ひっそりと群生

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【愛病世界-象牙の塔-】感想

【ツクール系全年齢】



2019年11月22日発売
東堂 前夜』様 ※リンク先公式HP
愛病世界-象牙の塔-】(PC) ※リンクBOOTH
以下感想です。
必然的に『ゼーメンシュ-Aftermath-』『実に花なり捜査部よ-BrotherInArms-』『サイケデリック・ウーファー-Coloration-』(※リンク先感想)のネタバレもしています。








長い確執に終止符を。
求める彼等に真実を。



『その塔の100階を見た者は、必ず発狂すると云う。

 並行世界を旅する医者集団『ヘーメラー』。
 眠り病の治療を目的にさまざまな世界を渡り歩いた彼らは、ある日、誰もが発狂すると云う塔にやってきてしまう。

 明るく前向きで勇敢な暗号解読家、
 異常でユーモアの効いたサイコキラー
 真面目で大胆不敵な高校生、
 全てを知り尽くした演技者な最強の男。

 混沌極める狂気の塔より、研究者たちによる怒涛の群像劇が始まる。』
(公式より引用)



オススメをして頂きプレイしました。
プレイ時間は約6時間くらい。
ゲームとして単品であり「前作品をプレイしていなくても楽しめるます」とありますが、「ゼーメンシュ-Aftermath-」「実に花なり捜査部よ-BrotherInArms-」「サイケデリックウーファー-Coloration-」クリア後にプレイしないと数々の展開で置いてけぼりをくらう可能性があるので「ゼーメンシュ-Aftermath-」「実に花なり捜査部よ-BrotherInArms-」「サイケデリックウーファー-Coloration-」の順にクリア後推奨です。


今作から有償なのもあり「サイケデリックウーファー」からかなりプレイに間が空いてしまいましたが、完結したとお聞きしてプレイ。
「狩人」に「ヘーメラ」本部が襲撃され、主要キャラは「睡蓮世界」から脱する。
けれど全員導かれるように「水都世界」に引き寄せられ。
沈みゆく運命にある「水都世界」、そこにある人を狂わせる「象牙の塔」。
象牙の塔」の上層階からしか世界移動…ワールドトラベルが出来ない事に気付いたメンバーは「象牙の塔」の上を目指し始める。
というのが今作の物語。
もはやここまで来ると前3作のネタバレ無しでは語れないので、ネタバレは絶対的にして行ってしまうと思います。


「愛病世界シリーズ」4作目の「象牙の塔」、今作は一言で言うなら革命。
そして起承転結の「転」でした。
辿り着いた「水都世界」での「狩人」との対立。
今まで登場したキャラクター達の立場や過去を含めた感情の交差。
どんなに明るく振る舞っても切り離せない過去。
過去に捕らわれ色々な物を見失い、けれど、ある者は現実に引き戻され、ある者は真相に近付き。
逃れられない過去と自分が罪だと思っている物に引きずられ、それでも支えてくれる仲間や過去があったからこそ辿り着く世界の真相。
物語は目まぐるしく動きます。
まさに物語の「転」に相応しいほど。


霖雨の苦悩、才華の揺るぎなさ。
絢爛の過去とモコとの決着。
本作主人公核の千秋の結末。
そして…欺人が辿り付く真実。
そのどれもが人々の生き様を示し、そして次回への圧倒的引きになっていました。


まるで「人魚世界」を思い出すかのような水の都である「水都都市」。
一作目の「ゼーメンシュ」を何度も思い出す後半の展開は非常に辛く。
だからこそ欺人の事を思うと見ていて大変痛々しく。
後半の展開は「ゼーメンシュ」が前提にあると感じ方が180度違うと思うので本当に前3作はプレイ済みでプレイして頂きたいです。


欺人の辿り着いた「世界の真相」。
そして彼が下した決断とこれから行う行動は果たして正しいのか?
マイとの約束は果たされないままで終わるのか…
シリーズラストの次回、彼等の辿る結末が愛に溢れていると信じたいです。



『システム、演出』
ツクール製、履歴は無し。
ツクールなので仕方ないですが履歴が欲しいと感じました。
戦闘は無し、前作同様マウスでの操作が可能。
安定してマップの美しさに目を奪われました。
「睡蓮世界」は形は変わらない中で光加減や水の動きなどが強化されていたと思います。
「水都都市」もですが、世界を歩くだけで楽しかったです。
ミニゲームも選択肢によってイージーかハードを選べるのが良かったです。


『音楽』
今作から知ったのですが、全曲作者様の自作曲だと知りました。
…そりゃ世界観に合っているはずです、凄い
そして今作からサントラが出ていたのでクリア後に購入。
起動後に即流れる「Your sanity」は開始早々「ただものじゃない」感が出ていて盛り上がりが凄まじいです。
「才華蓋世-象牙の塔-」は、やっぱり原曲の才華蓋世の曲+才華蓋世本人がインパクトあるのもあって印象深いです。
「こんな世界をみたくない」の基本の旋律は「ゼーメンシュ」ですよね?
「ゼーメンシュ」の曲調が「こんな世界をみたくない」というタイトルで流れるのズルくないですか?ズルい。
「ちあき」は今作のメインが千秋なのもあり作中で良く聞くな~くらいだったのですが、後半でもう…
「ちあき-そっと手を見る-」が流れる終盤と千秋の件が相まって駄目です。
サントラを聞きながら一番感情が揺さぶられる曲になってしまいました。


『絵』
「ゼーメンシュ」からプレイしていると特に感じられますが、絵の上達がとても分かります。
元々お上手な方ですが、回を重ねる毎に表情が生き生きしてきていて。
ドット絵も更に細かくなり動きが増えたように思います。
会話の際に出る立ち絵もバリエーションが豊かになっていて。
ドットなどから感じる世界自体の美しさもですが、人物画もどんどんきらびやかになり、世界だけでなく、作者様の進化の速度もまた速さを感じました。


『物語』
良い変化が沢山訪れたかと思えば悪い変化も後半ドッと押し寄せて。
安心させてからの落とし方が上手いと言うか酷いと言うか。
物語の緩急の付け方が良い意味で性格が悪いと言うか(褒め言葉)。
第三章までのテンションの上がりっぷりと第四章以降のテンションの下がりっぷりがハンパないです。
今回は「転」らしく「結」に向けて最後に引いて引いて引き抜いて終わりましたし。
最終作が出てから本作をプレイして良かったです、このまま最終作まで突き進みます。


『好みのポイント』
やっぱり才華蓋世が最高で最高で。
彼の唯我独尊、傍若無人、サイコっぷりは他の追随を許しません。
途中の才華が「狩人」と対峙するシーンは見ていて爽快でした。
絢爛もモコの為に主人公らしさを出して。
今回、「捜査部」組の2人が中盤と後半で輝きまくりでした!!





以下ネタバレ含めての感想です





才華蓋世、とにかく最高なんだよなぁ…
去年の「好きな男性キャラランキング」に入れましたが、自分の目に狂いはありませんでした。
才華は狂ってるけど、最高に偽りは無し!
「自分のような殺人鬼を受け入れてくれる所なんかここしか無いし、自分の事や趣味を一から説明するのは面倒だからお前達に死なれたら困る」という一点でパートナーの霖雨を救う姿はまさにサイコ。
霖雨の事も如月の事も特別に思っているけど、基本は自分の損得の為に動いてて常に瞳を本気で狙ってるし瞳の為に一番に行動しているぜ、イエーイ!なブレない姿、本当に好きです。
「抜山?似ていると言われても知らんな、俺は俺」な所も、「「狩人」だろうがなんだろうが「ウーファー」も居るし有用ならば殺さず身近に置いておいて利用した方が良い」の思想も、ゴーイングマイウェイな上に効率厨で自分の事しか考えて居ないのが見ていて凄く爽快。
本作を「革命」と言いましたが、「「ヘーメラ」は本来「アイ病」を知り何とかする為の機関」だったのに、自分達を守る事を最優先にし「狩人」と対立したら「狩人」討伐の方を優先するようになり「狩人」の方の知識があれば解明に近付くはずなのに「アイ病」の方を疎かにしていた…という流れにザクッとメスを入れたのが才華で。
欺人がその「「ヘーメラ」の悪い流れ」に何となく気付いていて才華の事を面白がり才華の案を受け入れたのがまさに「革命」だと思いました。
常識を変えるのは一人の非常識、やっぱり才華は良サイコキャラ過ぎます。
彼の台詞がカラフルになるシーンは「サイケデリックウーファー」でもでしたが盛り上がります。
途中で断髪するのも良き、F○9とかT○Aとかでの断髪好きなので刺さりに刺さりました。


絢爛も、彼の過去が語られ、「ゼーメンシュ」の蘭万の件も絡まり。
複雑な生い立ちの中でそれでも彼もまた自分の道を貫き続け。
後楽との友情を築いた過去や、彼がモコを絶対に諦めない姿。
そしてモコと欺人、「ゼーメンシュ」でのあの過去。
プレイヤーは「ゼーメンシュ」を全方向から見ているのであの結末になるのも辛いけれど仕方無さを感じている中で、モコは一方の視点からしか見れなかったから欺人のあの行動を恨み続けるという悲劇。
その悲劇…疑似家族を失ったモコの悲しみにも絢爛が居る事により新しい道が開かれ。
塔の落下でモコを守り扉を開く姿がまさに「主人公」。
絢爛も間違いなく「主人公」の一人でした。


正直、「実に花なり捜査部よ」は「ゼーメンシュ」よりも世界観が、「サイケデリックウーファー」よりもキャラが薄めに感じ、他作に比べるとそんなに…な印象だったのですが、今作で一気に絢爛と後楽の友情の深さが表れ。
絢爛の過去を知る事で「実に花なり捜査部よ」の感想が書き換わった所があります。
後楽との過去とか「実に花なり捜査部よ」で見たかったとは思いつつ、入る場所が今作だったのも分かるので、中々に面白い構成だなと。
「実に花なり捜査部よ」は全体の「承」その①という感じで、「サイケデリックウーファー」が「承」その②で、展開的には「サイケデリックウーファー」が一段上なのですが、「実に花なり捜査部よ」の「人物が揃う」という事もハチャメチャに必要なので。
「実に花なり捜査部よ」で人を揃わせて、今作で人物の深堀りをして魅力を見せつけるという回を跨ぐ面白い見せ方をしていたなと思います。
「実に花なり捜査部よ」は今作が揃って初めて全魅力を発揮するのですね。
絢爛とモコがまた再び完全にとは言えなくても寄り添い合う事が出来て良かったです。
「好きな女を守る」絢爛、格好良いよ!


第三章で「狩人」も仲間に引き込み、モコも戻り、ここまで安心させてからの~第四章…
冗談抜きで鬼か悪魔か?と。
今まで主人公核だった千秋が最後の最後でこんな結末を迎えるとは思わないじゃないですか!!
世界から引き離され、自我を失い、それでも天衣との約束は覚え続けて。
このシリーズは最初の場面が最後の方にかかりますが、千秋救出のシーンだとは全く予想外で。
どうにか肉体を持ってきたけれど元の形は保っていなくて。
最後の怒涛の展開でBGM「ちあき-そっと手を見る-」はとても好きだけれど同時に胸を打たれる辛いBGMにもなりました。


何千と離れたワールドトラベル。
その結果として世界の真相を知った欺人。
「ゼーメンシュ」以降、表情も感情も変わらず完璧で完全に見えていた欺人が、後半「象牙の塔」が見せる「ゼーメンシュ」の、マイの件や世界の真相を知る事で顔を歪めていくのが彼もどんなに完璧超人に見えていても一人の人間である事を示していて。
この世界全体が何者かの体内で、その存在が体内の悪い部分を「アイ病」として眠らせ「虚無世界」を作り切り離そうとしている。
自分はその「世界」自体の敵だと判断した欺人。
彼は人魚…マイによって得てしまった「不老不死」である自分を何とか「ヘーメラ」の人々に殺してもらい、自分が継承した名を元に「世界」の望むように眠りに進む道を選ぶ。
果たしてこの判断が正しいのか?
今まで登場し去っていった結代はどんな行動を起こすのか?
複数世界を体内に持つ何者か…おそらく人ではない「世界」とは何なのか?
それは神なのか悪魔なのか…それとも名称に当てはめる事が出来ない何かなのか?


最後の最後で謎が謎を呼び、物語は結末に向けて進んで行きます。
「結」の引きに相応しい「転」だったのと同時に、こんなに気になるラスト、もう続きをプレイするしかなくなりました。
このまま真っ直ぐ最終作「全てが愛に至る-Euphoria-」をプレイして行こうと思います。