ひっそりと群生

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【誰が為に鴉は啼く】感想

【女性主人公全年齢】



2020年11月07日配信
6045*』様 ※リンク先公式HP
誰が為に鴉は啼く】(PC) ※リンク先ふりーむ!
以下感想です。








「鬼」「紅い鴉」と呼ばれた少女の生きる為に殺し続けた回顧録



『遥か昔、とある島国の北方に存在した、小さな王国での物語。
 生まれてすぐ捨て子となった少女・山桜花(ヤマザクラ)は、しかし心優しき猟師の男に拾われ、辺境の村で幸福な日々を送っていた。
 けれども彼女が六歳になったばかりの春、過去幾度となく繰り返されてきた南方の国との戦争が再開し、幸福な生活に陰りが差す。
 兵を集めるために村へやってきた役人は、養父のみならず山桜花までもを連れていくと告げ――


 ここから綴られるのは、遠き日の《彼女》の記憶。
 そして《彼女》の犯した罪に対する告白と、一つの懺悔。』
(公式より引用)


プレイ時間は約1時間15分くらい。
分岐無し。


最初に目を引かれたのはその美麗なイラストでした。
北の方の衣装、日本で言うならアイヌめいた民族衣装のきらびやかさ。
主人公の山桜花や他に登場する少女達の着物と装飾が美しく、眼を見張るものがあります。
紅い着物を着て戦う姿により「紅い鴉」と呼ばれ恐れられるようになる山桜花。


少女が戦地に送られる、戦争が起こってしまう仄暗く血の匂いが漂う時代。
山桜花の人生が死と隣り合わせで常に殺すことが中心の人生で。
生まれ、生き様、何もかもが陽の光を見る事のないような人生の中、山桜花はそれでも「生きる」為に過酷な人生を生き抜いて行きます。


困難しかない人生の中で、時に小さな優しさに救われ。
しかし、その小さな優しさすらも塗り潰すほどの大きな悪意に押し潰され。
何度も死を受け入れそうになる山桜花に見ている側も心が擦り減りそうでした。


山桜花とそして小さな王国の歴史。
運命と悲劇。
神に見初められてしまった少女の幸福とは決して言えないけれど、最後にたった一つの繋がりを手に入れ生きて行く姿が印象的でした。



『システム、演出』
吉里吉里製。
欲しい機能はほぼ有り。
メッセージスピードだけ瞬間表示にならなかった所だけが気になりました。
雪の演出や火の粉の演出など、吉里吉里の機能が使われていて。
絵と音楽と物語の絡み合いが一本道のノベルゲームとしてとても美しかったです。


『音楽』
まさかの音楽まで一部自作。
ED曲の「誰が為に鴉は啼く」の旋律は「Crow Feather 2020」としてメインテーマにもなっていて。
「鴉夜抄」「鴉の羽は何処へ消えたのか」でも同じ旋律を聞く事が出来。
どこか物悲しく、でも人生を描いたような壮大さもあり、旋律が作風と凄く合っていました。
気になったのは「誰が為に鴉は啼く」でボカロが流れた事。
儚い世界観だったので少々気になりました。
個人的に「月下の鴉」が旋律や流れるシーンも相まってとても好きです。
「鴉」が入っていてメインテーマの旋律とはまた違う所も印象深かったです。


『絵』
絵が本当に美麗で美麗で。
立ち絵もありますが、ほぼCGで進行し、ここぞという時に欲しいCGが提示されます。
枚数も多く、どの絵も美しく、背景もぼやけた加工を施してありますがそれが過去回想と絡まりとても合っていて。
一番好きなCGはラストの指からの血の口づけが好きです。
立ち絵も年数を重ねる事もあり、キャラクターの成長も見れて。
長年会っていなかったキャラが成長して登場した時にはとても心が踊りました。


『物語』
あまりにも山桜花の人生が過酷過ぎて。
まるで予定調和のように不幸がやって来る所に、神に見初められるのは決して幸福ではない事を痛感しました。
平和になった何処かの地で、山桜花が平和に生きられる事を願います。


『好みのポイント』
物語、絵、BGM、どれも見応え、聴き応えがありました。
一本道のノベルゲーム、電子紙芝居としてどの要素も作りが丁寧で、切なく苦しく辛いお話ではありますが、物語として非常に楽しかったです。





以下ネタバレ含めての感想です





こうなる事は分かってた、分かってたけど、山桜花の人生が重く辛過ぎて。
戦争があるのが一番良くないとは思いますが、言葉だけで語られる王族が本当に自分勝手でワガママで。
山桜花と朔夜月がこんなに過酷な道に居るのに王子はのうのうと生きてそうで苛立ちを覚えました。
占い師も、結局自分の私利私欲の為にしか動いておらず。
堅香子も気持ちは分からなくない、分からなくないけど、戦場に送られた少女に対して「ようやく居なくなってくれた」なんてどれだけ性格が悪いのかと。
そんなんだから夕月に好かれないんだよ。
そんな人々のワガママで養父を失い、義兄を失い、村を失い。
生き抜いていた時に助けてくれた人も確かに居て、小さな善意で生かされたけれど、あまりにも悪意の方が大きく。
悪意に押しつぶされ裏切られる山桜花を見る度に「もうやめてあげて」という気持ちに。


最後に山桜花が「鴉」の声により生き抜き、占い師も堅香子も殺した事は個人的にはスッキリしましたが、その事すらも山桜花にとっては苦痛になるのだと思うといたたまれないです。
山桜花と朔夜月、不老不死になった二人は沢山の時代を跨ぐのでしょうが、平和な時代で共に生きて欲しいと思いました。


そういえば作者様の「雪見桜 Ende des Traums」と世界観が繋がっているらしく。
「雪見桜 Ende des Traums」でも名を変えた朔と瀬緒として登場しているみたいで。
現代日本っぽい時代で平和に生きているのかな?と思いました。
山桜花と朔夜月のその後が気になるので、機会があれば「雪見桜 Ende des Traums」もプレイしたいです。