平凡な日常は段々と予期せぬ方向へと進んでいく……。

 人生とは、幸福とは何か。

 自己愛、自己嫌悪、自己否定、自己選択。
 生きる理由を失った少年の再起の物語。』
(公式より引用)



公式HPから嫌な予感が漂う本作。
公式のストーリーが二重になっている段階で「おや…?」と感じると思います。
コチラはゲームをクリアすると「なるほど…」と唸る仕掛けで驚きました。
ふりーむ!様の注意点に「ヤンデレ、鬱要素」とあるのと公式様のツイッターの傾向で分かりますが、本作は非常に「ヤンデレ」「病み」「闇」が強い作品となっています。
前半は幼馴染の穂多留との明るく楽しい生活が描かれ、穂多留を大事にする選択肢さえ選べばそのまま楽しい日常を享受する事になります。
しかし穂多留をないがしろにし続けると物語は一変、彼女と世界は変貌を初めていきます。
Aパート、Bパート、Cパートの三章構成となっていますが、Aパートを超えた先、Bパートからの怒涛の鬱っぷりは凄まじかったです。
自分と周りとの違い、どうしても、どう足掻いても、どんなに努力しても出来ない事。
家族も先生もクラスメイトも誰も助けてくれない自分だけが違う置いて行かれる世界。
一度でも主人公の游雅や途中で登場する眞那彌の抱えている要素で悩んだ事のある人からしたら心を抉るような、地獄に突き落としにかかってくるような要素満載で、一行一行進むのに苦痛を要しました。
そういう現実のままならなさを超えた圧倒的生き辛さと、そして「ヤンデレ」の要素でダブルパンチをかまして来ます。
この苦痛を乗り越えた先に、彼と彼女達との真相の先に何が待っているのか…
かなり主題や主張が激しい作品だとは思いますが、闇の中に一筋の光を見た気がしました。



『システム、演出』
Light.vn製。
ウィンドウ表示、文字表示と音量変更は可能。
あまり見かけないと思っていたのですが、最近よくこのツールに触れます。
流行っているのでしょうか?
ただ、こちらのツールはスキップしたらスキップボタンを再度押さないと止まらない所が凄く難点です。
あと、絵の枚数は凄いのですが起動時のプロローグ(?)文章を飛ばせなかったり、サークル名や注意書きを飛ばせないのが起動時に若干ストレスなのと、後半の怒涛のムービー挿入での会話は自分のテンポで進めたい派には大変辛かったです。


『音楽』
メインテーマの「I's」とてもカッコイイ曲で好きです。
BGMも選曲良し、オリジナル曲もあるみたいで「Integral」というピアノ曲がとても良かったです。
ただ、ボイスに関しては……
眞那彌は聞けましたが穂多留がどうしても…
後半怒涛の穂多留との掛け合いで強制ボイスオンのオートモードが入るのですがとても苦しかったです。
ヤンデレは演技も含めて魅せる要素があると思っているのでそこは残念でした。


『絵』
凄い差分でした…
特にBパート。
AパートとCパートはウィンドウメッセージ形式で立ち絵形式なのですが、Bパートはほぼ一枚絵進行で驚きました。
一体何枚描かれたのか…?と驚きを隠せないほど、クリック毎に絵が、そしてクリックしなくてもキャラクターの表情が細かく変わるので驚きの連続でした。
普段は色の無い世界から、心が開いている時だけ色鮮やかになる世界の表現など。
Bパートはほぼ映画のような演出で素晴らしかったです。


『物語』
文章はとても読みやすかったです。
明るく楽しいギャルゲーテイストから始まりそして…
Bパートでの主人公の抱えている物の描き方が上手すぎて、始終ダメージを受けていました。
周りの人間の身勝手さや、「彼女」の性質などかなりリアルだったと思います。


『好みのポイント』
上記でも書きましたが、絵の枚数に是非圧倒されて欲しいです。
細やかな表情差分やコインによって比喩される精神状態の描き方など。
別れ際にただ手を振る動作にさえ細やかに動きがあり、文字には無くても「バイバイ」と言っているのが分かって。
文字では表現されない中で、キャラクターの小さな反応が一つ一つ描かれ行動だけで今何を思っているのかを察する事が出来るその差分には本当に目をみはる物がありました。
心の弱い方にはあまりオススメ出来ないのが辛いのですが、是非Aパートだけで終わらず最後まで読んで頂きたいです。





以下ネタバレ含めての感想です





最後に判明する2つに分離した精神の内の理想の游雅がプレイヤーにはなるほど…でした。
そして穂多留も分かれた現実の游雅の方。
だから穂多留は游雅は引き止めるのか…と。
クリア後に「現実に戻る」ボタンを押すとプッツリとゲームがシャットダウンするのが大変好きです。


しかし、游雅君は…とても強いなぁ…
理想の游雅君だからあの選択をしたのだろうけど、彼もまた游雅君だからきっと強い。
(そして同時に現実に戻った時に穂多留の方ではなく理想の游雅君の人格や性格で現実に立ち向かわないと大変辛いなとも思ったり)


「Alexia」ゲームプレイ前に意味が気になり調べた所、「失読症」と出たので何らかで絡むとは思っていましたが…そう来たかと。
障碍者の疎まれ方、蔑まれ方が異様にリアルでした。
本作は「ヤンデレ」の要素を挙げられて「病み」や「闇」の要素でまずプレイヤーの好みの選別をされていらっしゃいますが、個人的に「ヤンデレ」要素は惹きつけたり選別したりする要素で、本作の肝はBパートの「出来ない人間の扱われ方」だと思っています。
これは地獄だ、本当に地獄だ。
出来ない時の苦しみも地獄なら、病名を知ってからの周りの扱い方もまた地獄。
出来ない時には散々馬鹿にし、病気だと判明すれば腫れ物を扱うかのように…「私達は障碍者を受け入れてる」といういかにも善人の姿勢を取り出す大人達、そして子供は出来ない時には同じく馬鹿にし、病気だと分かれば居ないものとして扱ったり、見えていない部分で攻撃を行う。
もう、吐き気を催す邪悪とはまさにこの事でした。
特に大人側の行動には正直虫酸が走りました、とてもリアルで。


眞那彌のADD描写も…いやぁリアルです。
これを言うとアレなのですが自分も若干のADHD診断を受けているので眞那彌の気持ちや大変さは分からなくても行動原理は何となく分かってしまい…
途中、游雅君に鬼のように冷たい態度を取りますが、今まで親しかった人に対して急に疑心暗鬼になって「この人に自分の何が分かるんだ…」という感情に囚われて今までの優しい…一言で言えばある意味他人だから出来てた対応が近くなりすぎて出来なくなって行く姿。
あの急速に冷たい対応を取られた時に、游雅君は眞那彌に近付き過ぎたんだなぁと察しました。
今まで仲の良かった相手への急激な対応や性格の変化、冷たくする事で急に相手の気に障る事を言う空気の読めなさなどが物凄くリアルでビックリしました。
ADDも抱えた上で痴呆症の母を持つなんて…どれだけ苦痛か。
游雅君の前では見せなかったけれども「失敗しやすい」というのはきっと本当で。
游雅君が嘆いても、眞那彌はきっと誰にも救えなかったと思います。
Bパートはもう…描写があまりにも上手く、抉りに抉って来て凄さとダメージが半端なかったです。


ただ、そんな障碍的な心理描写、状況描写など凄いと思い、最後の游雅君の選択はとても強く私だったらこんな現実は耐えられないと思う中で、彼の選択だから良いのですが主張として眞那彌の件といい「自殺否定」がかなり入っているのが個人的に引っかかったところではあります。
まぁ…言ってしまえば私が別に「自殺否定」の思想ではないので、游雅君が生きる選択をするのは構わないのですが眞那彌の自殺を否定する権利は游雅君には無いなぁとは思っています。
確かに眞那彌の行動で游雅君は傷付いた訳ですが、眞那彌にも眞那彌の耐え難い苦痛があったはずなので…そこは否定出来ないだろうなと。
あと、死後の眞那彌の気持ちを游雅君の心の奥で代弁させるのはあまり好ましく無かったです。
眞那彌の気持ちは眞那彌にしか分からないはずなので、そこで游雅君が自分の心の奥で眞那彌の気持ちを作り出すのは死者に対して失礼なんじゃないかなと。
例えそれが自分が進む為に必要でも、死者の気持ちは誰にも代弁出来ない物だと思っています。


そういう部分も含めてかなり主題と主張が激しい作品だとも感じました。
「闇」「病み」「ヤンデレ」を抱えているけれども、游雅君は現実に戻ってきたんですよね…やっぱり強いです。
自分も眞那彌ほど重いADDを抱えている訳では無いのかもしれないけれど、周りには恵まれていてギリギリ「失敗しやすい事」と「空気が読めない」くらいだけれど、生きにくい世の中なのは本当で…
まぁ、こんなクソみたいな世の中だけど一筋の光はあるのかな?と思う事が出来ました。