ひっそりと群生

ひっそりと持ってるCDの情報やゲームの感想上げたり。購入物の記録など。気ままに。飽きっぽいので途中で止まったらご愛嬌。

【とも鳴りの舟】感想

【乙女18禁】



2019年12月29日発売
サキュレント』様 ※リンク先公式HP(18禁)
とも鳴りの舟】(PC)(18禁) ※リンク先DLsite.com(18禁)
以下感想です。








同じ事をされても「駄目な人」と「受け入れられる人」の差はなんなのか…
「生理的に受け付けない」「生理的に合致した」ただ、ほんのそれだけの事、でもそれがきっと大事な事。
ある意味では…運命?



『――ダメダメな私と、すかすかのあなた。

 独り暮らしで売れない風俗嬢をやっている美倉たがね(みくらたがね)。
 仕事帰りに家のベランダに出ると、向かいのアパートのベランダで男女が裸でセックスしているのを見てしまう。
 男と目が合い、まずいと思って部屋に引っ込んでカーテンを閉めるが、しばらくすると玄関からチャイムの音。
 嫌な予感がしつつ応対するとさっきの男がいた。
 そのまま部屋に押し入られてレイプされてしまうたがね。
 そのうえ男は、部屋にあがって冷蔵庫の中身を漁る、たがねのベッドですやすや寝るなどやりたい放題。
 親に連絡されるのを恐れて警察に言い出せないたがねは、仕事の疲れもあってその場で気絶するように眠ってしまう。
 その日から男とたがねの奇妙な関係が始まった……。』
(公式より引用)



プレイ時間は2時間くらい。
選択肢無し、一本道。


サキュレント様の作品は『慰愛の詩』(※リンク先感想)に続き2作目プレイになります。
今回は…乙女ゲーとして見た時には正直、出会い方や相手キャラである牧人さんが好みか?と聞かれたらう~ん…と唸る感じで。
男性の好みとは若干違うポイントに牧人さんが有り続けました。
自分の好みツボを微妙にズレて突いてくる、みたいな…そんな感じ。


ただ、牧人さんはそんな感じだったのですが、主人公のたがねがかなり好みのキャラで。
乙女ゲーで身売りをしているヒロイン…遊女とかは見た事ありますが、こう明確に風俗嬢という職に付いているキャラは珍しいのではないでしょうか?
ちゃんと働いているシーンも有り、とても好きです。
生まれや生き方が何もかもツボを突いて来て…乙女ゲーですが主人公がビッシバシ好みド直球でした。
彼女視点の話なので彼女の心象が一番感じ取れるから当然と言えば当然なのかもしれませんが、こう…生まれが間違った…みたいな。
人生の最初の地点である生まれてくる場所の盛大にハズレを引いた感じが物凄くリアルというか…そういう完全に運で、自分ではどうしようもない部分の描き方が本当にお上手でお上手で…
地獄…とは軽々しく言えないけれど、社会の底辺の方で地面スレスレを生きている人間の描き方に圧巻されました。


読みやすくもグサグサと突き刺さってくる文章、家庭環境によってボロボロにされてきた自己肯定の無さを繊細に描いた心理描写、自分一人ではどうしようもないまるで沼の底のような状況、それでも最後には助け出され、二人手を取り進んで行く…
ダメダメがダメじゃなくなる、すかすかに何かが満たされていく…そんな二人が沼底から地面まで這い上がって来るような物語だったと思います。



『システム、演出』
NScripter製。
NScripter様々でございました、基本性能は完璧です。
カスタマイズも綺麗で、痒いところに手が届くシステムでした。


『音楽』
音楽は6曲と曲数で見ると少な目ですが、ゲームの長さを考えると曲数は良いと思います。
どの曲もどこか物寂しげだったり、緊迫したシーンには緊迫した曲が流れてどのシーンでも合っていました。
「夜闇の先」はシーンも相まってとても好きなピアノ曲です。
声に関してはもう…素晴らしい。
三橋さんはライター様の前の作品での演技が素晴らしく安心と信頼の演技をしっかりとされていて。
葵さんは初聴きだったのですが、通常演技は勿論エロシーンでも素晴らしく…
調べたらプロのエロゲ声優さんで納得しました(というか「無限煉姦」の主人公の方でした…「無限煉姦」での成長していく演技、最高でございました…)。
乙女ゲーですがかなりハードなエロシーンが多い今作の全てのエロで満遍なく最上級の汁だくの演技をされていらっしゃいました。
こんなにガッツリとしたフェラが入る乙女ゲーは少ないと思います…虚無に、慟哭に、汁だくに…どれも最高の演技でした。
サブキャラも全く妥協は無く…お母さんとかもう…はらわた煮えくり返りそうになるほどの演技でございました。


『絵』
とても綺麗でした。
CGは欲しい時に入りました。
立ち絵は基本、主人公のたがねと、牧人のみですが、表情パターンが多く映えます。
ポーズが一種類だけだったのは少し残念…
でも、たがねの裸の立ち絵は本当に最高でした。
乙女ゲーカテゴリでここまでヒロインの裸の立ち絵が出てくるのも珍しいと思います。


『物語』
文章が毎回とても読みやすく…
サキュレント様の文章は読んでいると「何もしてくれない現実」のような…そういう「どうしようもなさ」をグイグイと突き付けて来ます。
特に警察の何もしてくれないという描写はどこまでも現実的で…シナリオライター様のかなり前の作品になりますが某ゲームでも同じように警察の無能さが強く描かれていて、何か、何かあったのでは??と思ってしまうほどなのですが…でも現実そんなものなのかもなぁと強く感じる描写でした。
そういう虚無感を描きつつも決して突き放したりはせず、最後にはどこか吹っ切れ、救いが有り…
全てから解放されて良かったと思います。


『好みのポイント』
好みとは若干違うかもですが、たがねの母が…あまりにも…あまりにも凄かったです。
リアルを通り越して「あぁね、うん…」みたいな。
一度でもこういうタイプの人間と関わった事があるとメールの文章に「こういうタイプはこういう言葉が出る出る」と頷くしかありませんでした。
凄まじく現実に即した綿密な文章でした…嫌な方向で。
あと、職業柄たがねの裸の立ち絵が多いのは素晴らしい!
ヒロインの裸の立ち絵って間違いなく18禁じゃないと出来ない描写で…裸の立ち絵大好き教なので、出てくる度にテンションが上がっていました。
沢山裸の立ち絵を出して下さり有難うございます!!





以下ネタバレ含めての感想です





牧人さん、どうしてピンと来なかったのかを考えたのですが、多分最後の最後まで彼の事が分からないからなんだろうなと思ったり。
レイプした理由も、たがねに惹かれた理由も、分からない。最後の語りでようやくなんとなく分かりますが…
総合的に二人が惹かれた理由が「生理的に合った」から以上でも以下でも無く。
そこが個人的にピンと来なかった部分なんだろうなーと思いました。
自分、恩義によって徐々に惹かれていく関係が好きなので…好みと違うのは仕方ない。
あと、あとがきを読んで察したのですが、たがねは最初からある程度キャラが決まってた中で、牧人さんは後から彼の人生が付け加えられたような形だったらしく。
なるほどなぁと…確かに、たがねの方はガッツリとした下地があるように感じる中で牧人さんはどこかフワフワしてて…そういう下地が固まってない部分もいまいち牧人さんにピンと来なかった部分なのかなぁとも思いました。
婚約者の一件とか…確かに牧人さんの性格形成に一役買ってるだろうけど、何か根本的にそこじゃなくて元々牧人さんは破滅願望あるタイプだったし。
根本的に牧人さんは「そういう人」というキャラクターなんだろうなと思うと、感情移入や好みには合致しにくいというか…
いや、生まれた時からサイコパスも好きですが…牧人さんは明確に「サイコパス」としては描かれていないので、彼をどういう立ち位置で見れば良いのかがイマイチ自分の中で掴めなかった所があり。
「いきなりレイプしてきた人間だけど警察には通報されず、嫌われず、許されてサイコパスではない」みたいな描き方がどうも合わなかったんだろうなーと。
倫理観の相違というか…でも、その点に関してはたがね自身が許している、許していくので自分が口を挟める事では無く、完全に好みの問題だとは割り切ってはいます。
まぁ、あと、そういうフワフワした所が牧人さんらしいと言えばらしいとは思います。


ただ、出会い方とかは好みでは無くても、たがねと牧人さんが徐々に生活していく、二人で過ごして行く描写とても好きで。
たがねの経済面を牧人さんが支えてくれる描写や、元店の客に犯されそうになったのを助けてくれる描写などはグッと来ました。
あの客はダメで牧人さんは良いのは何故なのか…それは単に生理的に合致したり、あの日あの時あの場所だったからたまたま大丈夫だったというという…そういう物なのだとは思いますが、たがねが生まれた家も「運が悪かった」その一点という事を考えると…
運悪く生まれ、運悪く犯され、運良く合致し、運良く惹かれていく…ある意味ではそれを「運命」と呼ぶのではないか?と思うと二人の関係は好みは別にしても運命的だと言わざるを得ないと思っています。
おしっこ飲めるくらいの関係に出会えるなんて、運命だよ、絶対。
(しかし…乙女ゲーで小スカ、飲尿があるのも凄いゲームだとも思ったり。)


たがねの母に関しては姿すら無いのに圧倒的存在感で…某所の助演女優部門部門でノミネートされていたのが凄く分かりました。
作中で間に挟まるメール文だけで地雷感が凄い、圧倒的毒親、他の追随を許さないほどの無自覚の邪悪を感じて…リアル通り越してメール文が出る度に変な笑いが込み上げて来ました。
世の毒親が蓄積されたようなそんな姿(姿は出ないけど)、でも、世の毒親にこのメール文見せても何が悪いのか、自分が言われている事だとかは分からないんだろうなぁ…そこもまた業が深い。
たがねの「ダメ」の部分、間違いなく親に擦り付けられた物なのですが、親がそれを勝手に生まれつきだと思っていたり、そのダメさを更に責めたりで…たがねが実家で居る場所が無かったのがビシビシ伝わってきて…そりゃあ反抗して小学生で処女も捨てるわと。
自己肯定感が低いとかいうレベルじゃ無かったり、自分自身や自分の肉体に対して頓着してない所も家庭環境も相まってリアルで…
乙女ゲーですが、ある一定層の女性は牧人さんよりもたがねの方に心揺さぶられるんじゃないかなと思ってます。


そういう所もあり、最後のドア一枚を隔てて両親の前でのするエロシーンはもう…エロいよりも「よくやった!!」という謎のガッツポーズでした。
今まで自分を縛り付けてきた両親の前で今まで見せた事の無い自分…見せてはいけないと思っていた自分を曝け出す姿が見ていて爽快で。
いや、まぁ、親からしたらたまったもんじゃないかもしれませんが、良いんですよ、それだけの事をたがねにしてきたんだから。
抑圧からの解放というか…「してはいけない事をしてはいけない人の前でする」という今までのたがねの我慢の爆発というか…
エロシーンなのに凄まじくスカッとしたというか…
あのシーンで牧人さんが両親を言葉で説得するという事が無かったのが最高ですね…あぁいう輩に言葉で何かが通じる事は無いので。
実力行使で自分達の関係やたがねの素の姿を見せつけた部分が最高でした、良いエロシーンだ…エロシーンのある意味で正しい使い方だと思っています。


途中の牧人さんの非処女と宇宙の話もうんうんと頷いてしまいました。
非処女、ビッチヒロイン大好きな自分としては頷くばかりです。
あれ?ひょっとしてたがねが好きで牧人さんはピンと来なかったのは、自分がビッチヒロイン萌えだけど童貞厨だからなのか…?とも思ったり。
そうだったら性癖に素直に生きてるなぁと思います(勿論上記の理由も有り、それだけが理由ではないですが)。


自分の性癖もですが、性に対しても何に対しても、「自分に素直に生きる」って凄く大事だなぁと思います。
エピローグでは清々しいくらいに全部吹っ切れた二人が喫茶店を経営していて…
ラストの語りから唐突に飛んだ感が若干ありますが、二人が幸せそうで本当に良かったです。
始まりは全部「運」だけで繋がったような二人だったけれども…最後幸せならそれで良いですし、それもまた「運命」だと思うので、結婚するかどうかは二人に任せるとして、今後是非、幸せを享受して行って欲しいです。