ひっそりと群生

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【My Sweet Home ~invoke for remenbarabe days~】感想

【男性向け18禁】



2003年04月29日発売
『RAIN HILLS』様 ※公式HP閉鎖
【My Sweet Home ~invoke for remenbarabe days~】(PC)(18禁)
以下感想です。








帰る家があるのは束縛され苦しく、帰る家があるのは安心出来て幸せで。
家に、貴方の元に、貴方が帰ってくる場所に、帰りたい場所に帰る。



『十数年前。
 主人公・勇は、皆樹、亮輔と共に
 奇妙な同居生活を始めることとなった。

 「同居人なのか家族なのか」。
 曖昧な関係のままの暮らしが続く中で
 勇と皆樹は成長し、そしてそれぞれの恋をした。

 叶うかどうかも分からない初恋と、三人の関係の間で、
 目に見えない小さな変化が始まってゆく……。』
(公式より引用)



プレイ時間は約4時間15分くらい。
分岐は有り、ED分岐はBAD(?)含めて4つ。


最近ライターの方が新作の同人ゲームを出されたらしい事と、知り合いの方がとても好きと称されており、気になったのでプレイ。
リメイク版もあり、リメイク版を所有していましたがオリジナル版も購入していたのでオリジナル版から。
どちらもDL販売が無い為入手は難しい方かもしれませんが、リメイク版は出回っている数が多いみたいなので中古ショップで手に入りやすいかもです。


血の繋がりの全く無い3人が偶然にも家族になってしまい、曖昧なまま一緒に暮らし続けているという疑似家族物。
3人はそれぞれに想いを抱えていて。
それは恋慕だったり拒絶だったり諦めだったり、凄く細く危うい橋を渡るかのようにどうにか家族を形成して過ごして居ます。
他人だから好きになってしまった。
けれど、家族をやっているから諦めなければならない。
そんなあやふやなままな関係や感情の向きがふとしたきっかけで変わって行きます。
その変化は果たして良い結果になるのか、更に気まずい関係を生み出すのか。
それとも、もう修正出来ない程に崩れ去ってしまうのか。


大きな事件や大きな物事が起こるというような作風ではなく、小さなコミュニティの中での関係が静かに変わっていき、その変化で悩み苦しみ自分達なりの解答を見出していくという物で、派手さは少ないです。
けれど、疑似家族としての危うさや気まずさ、葛藤や向けている感情の方向の違いによる嫉妬やままならなさなどが強く描かれていて、小さな変化が大好きな人ほどグッと胸を締め付けられるような物語だと思いました。


勇の気持ちも、皆樹の気持ちも、亮輔の気持ちも、ある程度の年齢を行ってしまっているが故に分かる。
分かるけれど、ままならない。
彼らが辿る結末は苦しい選択も確かにありますが、どれも納得が出来ます。
血が繋がっていても難しい「家族」、それを他人が営んでいく事の難しさ。
「家族」をやっていくのは難しい。
帰る場所は苦にも楽にもなる。
「家族」や「家」という物に対しての気持ちは現在の心境により変化するという事を細かく描いた一作でした。



『システム、演出』
Nscripter製。
2003年基準だと基本性能は有り。
現代で見るとメッセージ速度が遅く感じたりスキップが遅かったりしますがそこは仕方ないかなと。
ただ、オリジナル版は自分が購入した物が悪かったのか、2つあるEDムービーの片方が途中で再生されなかったです。
10年以上前だとディスクも傷付いてると思うので、また機会があれば買い直しをしてみたいです。


『音楽』
ほぼピアノ曲ピアノ曲大好きな自分としては聞いてて飽きませんでした。
作風にも非常に合っていると思います。
OP曲の「カーテン」は穏やかな中でサビは盛り上がり非常に良く。
フル版は無いのでしょうか?
ゲーム内には無さそうなのが残念です。
主題歌ピアノ曲の「home」は想いが揺れ動くシーンでよく流れたので印象深いです。


『絵』
皆樹のみ有り。
立ち絵のポーズは変わらないのですが洋服が制服、私服、エプロンとありました。
でも、何よりも皆樹の表情が良かったです。
ポーっとしているような、無口そうであまり言葉を話さなさそうな少女ですが、小さな表情変化が良く。
何より「目は口ほどに物を言う」を体現したかのように彼女の視線が彼女の感情をダイレクトに表していました。
辛かったり気まずかったり、嬉しかったり、凄く目で語る子でした。


『物語』
文章はシンプルな中で三者三様の想いが分かってしまうから凄く不思議でした。
視点は勇から見た話なのですが、皆樹の想いも亮輔の想いも分かる。
勇の感情は地の文で伝わりますが、皆樹は表情から亮輔は立場からどう想って接しているのかが強く伝わります。
よく「当事者じゃ無い第三者の方が分かる時がある」という言葉がありますがまさにそんな感じ。
3人がギリギリのラインで他人な中で「家族」で有り続け、「家族」のラインを越えないようにしている姿がとても苦しく。
誰か一人でももう少し適当な人間が居ればこんなに苦しく気まずくはならなかっただろうなと思うほどに3人共繊細で繊細で。
繊細過ぎる人間達が周りの適当な人間の貧乏クジというか、後始末や尻拭きをさせられていて。
そういう真面目な人間程背負い込むというのをまざまざと見せつけられ辛い所がありました。
けれど、彼らが繊細で周りが適当だったからこそ、彼らは出会う事が出来て。
「家族」として気まずくはあったけれど、出会った事が間違いだった事は絶対に無く。
出会わなければ独りだった、あの広い家で独りはきっと辛かった。
そう思う限り、例え世間一般での「家族」の関係を保てなかったとしても彼等の出会いは正しかったと信じています。


『好みのポイント』
皆樹と結ばれるルートの勇の葛藤がめちゃくちゃ好きです。
性と感情の間で揺れ動く男の子大好き党として非常に見ていてニヤニヤしました。
亮輔ルート(で良いのかな?)のラスト、亮輔が皆樹へ必死に「父と娘」として触れるシーンも危うくて好きです。
どのシーンも細かい心の変化がある上での流れで、その繊細さが良いのですが、何よりも短い言葉の使い方が非常に上手だと思いました。
「ありがとう」「いただきます」「ごめんなさい」そういう日常で使う短い言葉の一つ一つが一つの意味を持っていなくて。
本来の意味だけではなく、本人が抱えている感情が上乗せされていて二重にも三重にも意味が積み重なっていました。
本来の意味とは反対の意味の感情も含まれていたり。
そういう「言葉に内包される無限の意味」というのが当たり前の日常の中で何度も使われとても良かったです。





以下ネタバレ含めての感想です





皆樹の亮輔への想いは憧れでもあり恋でもあり。
これが本当の父親だったら歳を重ねる毎に憧れに割り切れただろうに他人である事を知っていたから割り切る事も出来ず。
序盤の皆樹の献身とそれを跳ね除ける亮輔は見ていて非常に痛々しいものがありました。
でも、亮輔の行動は当然というか。
亮輔に近い年齢になったからこそ亮輔の行動は凄く大人で、大人が取る模範的な行動なんですよね。
上手い具合に皆樹をあしらいつつ悲しませない方法で日常を営んでいく、それは真面目であればあるほど難しいと思います。
適当な人間だったらこの状況下には置かれていないはずで、亮輔は適当に見えて凄く真面目な人で。
そんな人間が真っ直ぐ自分に向けられて気付いている好意を軽くあしらって適当に生きていくなんて出来ないです、どんなに歳を重ねてもこればかりは本来持った性根で無理です。
だから亮輔のような人間が皆樹と「家族」のバランスを取る為には彼女を傷付ける道だと分かっていても彼女と距離を置くしかなくて。
大人であるが故の越えてはいけないラインを必死に守り通している人物で亮輔は非常に好感を持てました。
皆樹が傷付いてるのも知っていて、それに対してもひっそりと申し訳無さを感じているでしょうし、亮輔本当に良い大人で。
これが駄目な大人だったら軽く皆樹と関係持ってますよ、亮輔わりとマジで鋼の精神だと思う。


皆樹は一生懸命亮輔との距離を縮めようとしていますが、自分の好意が亮輔との距離を離している事に気付かない辺りに若さを感じます。
いや、気付いていても想いを止める事は出来ないのか、それもまた若さだ。
途中の公園のシーンから皆樹の心情は変化し勇の方に気持ちが向かいますが、わりと正当な流れだと思います。
自分とどこか距離を離そうとしている、自分を拒んでいる存在よりも優しくしてくれる方に好意を寄せるのは当然と言えば当然なので。
人間関係としての最も正当な道に「勇と皆樹の恋人ルート」があるのは凄く納得です。
この「家族」が気まずさが無く曖昧さが無い形を取り持つ為には勇の想いが成就し勇と皆樹が恋人になるのが一番の近道で正統派の道だと思います。
この道に行った事で亮輔も一安心だったろうなーと。
亮輔の心労的にもこの道が安定感ある事でしょう。
でも同時に皆樹の亮輔から勇への心変わりの道でもあり。
からしたら「皆樹は亮輔がずっと好きだった」がどうしても付き纏うわけですよ。
皆樹からしたら確かに諦めでもあるけれど、亮輔への想いは憧れで、ずっと優しく見守ってくれた勇が好きだと気付く変化なのですが…そこを嫉妬するなと勇に言うのは年齢的にも難しく。
だから皆樹の初体験後の「ごめんなさい」にずっと捕らわれるという。
そういう小さな一言にずっと捕らわれるのが凄く分かってしまって、相手が好きであればあるほど引きずりますよね、分かる。
皆樹の「ごめんなさい」は後で「勇に待たせてごめんなさい」という気持ちで言ったと言っていますし、それが本心だとは思いますが、「少しだけ亮輔を重ねてた」という「ごめんなさい」も無自覚にはあったのでは?とは思ってます。
完全に無自覚だとは思うのですが、10年以上の想いなので一つの意味だけじゃ無さそう。
でも、本心は皆樹の語った「待たせた」という意味での「ごめんなさい」で、これで皆樹と勇のわだかまりは決着がつくので…外野がとやかく言う必要は無いのでしょう。


「勇と皆樹の恋人ルート」では勇と結ばれた事で亮輔の皆樹へのわだかまりが解け、皆樹の実の父親とも一つの決着を付け、二人は恋人として新しい「家族」の形態を作っていきます。
実父に対して「許す」とか「付いていく」とかが無かったのは凄く安心しました、この実父に対しての対応は個人的な感情で100点満点を付けたいです。
自分の中では「選択権があった上で生んでる以上、子を捨てた親は親では無く、許すとかそういう次元ではない」が信条にあるので、会って一度話はしたけれど、「親の事情など子を捨てる理由にはならない」とばかりに描かれる事が無く、二度と会う事は無いだろうという「永遠の別離」をしっかりと描き、勇、皆樹、亮輔の3人よりもさらにどうでも良い他人として描かれ続けていたのが非常に見ていて清々しかったです。
一応、皆樹の恋人をほのめかしたのは勇のケジメなんだろうなぁ。
皆樹を抱く事に、性と感情の間で悩んだりする所を含めてそういう真面目過ぎる部分が非常に好感が持てました。


そういう「勇と皆樹の恋人ルート」という嵌るべき型に嵌った3人の安定した関係がある上で「皆樹と亮輔の二人暮らしルート」が3人の時よりも危うくて危うくて。
危ない橋を渡るを越えて危ない綱を渡るになっていたのが非常に冷や汗をかきました。
勇の存在は一つのストッパーだったのだな、と。
亮輔は必死に男を押し殺し父として皆樹に触れますが、このシーンの危うさと言ったらもう…
勇と皆樹では一線を越えても違和感は無く、むしろ王道、正しい道を辿ったと思えたのに、どうして亮輔はこんなに危ういのか。
やっぱり年齢か?年齢なんでしょうか??
32歳と14歳(かな?)、義兄妹よりも確かに危うさが伝わりますね、亮輔が真面目であればあるほど辛いでしょう。
心労で亮輔の胃に穴が開くんじゃないかな?レベル。
でも、禁忌感が強く色んな意味でドキドキするのはコチラのルートでした。
というかパッケージ裏の「……ごめんね。好きです」という台詞があるの、コチラのルートなんですよね。
「勇と皆樹の恋人ルート」が正規の道だとしても、もしかしてこっちが彼等の本来辿る道なのでは?と思ってしまったり。
勇が皆樹への想いを捨てられなかったように、結局、どう頑張っても皆樹の亮輔への想いが消える事は無いのかなと思ってしまいます…10年の想いは重い。


「皆樹兄妹ED」は皆樹は亮輔への想いにある程度踏ん切りを付け、勇は皆樹への想いを留めたまま過ごして行き。
ほんの少しの変化はあったけれど、「家族」の形態は変わらず生きていく3人で、危うさは無くなった気がします。
ただ、皆樹の父の件は解決した描写が無いので永遠に「家族」の形態を保てる保証は無く。
関係は安定するけれど、形態は安定しないという独特なバランスで終わったEDで中々に絶妙でした。


帰る家があるのは束縛されていて苦しくて。
でも、帰る家があるのは安心出来て幸せで。
「家族」や「家」というものは、その時の状況や心境で良くも悪くも感じ方が変わる。
子供の頃は振り回されていても、ある程度の年齢になれば自分で帰る家を選べる。
自分の帰りたい場所や帰って会いたい人、家で迎えたい人が誰なのかと真剣に向き合い、自分の居場所を探す。
血の繋がらない小さなコミュニティの中で変化に戸惑いながらも必死に居場所を求めるお話でした。


あと、地味に皆樹は亮輔へ想いを向け真面目な亮輔の胃を痛めさせ、勇から想いを向けられていていながらも亮輔を優先し勇を小さく傷付け、二人の男性の心を振り回し悪女の素質があるなと思いました(笑)
別に悪い子では無く凄く純粋な子なのですが、純粋過ぎて周りの心情に無自覚というか。
繊細で純粋であるが故に自分の好意が悪い方向へ結び付く事にあまり気付かない子、みたいな。
一人の少女の想いが周りの男性を振り回す、そんな姿に乙女ゲーの主人公感がある子だなと思っていました。