ひっそりと群生

ひっそりと持ってるCDの情報やゲームの感想上げたり。購入物の記録など。気ままに。飽きっぽいので途中で止まったらご愛嬌。

【フェイクアズール・アーコロジー】感想

【男性向け18禁】



2009年12月17日発売
あっぷりけ -妹-(解散)』※リンク先公式HP(18禁)
フェイクアズール・アーコロジー】(PC)(18禁) ※リンク先Getchu.com(18禁)
以下ネタバレ含めての感想です。








森崎亮人さんの作品に触れるのは4作目、「フェイクアズール・アーコロジー」に。
プレイ時間は、約26時間45分くらい。
システム面は7でもインストール可。
ディスクレス起動可。


500年ほど前、地球に5つの隕石が近付き降り注いだ。
当時の科学者達の技術により、隕石の飛来を予測していた地球はそれぞれの国で「完全環境都市」…アーコロジーを作りあげており、人々はアーコロジーに避難する事で滅亡を避ける事が出来たが、地球の表面は生物が生存出来ない状態になり、氷河期が訪れる。
日本のアーコロジーは日本から「天原」へと改名。
天原」は地上を第一層、一層下の住居区画を第二層とし、地下5層まで続くように科学者「天御」によって作られたアーコロジーであった。
隕石の飛来により混乱した「天原」の人々は大きな争いを起こすが、「天御」の行動により争いは終結
「天御」は今後争いが起こらないように数々の規制と法をアーコロジーに設け、アーコロジーの機関を動かせる権限という絶大な権力を残したまま政治の世界からは手を引く。
「人々は第二層で暮らし、第一層の壁を越える事は重罪である」、これもまた定められた絶対的法であり、人々は第二層に広がる壁に映された空しか空を知らずに生きる事になった。
長い歴史の中で「天原」のアーコロジーでは架空の空を戦闘機のような機体で飛び回る「フライト」というモータースポーツが発展し、政治界にも影響を及ぼす程の国民的スポーツになっていた。
時は経ち、「天御歴500年」の節目から3年前。
天原」のモータースポーツ界には圧倒的王者で無敗の男が君臨していた。
その男、織倉練児は「英雄」と呼ばれ、主人公の千尋を「フライト」の弟子に教育しながら「フライト」のトップや賞を総なめにしていたが、ある日、無謀にも壁の外へと向かって行く。
それに気付いた主人公は練児の後を追うも練児に撃ち落とされ追いつけず、練児は壁を越えた後、政府によって重罪人として処刑された。
それ以来、練児との最後の光景や最後の言葉がトラウマとなった主人公は飛べなくなり、「フライト」の世界から身を引く事に。
そして3年が経ち、「天御歴500年」。
「フライト」も出来ず、通常の学校の授業もままならず、飛べない中で「空」を諦められない主人公は燻りながらも日々を惰性に生きていた。
そんな中、ある日、空の壁を破り主人公の前に見慣れぬフライト機が落ちて来る。
人命救助と好奇心で座席を開くと、そこには元日本であった「天原」では決して見る事が無い金髪碧眼の少女が居た。
「空から落ちてきた少女」、ライン(レティ)。
彼女との出会いが、もう届かないと思っていた「空」を主人公に繋ぎ、「天原」というアーコロジー、そして「外の秘密」を解き明かして行く事になる。


…というのが本作世界の大まかな設定とあらすじになります。
隕石やアーコロジー、「フライト」など、ジャンルはおそらくSF。
SF的世界設定や独自の設定がある上での「世界の謎」、主人公の諦められない「空」への執着と男性的ロマン、ヒロインとの価値観や意見の相違、そして、友情だったら許容出来ていた相違が恋愛関係になると許容は出来なくなるという恋愛特有の関係のややこしさや面倒臭さ。
オリジナルSFの世界が森崎さんらしい男女関係の面倒臭さを交えながら描かれていました。
設定や世界観は面白い、主人公とヒロイン間での価値観の相違でのすれ違い描写も面白い。
確かに面白くはあるのですが…
そういう面白い要素が多々ありつつも、正直、惜しいと感じた要素や個人的に合わなかった要素の方が強く。
「もうちょっと上手く描けただろう所」や「もうちょっとどうにか出来なかったのか?」と思う部分の方が強く出た作品ではありました。


そういう部分を上げて行くと、まずは演出とグラフィックの拙さ。
こういうSF設定の上で「フライト」というモータースポーツが盛んにある世界観で途中空中戦も入るのに、「動き」で魅せる要素が全くありません。
フライト機のデザインは良い、とても良い。
でも、「このフライト機が格好良く戦ってるぞ!」という場面で一枚絵だったり、機体からレーザーの剣が出る差分があるだけで、「機体を動かす」という演出が一切ありませんでした。
いや、別に、何もアニメーションにしろとまでは言いませんよ。
アニメーションがあったらあったで盛り上がりったでしょうが、そんなに金を掛けろとは言えません。
でも、様々な角度からフライト機を見せた画像を用意したり、フライト機が戦う一枚絵をもう少し追加したり出来たんじゃないかなと。
盛り上がったと思った演出は操縦者の顔のカットインが入った時くらい。
戦闘演出があまり盛り上がらない為、戦闘も淡々と文章だけで説明されて、戦闘系作品よりも盛り上がり所は欠けたと思います。
その辺りの演出面と同じ流れになりますが、グラフィックもさほど良くは無く。
背景、人物画共にクオリティ面が低く感じました。
背景は思いっきり「CG」というのが分かるようなカクカクしている背景。
この辺りはアーコロジーという設定上、自然物を感じさせず「CG」が丸見えなのは人工的で逆に効果的にも見えましたが、単純に背景として見るとのっぺりとしていて。
そしてキャラクターの人物画が立ち絵、CG共にどうもバランスの悪さを感じ…
正面絵は良いのですが、どうも首から下に違和感を感じたり横向きになるとバランスが悪く感じたりして。
パッケージは良いのにゲームを進めるとどうしてもキャラ絵のアンバランスさが見えました。
原画家の浅海さんの2021年現在での最終参加は同あかべぇ系列の「小粥姉妹」らしいのですが、未プレイですが紹介絵などを見る限り、驚く程に上達されていらっしゃるので、2009年から見るととんでもない成長が見える為、現在の絵柄は文句無しに素晴らしいのだなとは思っています。
ただ、2009年の時点では背景とキャラ絵は平均以下かなと。
同年代のゲームでプレイ済み作品は「eden* P+M」「ましろ色シンフォニー」「痕 リメイク版」「夜明け前より瑠璃色なMC」があるのですが、その辺りのグラフィッククオリティと一緒に見るとどうしても「………」にはなってしまいます。
まぁ、minoriぱれっとやAUGUST、Leafの大手に並べるのは酷だとは思いますが、2009年発売として見ると、どうしても低予算な印象。
グラフィック面はフライト機のデザインはとても良かったので、だからこそフライト戦の演出をもっと頑張って頂きたかったです。
あと、音声関係の音質も良くは無いので、収録関係もあまり予算を感じませんでした。


次は物語面での気になった所や合わなかった所になるのですが、ますは文章のクドさ。
これに関しては最初の個人ライター作である「きのこまち」で何となく察してはいました。
クドい…というか、ノベルゲームとしてウィンドウメッセージに入る文章にしては一文一文の情報量が多いんですよね森崎さんの文章。
ひと目見てスッと情報が入ってくる文では無く、じっくり読まないと文章の意図している所が分からないタイプ。
主人公視点でもですが、所々で三人称視点が入る際に、書いてある事だけでは無く、その裏の裏の裏までキャラクターのややこしい心情があるというか。
そういうのを察せないと人間関係を掴めないので、サクサクとは読めない文章を書かれます。
これはシステム面にも直結するのですが、そういう文章を書かれるので、主人公の一人称文の時には青いメッセージウィンドウの枠組みで、三人称文の時には緑のメッセージウィンドウの枠組みと綺麗に分けて欲しかったです。
そういう色の分け方はされていましたが、綺麗に統一されておらず、所々で三人称視点なのに緑枠組みの時があり、「今ひょっとして三人称?」と焦ったりしました。
「シュガスパ」「シュガスパPP」「シュガスパ2」ではサブライターの方がいらっしゃり、ウィンドウメッセージでも何とかサクサク読める文体にはなっていましたが、今回また個人作になった事で「きのこまち」の時に感じた「森崎さんの文章はメッセージウィンドウタイプでは無く、情報量的に全画面表示の方が映えるタイプだなー」という気持ちが浮上しました。
ノベルゲームとしての文章での読みにくさは他の方も感想で書かれている事があるので気の所為では無いと思っています。
設定や世界観は良いのに、文章の読みにくさと設定開示の方法があまり上手では無い為、折角惹かれる設定なのに序盤でプレイヤーの心を掴み切れて無いなとも思いました。


あとは、主人公の感情の向きと物語の構成があまりにも「レティ(ライン)」に偏り過ぎていて、他のヒロインが霞み、他のヒロインが不憫な存在と化していた部分が不満でした。
まず、主人公があまりにもレティを気にし過ぎている。
「壁を越え空から落ちてきた少女」という設定の為、レティに比重が傾くのは分かりますが、ルート分岐後に他のヒロインと肉体関係を持ち、恋人関係になっても「レティレティレティレティ」と突き進むので、「そのルートヒロインは?恋人は??」という気持ちに始終なります。
自分は「夢は持っていても良いけれど、それとは別枠として人への想いに関してはルート分岐後はせめてヒロインを想って欲しい派」なので、人間への想いもレティを優先する主人公に全く一途さを感じずに萎えるというか。
恋愛においては浮気ゲーでも無い限りヒロインに一途な主人公が性癖なので全く性癖に掠りもせず、主人公へのプレイヤーからの個人的好感度がめちゃくちゃ低かったです。
ヒロインから主人公への恋愛感情は分かります、莉音とあきらは幼馴染ですし、春子も主人公の才能に惚れ込んでいる、レティは主人公に最初に「天原」で出会い助けてもらってている。
でも、主人公からヒロインへの恋愛感情への変化が殆ど理解出来ないというか…ルート分岐すると速攻で各ヒロインへの恋愛感情が派生する…というか突然肉体関係を持つので、プレイヤーとしてはそれまで全く手を出して来なかったヘタレの主人公に結びつかず「???」になり。
一応各話の間に挟まる閑話選択でヒロインの話を選び、そこでフラグを回収していくシステムにはなっていますが、その閑話があまり主人公がヒロインを好きになるような閑話が無く。
せめて分岐後に数話話を挟んで主人公とヒロインの交流を描いてから肉体関係を描いてくれないと、こちらは唐突な肉体関係に置いてけぼりをくらいました。
その上、各ヒロインのルートも後半は、春子ルートは「レティが自分が元居た場所に帰る為にフライト機で飛び立った事を知った主人公が突然トラウマを克服しレティを追いかける」という流れで、今まで主人公のトラウマを一緒になって克服して主人公を一生懸命飛ばそうとしていた春子の努力は…?となる程にレティの存在のみで飛べるようになりますし、あきらルートは「あきらが危険な場所に居る!助けなきゃ!!」となりますが、その場に一緒にレティも居る為、ルートヒロインと一緒にヒロインポジを獲得していますし、莉音に関しては「ごめん、やっぱり自分は空の方が大事だわ」という流れで莉音の「空を飛んで欲しくない、置いて行って欲しくない」という願いを無視してレティと一緒にレティの故郷に飛び立ちますし…
もう、とにかく「レティレティレティレティ」。
更にはレティルートでは今まで散々執着した空に対して「空が好きなんじゃない!レティが好きだ!!」とのたまう為、「それって空に負けた他のヒロイン(特に莉音)の立場は…?」となるんですよね。
最早完全にレティゲー。
これが例えば「穢翼」や「とな恋」のように章構成になっていて、一章は春子編で春子編でフラグを立てると春子ルートへ立てないとあきら編へ、そして莉音→レティと続いていくタイプだったり、ルートロックがかかっていて、春子、あきら、莉音を攻略するとレティルート開放とかだったらまだ「レティゲー」でも納得出来たのですが、ルートロックがかかっているのはノエルルートのみで、レティが最初から攻略出来る為、ヒロインが横一列に配置されながらも全く対等ではないという状況になっています。
ここまで「レティゲー」にするつもりだったなら正直ルートそのものが「レティの為にある」くらいの作りをしていて欲しかったです。
更に設定…「世界の謎の開示」もまた当然ながらレティを基準に作られています。
春子は「開示無し、フライト関係の細かい現状」、あきらは「「天原」のシステム開示、「天御」のお家闘争」、莉音は「壁の向こうの真実、空を巡る莉音との価値観の相違」、レティは「全ての謎の開示、共に飛び立つ」という話になっているのですが、ぶっちゃけ「世界の謎」に関してはレティルートをプレイすれば問題無いというか…
レティルートが終われば「世界の謎」を知りたくてプレイしていたタイプのプレイヤーにとって本作は「他ルートは見なくても良いか」となってしまいます。
「恋人と価値観の相違で起こる摩擦」も本作の見所ではありますが、SF設定目当てでそういうのに興味がないプレイヤーも居る中、ルートロック無しで即解決してしまうのはどうかなと。
なのでやっぱり本作は「ルートロックを掛ける」、もしくは「章構成にする」の作りの方が良かったと思っています。
作りに関しても思う所があり、話の合間にある閑話を選択する事によってフラグを立てるシステムなのですが、各ルートに分岐した後に選んでいない閑話の話題が出て話が進む事が多々あったので、「え…その話、知らない…」となる事が多かった所もネック。
これは「シュガスパ」の時にも起こった現象だったのですが、こういう作りにするのならルート分岐後に出る閑話の話題は、その閑話を通るのが攻略条件として作った方が違和感は減ったと思います。


あとは…やっぱり主人公の甲斐性の無さというか、駄目さというか。
今作が「夢を追う話」であり、スポ根などの「夢を一緒に追うヒロイン」とかでない以上、どうしても「夢と恋愛どっちを取る?」現象が来るとは分かっていました。
分かっては居ました、でも、他の感想でも書きましたが自分はこの「夢と恋愛」を天秤に掛けるのがどうしても苦手で苦手で…
「いや、夢も恋愛もどっちも取れよ!」と思いますし、一応今作でも「夢と恋愛」を選びはしました、そこは良かった、そこは良かったのですが…
主人公があまりにも言動がアレ過ぎて、「いや、お前は夢と恋愛両方選んでも結局両方掴めなくね??」となるタイプだったのが問題というか。
「昔はフライトで凄かった」や「フライトの天才」とか作中では言われますが、プレイヤーはその時の事を他キャラの口頭でしか聞く事が無いので「ふーん、そんなに凄いんだ」くらいしか実感が無く。
芸術で名を馳せた才人に納得出来るのも結果的に芸術作が残っているからだったり、スポーツで名を馳せた才人に納得出来るのも結果的にそのスポーツをしている動画が残っていたりで、「こんな素敵な物を作った」とか「こんなに素晴らしい成績を残した」とか後から言われても、目に見える形で残っているか過去を見れるとかしないと結局教科書の文章のように情報だけで終わってしまうと思うんですよ。
主人公は「フライトが凄かった!」と言われても過去回想などで凄かった時のフライトで飛んでいる描写が全く無い為、プレイヤーからしたら「才人の凄さを人づてに情報だけで得ている」になってしまっていて。
その上で、本作中で見える主人公の姿というのは飛べなくなり、学校でもまともに勉強せず問題を起こしまくり惰性に生きている主人公の姿だけなので、プレイヤーからしたら「駄目な主人公」の姿しか見えないタイプ。
そういう姿とどのルートに行っても上記で語ったように、そのルートヒロインでは無く「レティの為に覚醒!」とかしちゃってレティに突き進むので、「なんだこの浮気性男…」にしかならないという。
まだ、作中の途中で「分岐後に分岐したヒロインを助ける!」とか大きなイベントで「主人公が仲間の誰かを救う!」みたいな展開があれば格好良いのですが、あるのはレティと莉音のキャットファイトで、むしろそのシーンでレティが漢前な姿を見せて格好良く、主人公はその場に居らず蚊帳の外…
ぶっちゃけると「主人公が格好良いシーン」というのが本作ではラストのラストしか無い為に、主人公としての「格好良いポイント」みたいなのが足りないんですよ。
更に夢の為なら猪突猛進で突き進むのですが、あまりにも現実を見て無さ過ぎて。
父親であり「天原」の中央庁に努め長官である父親の衛さんと対立するシーンが多々あるのですが、どんな問題でも感情論や理想論でしか語らない為、見ていてイライラしますし、主人公が引き起こした現実問題の尻ぬぐいは衛さんやあきらが行っている為、「お前、ちゃんと自分で責任を取ってから強く出ろよ…」としか思えず。
父親と主人公の対立は様々物語で語られる事が多くかなりの場合、読む側は主人公側に肩寄せするような描き方がされますが、本作ではどうしても父親側に肩を寄せてしまい。
父親の衛さんがまだ自分の立場を使って私利私欲で行動するような人間だったら嫌な人間で非難出来ますが、作中そのような描写が全く無く。
むしろ自分の立場で出来る最大限の譲歩をしてレティや主人公を守ろうとし、主人公が今の状況に文句を言うような場合、大抵はもう「衛さんのこの立場で出来る限りの事はやった上で、主人公の今の状況が出来ている」という状態しか無い(というか衛さんがこの立場を維持しないと「天御」の抗争であきらが大樹に負ける)ので、主人公があまるにも無知に見えてイライラしました。
「責任を取る、それが私の仕事だ」と「踊る大◯査線」の映画で室◯さんが言うのですが、私がこの言葉が格好良さの基準になるくらいに大好きで。
そういう基準で言うなら主人公の父親の衛さんの方が圧倒的に主人公よりも「格好良い」んですよね…それに比例するかのように衛さんと会話する度に主人公が格好悪くなって行くという(というかこんだけ責任放棄して他人に尻ぬぐいさせて責任を押し付けるタイプなのによく成人認証通ったな主人公…)。
そんな主人公が「夢も恋愛もどっちも選ぶ!」とか言うから「いや…お前には無理だろ…」となってしまったり。
極端な話ですが、「世界とヒロイン」が天秤に掛かった場合に「どちらも選ぶ!」と言い実行出来るくらいのカリスマや格好良さが無いと「夢と恋愛」も選べないと思っています。
それで言うなら主人公はカリスマも格好良さも、更には責任感も全く足りず。
まだ、衛さんやそれこそ敵対する風見、立ち絵すらないフライト機の整備士のおやっさんが「夢も恋愛もどちらも選ぶ」と言った方が「この人なら大丈夫だな!」となるくらいにカリスマや格好良さがあったので、他の壮年男性陣の格好良さに主人公が圧倒的に負けていました。
で、結局「夢も恋愛もどっちも選ぶ!」と豪語しながら夢の方にしか主人公の力では進めて居らず…
恋愛の方に関しては「ヒロインが主人公の夢を追う頑固さに負けたから、ヒロインが認めている状態」であり、「ヒロインを格好良さやカリスマで納得させる」というような描写が無いんですよね。
ギリギリあって春子をフライトで負かせたルートくらいか…
それ以外のルートでは「ヒロインの主人公を好きという感情に胡座をかいて許容してもらっている状態」の為、「相手の好きという感情に許されてるなぁ…」という気分。
なのでどうも、スッキリと「ヒロインも納得して、夢に突き進めて良かったね!」という気持ちにはなれないような夢の掴み方だとは思いました。
もうちょっと、もうちょっと、主人公なら格好良くあってくれや…という気持ち。


そういう主人公の格好良く無さもですが、それに付属するような形で主人公の必要の無さもまた追い打ちをかけていて。
この物語、全ルートやBAD通ると分かるのですが、ぶっちゃけ主人公、全体の物語としては超必要ない立ち位置なんですよね。
この作品の大きく起こる問題は「レティが外からやってくる」「「天原」に異常気象が起こり夏だけになる」「その解決策をレティが知っている」「「天原」問題の解決の為、レティが故郷に帰る」というのが大きな軸になるのですが、どの要素も主人公無しで解決出来てしまうという…
春子ルートだといつの間にか異常気象の問題は解決しレティが故郷に飛び立つのでその辺りが顕著。
今作はラストで師匠の練児の幻影と会話するシーンがあって「練児は英雄では無かった」となる為、「英雄」の物語では無いです。
なので、「天原」の問題に主人公が介入しなくても解決するという道理は分かります、分かりますが…でも物語の「主人公」なんですよ!
せめて「主人公が居ないとヒロインが大変になる」くらいの状況…Ka◯on現象とまでは言わなくても「ヒロインを救う!」くらい起きないと「主人公」としての意義を見失います…
春子は主人公と結ばれなくてもフライトで勝ち進みますし、あきらは主人公と結ばれなくても大樹に勝ちますし、莉音は主人公と結ばれなくても幼馴染の距離はキープし続けますし、レティは主人公と結ばれなくても故郷に帰り「天原」の異常気象を解決してくれますし…
なんだコレ、主人公が居なくてもヒロインが一人で強く立ち向かっていくつよつよヒロイン話じゃないですか。
「シュガスパ2」も駄目主人公につよつよヒロインでしたが、森崎さんはそういう性癖をお持ちなのでしょうか…
最終的に主人公が居なくてもヒロインは各自の問題を自力でなんとかしてしまいますし、主人公が夢を選んでも寛大な愛と心で許容しますしで主人公よりもヒロインの方が漢前度が高いので、主人公が「夢に向かう」という要素よりもヒロインがしたたかで精神的強度が高いという印象の方が強かったです。


感じる印象は個人差がありそうですが、個人的には「主人公が合わなかった」これにつきます。
というか夢を題材にした話でありながら主人公が「夢も恋愛も掴み取れる!」ような器では無かったと感じたのが一番の残念な所でした。
もう少し成長物として中盤でも格好良い要素や、全部掴み取れる程のカリスマや責任感が欲しい、そんな風に思いました。


音楽は普通…近未来的なBGMと音作りは良かったですが「これが好き!」となるタイプのBGMは無かったです。
OPの「アンリミテッド」は流石のBOG。
音関係は普通に感じる中でOPだけは群を抜いて最高、BOGに外れ無しです。
声はレティ役の柊さんは…その…このお名前は一つしか無いですが今年沢山魂の双子の方をお聞きしました。
森崎さん作品キャラでは2人目でしょうか。
レティの自信満々明るい声は良いですね、明るいお声が似合うのとここぞ!というシーンで言う事が格好良いので聞いててスカッとしました。
莉音役の風音さんもまた森崎さん作品でお聞きするのは魂の双子を含めて2キャラ目。
ただ、下手とは言いませんが、風音さんは嫉妬系キャラよりも自信満々で主人公に対して上から目線だったり、最後には引っ張っていく系の役が似合うなーとは思いました。
嫉妬とかヤンがデレる系も悪くはないですが、強気キャラが至高だと思っています。
あきら役の雪都さんはメインヒロインでは初聴き。
圧倒的権力者の「天御」としての輝(あきら)と主人公の幼馴染としてのあきらの台詞回しの違うが上手く、輝としてのあきらが重い決断を下す時の声色が「上の立場の者」を感じてとても良かったです。
春子役の大波さんは「はにはに」の文緒以来。
大人しい時の声質は良いのですが、声を張り上げた時に毎回ビックリしてどうも違和感がありました。
急に感情が高ぶるのが春子らしいと言えばらしいですが、もう少し張り方を上手くして欲しかったです。
静かに話す時や何かを説明する時の演技はとても良かったので、そういうタイプの役が良いなとは思いました。
ノエル役の桃井さんは商業になってからの自分が触れる森崎さん作品で皆勤賞。
「シュガスパ」の時には低い声色でクール、「シュガスパ2」では破天荒なお姉さんと全然違う演技で魅了して下さった桃井さんですが、今回のノエルはクール系お色気お姉さんの声質で更に別の演技も聞けて驚き。
他のゲームではロリっ子も上手でしたし…本当に芸達者な方で聞いてて飽きません。
…というか、調べてて知りましたが今年再プレイした超絶大好きな辱ゲーにエロ有りの性悪サブキャラとして魂の双子の方が出てました。
ノエルはそのキャラの演技方法に近かった気がします、お色気お姉さん系。
毎回違う演技で楽しませて頂き、とても嬉しいです、今後も出演作をプレイ出来るのを楽しみにしています。



プレイ順は
春子→あきら→莉音→レティ→ノエル→TRUE
の順で攻略



『勇那春子 ルート』
主人公が空を飛ぶ理由は「壁の外へ行く為」、春子の空を飛ぶ理由は「誰よりも速くなる為」であり、お互いのフライトに掛けるスタンスで気まずくなるというルート。
主人公にとってのフライトは「壁の向こうへ行く手段」であり、道具であった…という事実に春子が気付き苛立ちを感じる訳ですが…
まぁ分かる、自分にとっての一番の目的が相手にとっての手段で道具だと思ったら腹が立つのも分かる。
更には今まで主人公を飛ばそうと必死になって一緒に頑張っていたのに恋人である自分の努力よりもレティが外に出る事に気付いて追いかける事でトラウマを克服した事にも苛立ちを感じるのも分かる。
全部の悪い要素が重なって、春子が距離を置きたくなったのも分かってしまって。
でも主人公からしたら何故春子が距離を置いたか分からないので、話し合いも出来ずにフライトの大会が始まり、飛べるようになった自分は元居たフライト会社に戻る事になり、会社が関わり余計に春子と話す機会が無くなるという。
それに耐えられなくなった主人公がヒールを演じる事で、大会上位に食い込んでいく話ですが、レティでトラウマを克服しながらも、春子とちゃんと話したい一心でフライトの大会を駆け上がっていく展開は作中で一番スポ根要素が強く、熱かった話だと思います。
主人公が春子に勝つと壁の向こうへ行き、春子に負けるとフライト選手として活動するというのも理に適っていたなと。
春子はフライトの人間でスポーツマンシップの人間なので、負けた相手には絶対服従で主人公が「壁の向こうへ行く」という夢を追いかけるのにも納得するタイプでしょうし、負けたらヒロインの為に生きる、勝ったらヒロインも納得する形で夢を掴むという、ゲームらしくしっかりとした分岐があって後味が良かったルートでした。
ただ、このルートでは「天原」の事は何一つ分からない為、「フライトがこの世界でどういう物か」を語るルートだったなとは思います。


『天御輝(あきら) ルート』
天原」の異常気象の原因と「天御」のお家問題についてのお話。
主人公とヒロインの価値観の相違でのゴタゴタは無いですが、「天御」の直径は「天原」のシステムを唯一使えるDNAを持っているというシステムが関係した一族の問題が出てくる為、「身分の差」「「天御」の遺伝子を持っていない主人公とあきらは結婚は出来ない」という、悲恋的な要素が絡む話ではありました。
普通の恋愛学園系のエロゲだと「身分の差」とか出てくると「どんな身分だよ…」となりがちですが、オリジナルの世界設定を組み、遺伝子の要素が住んでいる街のシステムに関わるなど骨組みをしっかりと作った上で身分問題を恋愛と絡めてプレイヤーに納得させていたのは上手いなぁと思いました。
あきらに近付くには普通の身分では駄目で、それこそ国民的スポーツのフライトで王者になるしかない…という所からフライトに復帰しようとする流れも上手かったと思います。
ただ、あきらの居る先に必ずレティが居る為、これもまたレティを追いかける事にもなるという…
天原」のシステムが出てくる以上、あきらと一緒にレティが居るのは分かるけれど、流石にここまでルート分岐後のヒロインと一緒に居なくても…みたいな気持ちに。
天原」のシステムの初期化をするか否かで一族の敵対側である叔母の大樹とあきらがマンツーマンで向かい合うシーンがあるのですが、そのシーンの際に大樹が「絶対的「天御」の遺伝子が欲しい」と自分の遺伝子を精子にして閉じ込めたカプセルをあきらに挿入しようとしたシーンがぶっちゃけ本作の中で一番エロかったと思います。
百合!レズ!来た!!…いや、別に大樹に恋愛感情は全く無いのですが、「遺伝子」という理由があるとはいえ自分の遺伝子を精子カプセルにして女の子に挿入しようとする女性×ロリっ子、良いですよね、犯罪臭(というかモロ犯罪…)でインモラル臭がたまらんです。
このルートには分岐は無く、主人公がフライト機で乗り込みあきらを救いハッピーEDしか無いのですが、あきらも挿入されシステムも初期化されるBADも見たかった気持ちもあります…あきらの挿入後のレイプ目とか見たかったです。
あきらは主人公が壁の外を知った以上、「置いて行かれるのが面白くないなー」とは思いつつも、主人公が壁の外に行ってレティの故郷に行き「天原」のシステムを治す技術を持ち帰って貰う事に関しては立場上推奨派なので、男女間での面倒くさいゴタゴタが無かった事は見ていてサッパリしました。
まぁその分、このルートはあきらよりも「天御」のお家のゴタゴタの比率が大きいので、あきらとの関係が薄くなっていたなとは思います。


『織倉莉音 ルート』
一番面倒臭い男女間が描かれるルート。
森崎さんらしさが出ていたのはこのルートな気がします。
父親の練児が壁を越えた事で「空は自分を置いて行く場所」という認識になり、空を嫌うようになった莉音。
なので、莉音は主人公の夢である「空を飛ぶ」というのに真っ向から歯向かってくるヒロインです。
今まではトラウマから飛べず、空を諦めていた主人公を見て安心していたが、レティが来た事で事態が変わっていく。
実は壁を越えてレティの故郷の空まで行き、父親の最後の言葉を持っているレティ。
主人公が憧れた空を…外の世界を知っている上で「天原」にやって来た後、主人公と行動を共にし、自分は知らない情報を共有している。
まぁ、莉音からしたら気に食わないですよね、幼馴染なのもですが見て分かるように主人公の事が好きなので。
そういう「主人公が飛べないなら自分と一緒に居てくれる」という気持ちや、色々な物を気にかけているようで大体の行動が「主人公からの好感度を上げる為」だったりする所がしたたかというか…女性のそういう部分を煮詰めたような性格でとてもリアルでした。
レティの言う「お父さんの件に関しては謝るけれど、主人公の件に関しては貴女が一歩進まないからでしょう?」というのはド正論過ぎます。
そういう風に行動の裏に「主人公の側にいる為」が常にありながらも、主人公が他のヒロインと結ばれると「横から奪ってやる」という気持ち自体は無い訳では無いけれど行動を起こさないくらいには良い子というか…
根底の性質は善人なので悪女にはなり切れない…というのもまたリアルだなぁと思いました。
そして彼女の願いは「主人公が空を飛ばずに自分の側にずっと居る」という物なので、まぁ本作のコンセプトと絡んだ時に、絶対に相容れない価値観になります。
莉音の言い分も分かる、父親がフライトで死んだらそりゃあ空が嫌いにもなります。
「お父さんが死んだから」「危険だから」「自分を置いて行くから」様々な思いで嫌いにもなる。
でも、じゃあ、「自分が嫌いだから」という理由で相手の好きな物を縛っても良いのか?と聞かれたらそれはNOで。
例え理由があったとしても、「自分の嫌い」は「自分の中の現象」でしか無い。
それを外に出し、相手の自由を束縛しようとする時点で、莉音の我儘でしかありません。
そして主人公の夢を諦めたく無いという気持ちも分かる。
3年前に練児に置いて行かれたけれど、こんどは練児が行った先に行けるかもしれないと思ったら飛びたくもなる。
でも、じゃあ、「自分がやりたいから」という理由で相手(莉音ルートなので最も近い対象であり恋仲になる莉音)が嫌がる事をしても良いのか?と聞かれたらそれもNOで。
友人関係でもですが、相手と関係を結ぶ際に重要な事は「相手の嫌がる事をしない」であると思っています。
相手の嫌がる事をした時点で自分を優先した事になり、それが原因で関係が破綻してもそれはそれで仕方ないです。
ようは、この二人の関係は「どちらかが折れる」しか無い状態なんですよね。
そして、「折らせた側が我儘になる」というのが決定付けられている関係になります。
更に恋愛になると友人関係以上にそういう価値観の相違の摺り合わせが上手くあった上で成り立つとも思っているのでこれまた難しい問題ですが、二人はとても極端というか。
莉音に対しては「空を目指している事なんて幼少期から分かっているのだから、もう少し寛容になれよ」と思いますし、主人公に対しては「そういう理由があって今まで自分は莉音を幸せに出来ないと彼女の想いを拒否して来たのだから恋愛として莉音を受け入れた以上莉音にも寄り添えよ」とも思います。
二人の間に50/50が無く、1か0しか無いのが若さというか、面倒臭さというか。
結局の所、ルート分岐しても莉音が折れて主人公が夢を追うので、主人公の我儘さが強固になり、「駄目主人公を愛で支えるヒロイン」が出来上がる訳ですが…
主人公、練児から置いて行かれた側ではありますが自分も空を飛べる為置いて行ける立場でもあった為、立場的に優位な所もあったのが個人的には気に食わないというか。
「置いて行かれた」とは言いつつも、「本当に置いて行かれるだけしか出来ない側」の気持ちは理解出来て無かったとは思います。
なので、ルート分岐は「莉音が主人公の帰りを待ち続ける」と「莉音が帰ってきた主人公と再会する」よりも、主人公が莉音に置いて行かれるEDもあって初めて対等になったのでは?とは思っていて。
ようするに作中で垣間見せるヤンデレ莉音というか、ヤンデレよりももっとメンヘラ力を強くして、BADとして莉音が自害しても良かったのでは?と思います。
ぶっちゃけゲームのジャンルが許すなら莉音NTRルートが欲しかったです。
そんくらいないと主人公、「置いて行かれるだけの人間」の気持ち理解出来ないでしょ…
なんかこう…莉音ばかりが置いて行かれて不公平ですし、レティルートではレティに「空よりお前が好きだ」と言うのに莉音には「空の方が…」というのもまた酷いですし。
結局どう足掻いても二人の願いが相反する為、そこに完璧に折り合いを付けないと二人は同じ道に立つ事は出来ないので主人公からしたら莉音が空に勝てないのは分かります、分かりはしますが…
でも、「そういうのは心に秘めておいて何も直接言わなくても…」とも思うので、言葉で言った主人公に対し、主人公にも莉音に何らかの形で置いて行かれる痛い目にあって欲しいと思った所があります。
綺麗な結末に見せつつ結局は莉音の「空を見ている主人公を含めて好き」という想いに甘える形にもなるので、相互理解や価値観の摺り合わせは完璧には出来ないままなので、リアルだとは思いつつも物語としてはモヤッとはしました。
そういえば、3年前に練児に置いて行かれた際に腕を折り意気消沈している主人公を介抱していた莉音に対し、苛立ちと勢いで莉音を押し倒し下着の状態にまでひん剥くも莉音が「ちーちゃん」という呼び方から「千尋」に変わった事で幼馴染の関係が崩れる事が怖くなり未遂で終わっているという過去があるのですが…
森崎さん「シュガスパ」でも主人公と幼馴染のミャンマーが未遂で終わっているという設定があったり、「きのこまち」でも序盤で主人公とヒロインが初体験失敗したり、「シュガスパ2」では昔から主人公と仲の良いさなと恋愛関係や肉体関係は全く無かったけれど、周りと恋愛の事でゴタゴタがあり、立場的に恋人に見えるような関係だった過去があったり…「昔から仲の良いヒロインと一回男女関係でゴタゴタが起こっている」というのが性癖だったりするのでしょうか?
連続でそういうヒロインが来てるので「性癖か…?」と思ったりしました。
「シュガスパ」のミャンマーもまた主人公の夢を嫌う系のヒロインだったのですが、ミャンマーは嫌う原因が「自分を見てくれないから」以外特に無かったのに対し、莉音は「父親が空で死んだから」としっかりとした理由付けがされていたのはとても良かったです。
「自分を見てくれない」だけで夢否定は流石に…と思っていたので。
全体の話としての大きなイベントは「壁の外の真相」ですが…
「実は「天原」は月にあった」というのには驚きつつも、壁の外が宇宙な事には気付いてはいました。
あきらルートでおやっさんが壁の外に関して「う…壁の外」と言った事も大きいのですが、SFという設定からアーコロジーの外が地球であったとしても、もう大気圏なども無い状態になっててもおかしくはないな…と思っていたので、予想の範囲内。
でもこの開示により、練児が「お前は来れない」と言ったのが「主人公が来れないというよりも機体が宇宙に対応していない」という理由になっていたというのが繋がったのは面白かったです。
誰との好感度も上げないBADルートがあるのですが、そのルートでは主人公は飛べないまま、莉音と今まで通りの関係で居続けるという流れになるのですが、そのルートラストで莉音がめちゃくちゃ良い笑顔をするので、正直ルートEDよりも、こちらの方が莉音GOODな気がしています。
BADの流れは「主人公が折れた」流れであり「莉音の我儘が通る」流れなので、そりゃあ満面の笑みになるよなぁ…と彼女のイイ性格やしたたかさに惚れ惚れします。


『ライン・T・ミラー ルート』
超メインヒロイン。
「壁を越え空から落ちてきた少女」という普遍的な物語や王道物語…ラ◯ュタみたいな展開を彷彿とさせながらパ◯ーが居なくても自力でラピ◯タに辿り着きバ◯スを唱えられるタイプの強いシ◯タ、作中でおそらく一番漢前。
主人公が居なくても自力で何でもこなして故郷に帰れるパワーを持っています。
莉音のルートで彼女が言う「出来る事とやりたい事。そうする事と、してしまう事。あと、そうなってしまう事。これは全部違うものなの」という台詞はかなり好きです。
天原」でゴタゴタを起こす事は衛さんに責任を押し付ける所はありますが、彼女が故郷、ドイツのアーコロジー「ステルングローブ」に帰って状況を伝えたり、「ステルングローブ」と「天原」との交流を設けたり、人造人間である自身の身体に起こったエラーなどは彼女しか果たせない責任であり、その辺りはしっかりと責務を果たすんだろうなと思うと…やっぱりめちゃくちゃ漢前だと思います。
彼女のルートに行けばほぼ確実に「世界の謎」…「天原」の異常気象と「壁の外」については解明されるという。
で、メインヒロインではあるのですが、それまでに上記ルートを通っていると真相がほぼ各ルートで開示されているので驚いたりする所は無く。
しかも話の流れも莉音ルートとほぼ変わらない為、恋愛関係になるのがレティになっただけに変わるという。
更にレティは春子や莉音のように価値観の相違で起こる男女のゴタゴタが無いので、サクサクと王道の異邦人との恋愛物語を読むだけになってしまうという薄さ。
なのでやっぱり本作はルート固定…それよりも章構成分岐の方がまだレティルートに入った時に盛り上がったと思います。
彼女との物語で覚えているの…本当にメインのゴタゴタ以外起こらない為、殆ど覚えておらず。
他ヒロインと違い「空じゃなくレティが好きだ」と主人公が言ったくらいしか印象が無いです。
で、しかもその言葉も、「レティが一番特別なんだね」と素直に受け取れず…
「だって、そりゃあレティを選ぶ事=空の向こうが付属する訳で…別に他ヒロインと違いレティと空は天秤にかけなくても良いから「レティが一番」とかも言えるよね」と受け取ってしまい、真っ白な心でその言葉を受け止められない自分が居ました。
レティに対して「空よりレティが好きだ!」と言うのと、他ヒロインであるあきらや春子…特に莉音に対して「空よりお前が好きだ!」と言うのには天と地ほど差があって。
「もし、「空よりお前が好きだ!」という言葉をレティ以外のヒロインに言ったら、その後、その言葉を裏切る形で空を飛べるか?」の部分に大きな違いが有り過ぎる為、「レティより空が好き」という言葉があまりにも軽過ぎて…
「あー、結局保身ありきでしか空とヒロインを天秤にかけられないんだな…」と主人公に逆に幻滅する台詞でした。
最後はレティと一緒に宇宙に出て地球へ向かうという王道ではありますが他ヒロインのように印象に残るポイントも無く薄味。
レティのルートだけがあれば話の大筋としては良いけれど、レティルートを最後にやると他ヒロインよりも恋愛でのゴタゴタやレティルートだけでの大きなイベントは無い為印象に残らないという。
「レティゲー」にしたいのに「レティゲー」になり切れてないというのが本当に惜しかったです。


『ノエル ルート』
レティルート後に開放のオマケルート。
まさかのノエル擬人化ルート。
実は恋愛を描いた中では一番好みでした。
発情してVRでのサッパリした肉体関係から始まりながらノエルの1個体しかないという生物としての孤独を想うようになった主人公。
肉体関係関係から始まったけれど、徐々にノエルを想っていく流れがスムーズで一番主人公からの恋愛感情が分かりやすく、「主人公がヒロインを好きな描写」が好きな自分には一番刺さったルートでした。
ノエルの「あんたとは発情をなんとかするだけの相手」と言いあしらう行動に主人公が一生懸命寄り添おうとする流れが大変良く。
エロもVRでのノエルからの女性上位系で桃井さんのエロティックお姉さん演技もあり最高でした。
大きなイベントは軽く省きながら、レティと一緒に帰ったノエル。
帰還後に派遣されたキャロルという女性は故郷で自分を作った博士に人間の肉体が欲しいと文句を言い作ってもらった身体で。
最後は人の姿として再会する…物語としては良い流れでした。
良い流れでした…が…自分は美女と野獣で野獣が人間に戻るのを阻止したい派閥であり、動物の擬人化で結ばれるのがモヤる党としては手放しで喜べないというか。
物語としての良さと性癖としての地雷が絡まって複雑な心境になったEDではありました。
物語としては間違いなく綺麗です、綺麗です…完全に自分の性癖の問題です。
あとは、オマケでも良いのでせめて帰還後のキャロルとのエロもせっかくなら欲しいと思いました。


『TRUE ルート』
誰のルートを通ったかは明確化されませんが、主人公もレティと共に地球に行き、「天原」の異常気象を治した後、地球との交流を開始したというグランドエンド。
明確化はされませんが、レティルートがしっくり来るとは思います。
天原」と地球の交流が始まり、レティに手を引かれ、地球に向かい、「本当の空」を飛ぼう!!とするEDですが…
出来れば地球の空を飛ぶCGは欲しかったです。
演出面がラストまでパッとしないままで凄く残念でした。
ラスト、主人公の機体が空を飛び、練児の機体が薄く一緒に飛ぶ…みたいなCGが挿入されたら完璧だったと思います。
物語的にレティだけが主人公を壁の外へ連れ出せるので主人公からしたら「唯一夢を叶えてくれる相手」であり、やっぱり特別感があるヒロインだと思いつつ、もう少し印象深いレティとのイベントが欲しかったです。



SFとして面白くなりそうではありますが、色々と損していた部分が大きいと思った話でした。
演出面やグラフィック、構成などがもっとなんとかなってればなーとどうしても思ってしまいます。
…というか月にある「天原」が何故日本人しか居なかったのか?という部分には触れられ無かったような気が…
天原」が隕石で取り残されたまでは分かりますが、「月に日本人しか居なかった理由」だけは謎のままだった気がするのでその辺りの説明は欲しかったです。
あとは、やっぱり主人公が「夢」を叶えつつもヒロインをどこか疎かにするので、BADの数が多くて主人公が痛い目を見ても良かったとも思いました。
自分は、ヒロインを一番に考えたり、世界よりもヒロインを選ぶ主人公が性癖なので、そこの合わなさは仕方ないです。
そういう点で行くなら本作の一番の萌キャラはヒロインでは無く主人公の父親の衛さんさった思います。
一番難しい立場で、もっと冷徹な判断を下しても良い状況でありながら、ギリギリのラインで主人公達が上手く行くように計らったり。
最後の最後で建前を大事にして嘘の行動を起こしたり、所々で奥さんを大事にしている描写があったり。
…オッサン萌え持ちにはたまらない無愛想人情家おじさんでした。
衛さんの方が「私は夢(「天原」と地球の交流)も掴み、妻も大事にする!!」と言ってもしっかりと有言実行しそうなのでそういう点でもカリスマと責任感があって好きです。


次の森崎さん追いは「フェイクアズール・アーコロジー」と世界観を共有した「Re:birth colony -Lost azurite-」を予定。
「世界の真相」は今作で分かっているのと、今作を知らなくても楽しめると公式にあるので、同世界観でどういう話が展開するのか期待しています。
…「シュガスパ2」に続き今作も主人公が合わなかったので、次の主人公は自分に合う主人公だと良いです。



※ゲームの攻略で検索される方がいらっしゃるみたいなので参考にさせて頂いた攻略サイト様を失礼します。
 参考攻略サイト様:愚者の館(アーカイブ) 様
http://sagaoz.net/foolmaker/
 フェイクアズール・アーコロジー ページ
http://sagaoz.net/foolmaker/game/h/fakeazur.html