ひっそりと群生

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【すぴぱら - Alice the magical conductor. STORY #01 - Spring Has Come!】感想

【男性向け全年齢】



なんとなくminoriのノベルゲーム作品を最初からプレイしたくなったので購入part14。



2012年05月18日発売
minori(解散)』※リンク先公式HP(18禁)
すぴぱら - Alice the magical conductor. STORY #01 - Spring Has Come!】(PC) ※リンク先wiki
以下ネタバレ含めての感想です。








システム面は7でもインストール可。
インストール時コード認証有り、ディスクレス起動可。
プレイ時間は11時間くらい。


すぴぱら NICE TO MEET YOU!』(※リンク先感想)をプレイしたので本編を開始。
全年齢のみでの作品はminori初。
そして自分自身も完全全年齢作品プレイ久しぶりになりました。
鳴海桜、天野ほたる、神代アリスの3人のSNSアカウントが実際に存在し、3人のキャラクターが2.5次元として既に作られ「実際に存在している女子校生をモデルにキャラが作られた」という設定で企画が進行した特殊なスタートだったらしいです。
SNSと絡めてキャラを作り、キャラが実在するかのようにSNSで呟かれるのは今時の企画。
全年齢として進めたかったみたいですが、wikiの情報によると赤字だったらしく…
まぁ、あの凄まじいOPを見ると軽く億単位をぶっ叩き出してるのが分かるので仕方無さも感じます。
そして、企画が頓挫したまま他の18禁作が作られminoriは解散し、続編は永久凍結になったみたいです。


未完の作品ではありますが、一応区切りとしては「#01」だけでも切りが良いのでプレイには問題無く。
はるのあしおと」「ef」「eden*」で作り上げられた演出力を全力で駆使し、素晴らしい出来栄えの作品にはなっていました。
今までは主人公の容姿にもデザインが有り、俯瞰した角度から描かれた際に主人公を含めての一枚絵などで進行して行きましたが、「すぴぱら」では完全に主人公の視点のみで描かれ、一応数枚主人公も映る一枚絵がありますが、主人公の顔は徹底的に描かれないという一昔前のギャルゲーのような、主人公の容姿での個性を排除した作りになっており、今までの作品との差別化がされていました。
俯瞰視点での一枚絵が無くなった分、立ち絵での演出が強化され、ヒロインが振り向く際にアニメーションのように一枚絵が何枚も描かれ振り向くシーンは圧巻。
「振り向き」をここまで丁寧に描いたノベルゲームは今まであまり見かけた事が無く、何気ない平凡な会話でも演出の凄まじさで全く飽きる事がありませんでした。


話は「人の幸せな記憶を頂く事を代償に契約者の願いを叶える」という魔女アリスが中心になり、主人公の願いを叶えたりヒロインの願いを叶えたり。
その契約自体が複雑な状況に発展したりする魔法系のドタバタラブコメ系。
ただ、上記の演出力や穏やかな空気が常にある事で、物事自体はドタバタと言えるほど地味に大変な事になりながらも空気感は緩やかに進んで行くのでとても独特な世界観が出来上がっていました。
主人公とヒロインが結ばれる恋愛要素もあるのですが、選択肢が無く。
最初は桜編から始まり、桜編での問題が解決しある所まで進むとアリスとの出会いの場所まで戻りほたる編が始まったので、ループ物、もしくは平行世界物という感じ。
桜編では一切登場しなかった六花という少女がほたる編では主人公の妹として登場したりしたので、ループというよりは平行世界なのかも。
この辺りは未完の作品の為、回収しないのが残念でした。


ヒロインと結ばれ次のヒロインへという、恋愛的に見るとヒロイン乗り継ぎ方式なのですが、この手法に違和感が無いのは平行世界物っぽい所とループだとしても主人公の記憶が無い所。
そして、全年齢という部分は大きかった気がします。
18禁だとどうしても肉体関係が入ってきて…その場合、ヒロイン乗り継ぎ方式だとどうしてもエロが入る事で前半のヒロインが不憫になってしまうんですよね…
全年齢だとそういう描写が無い分、18禁には無いプラトニックさや爽やかさがあり、「ヒロイン攻略後に次のヒロイン」と話が進んでもモヤモヤした気持ちにはならず気持ち良く次に進めたのがとても良かったです。
あと、ほたる編で三角関係になりますが、18禁だとどうしてもエロが入る事でドロドロする事が多いのですが、全年齢らしい爽やかさがあり、サクッと軽やかに問題が解決して行くのが見ていて清々しく。
「全年齢だからこその爽やかさ」を存分に発揮していたと思います。
「ef」ですら序盤は爽やかですが後半どうしても18禁要素でドロっとした部分があったので…あの部分が18禁ならではと思いつつも、前半の爽やかさ好みだった自分としては「すぴぱら」の常にプラトニックな穏やかさがある空気はとても好きでした。


あと、ヒロインがとても良く。
今作では桜とほたるがヒロインなのですが、二人共ビックリするくらいイイ女でした。
自分のやりたい事がハッキリとしていて、自分の道を持っていて真っ直ぐに進んでいて。
今までのminori作品で好きになったキャラは「Wind」の彩だったり、「はるのあしおと」のゆづきだったり、「ef」の千尋だったり。
色々な事情から影寄りのキャラを好きになったのですが(あと驚きのまきいづみさん率)、今作は桜もほたるもどっちも陽の属性のヒロインで初めてminori作で陽タイプのヒロインを好きになった気がします。
ヒロイン以外の女の子達もブレない自分を持っている為、どんな状況になっても鬱々とした事にはならず。
母親も海難事故の際にアリスと契約し主人公を救っていて主人公を生んでからの記憶が無く、主人公も同じ海難事故で過去の記憶が無く。
お互い親子の記憶はないけど、元々の気質が明るいので「まぁなんとかなるっしょ」と一緒に明るく暮らす独特な親子関係も良く。
カラッと明るく物事が進むので人間関係のモヤモヤで発生するストレスは殆ど無く、とてもストレスフリーでした。
人によっては話が結構緩やかなのでその部分だけストレスに感じるかもですが、人間関係でイラッとする事はほぼ無いかと。
「幸せな記憶を貰う事を代償に願いを叶える魔女」が居る世界なので「幸せな記憶」が下地にあり、その部分で悪い事が…と思いますし、実際その要素も絡んで来ますが、魔女のアリスがなんだかんだイイ奴で皆の幸せを願っているようなので不幸のドン底に叩き落されるような展開は全くありませんでした。
ヒロインや他キャラの明るさもですが、魔女のアリスも「契約するのが魔女」という魔女の商倫理で動き、「頂く幸せな記憶は選べない」とどこかドライな部分はありつつも根本的には人間想いなのでプラスに働くように進める所が現代魔女っぽく。
ループか平行世界かは分かりませんが、アリスは主人公の他の世界線(?)での行動も知っているようなので、視点は主人公ですが、物語全体の主人公はアリスだなとも感じました。


…というかですね、サブキャラの東野と西園の東西コンビが好きで好きで好きで(以下エンドレス)。
自分はminoriさんの「wind」の勤と霞によって性癖を植え付けられ…主人公とは完全友人の男女(主に主人公よりも縁があり幼馴染だったりする)の関係が好きという呪いをかけられた訳ですよ。
そんな呪いをかけてくれたminoriさんが再び主人公の友人キャラの男女(幼馴染)を登場させるとか、「好き」以外言えなくなりますよ、好きです。
桜編でのミスコンで東野を見返す為にミスコンに出る西園やミスコン後に名前で呼び合う二人が良過ぎて。
minoriさんはどこまで性癖を抉ってくれば気が済むんですか?
minoriさんの主人公の友人キャラ同士のカプは良いぞ!と再び強く思いました。


音楽は天門さんらしく過去作のように静かで緩やかな曲が多い印象。
桜の花が舞う夜の森とBGMがとても合います。
今作は主題歌のアレンジ曲が多く、主題歌アレンジBGM大好きなので聞いてて楽しかったです。
声は「NICE TO MEET YOU!」でも書きましたが非公開。
ただ、ネット上で数人のキャラは分かりますし、ほぼ今までのminoriのキャスティングなので数人は気付きます。
全員良い感じで、特にほたるがやっぱり好きです。
彼女の言葉はキツイですが、中の人の品の良い話し方でキツさが良い具合に中和されていたと思います。
アリスと西園に若干滑舌の不安を感じましたが…本作内では許容範囲内ではありました。
紅葉役の方が神社の時と学園の時での演じ分けが上手く、調べたらお名前をよく見かける方で納得でした。



プレイ順は
桜編→ほたる編
攻略順固定



『桜編』
魔女の要らないシンデレラ。
どんな事も自分の出来る範囲を分かった上で自分の力で解決していく逞しいはとこのお姉さん。
魔女のアリスですら「付け入る隙が無い」と言ってしまうほど、暗い願いは一切無く努力を怠らず自分の力で人生を勝ち取っていく姿は見ていて神々しく。
主人公が桜に惚れて行きますが、惚れるのが凄く分かるほど魅力的なんですよね、桜姉さん。
桜編での魔法の使い方が桜が魔法を願ったのでは無く、主人公が「桜にミスコンに出て欲しいから」という主人公の願いで魔法に頼る所に、桜編らしさがありました。
桜はシンデレラであり王子様でもあり、全ての役を担えるほどに力強い方なんですよね。
そんな桜に一生懸命王子様になりたくて近寄る主人公の主人公→桜への想いの構図がたまらなく好きで。
姫系主人公×騎士系ヒロイン好きにバシッと刺さりました。
代償となる「幸せな記憶」で桜関係が来て暗くなるのかな…と思っていましたがその辺りはミスコンの結果の記憶が消えるくらいで杞憂に終わり一安心。
序盤の世界観説明回でもありますが、桜が素敵で格好良いヒロインで好感度も高く。
主人公もちゃんと自分の気持ちに気付けるタイプで同じく好感度が高く。
物語もハッピーエンドで主人公、ヒロイン共に嫌な所無く好き!と言えるとても良い序章でした。


『ほたる編』
桜が魔法を必要としないヒロインだった分、ガッツリと魔法を求めるヒロインとしてほたるが出てきました。
母親を主人公と同じ海難事故で無くした事で「未来予知」を求め、「一日二回送られてくるメールで未来を見る」という魔法をアリスと契約した少女。
ちゃんと魔法を求める理由もハッキリとしているのと、その魔法も「不幸になる人を救いたい」という理由で、確かに自己満足の部分もありますが、「誰も不幸にしたくない」が下地にある辺りにほたるの人間性が表れていました。
言葉遣いはキツく、態度も唯我独尊なのですが、なんだかんだ自分の領分は分かっており、人に言葉で心理的ダメージは与えても物理的ダメージを与える事は無く、「人に迷惑をかける事」はしないので、見ていて嫌味な感じが一切しなかった所がバランスが良いなと思ったヒロインでした。
彼女が自分の容姿に自信があるのも良い。
アイドルの桜もですが、本作は女の子が自分の容姿の良さを知っていてそこに自信を持っているのが最高に良く。
自己評価の低いヒロインも好きですが、自分の領分を分かった上で客観的に自分の事を見えていて容姿の良さを知っているヒロインも大好きなので、桜やほたるが自分の事を「可愛い」と言う度に、「存じております」という気持ちになり大変楽しかったです。
ほたる編ではほたるの友人の律という少女と三角関係に発展するのですが、主人公がグダグダ揺らぐ事無く「ほたるが好き」と律に言ったり、ほたるも自分の気持ちを自覚して「第三の選択として私を選ぶ道もある」と言って来たり、全員が下手に暗く悩む事が無かった所が最高でした。
これが18禁で肉体関係が入るとどうしても暗めになりがちなので全年齢らしさを存分に生かした雰囲気作りだなーと関心したり。
最後には「幸せな記憶」の代償で「ほたるの母親の記憶」が消える事を危惧した主人公がちゃんと行動してほたるの未来予知を納得させ終わらせたり、暗くなりそうな題材が多かったですが、どの要素も明るく終わった所が見ていて清々しかったです。



真っ直ぐな王道さを演出力で纏め上げた良作でした。
「海難事故の件」「ほたる編で出てくる妹の立花の存在」「ループなのか並行世界なのか分からない世界構造」「アリスが主人公に関わりヒロイン達を幸せに導く理由」「おそらく紅葉の話だった次の話」などなど、回収されなかった謎は多々ありますが、それでも桜とほたるの話は解決したのでモヤモヤが残る終わり方で無かった所は良かったです。
凄く良い作品だったので未完なのが惜しいのですが、創作物である以上それもやむ無しと受け止めようと思います。
いつか、minoriが再び活動再会する時が来たら…続編応援させて頂きます!!