ひっそりと群生

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【彼女系生命進化論パーフェクト☆ガール】感想

【男性向け全年齢】



2021年05月05日配信
ばかすか』様 ※リンク先公式HP
彼女系生命進化論パーフェクト☆ガール】(PC) ※リンク先BOOTH
以下感想です。








家族の問題も、夢の問題も、心の問題も、彼女達の物語は何も無かった。
けれど確かに彼女達との物語はそこにあった。



『< ヒロインに、ありがとう――― >

 主人公は幼馴染・後輩・先輩と日常を過ごしていた。

 いつもと変わらない日常。
 ……本当に?

 現実のあなたは本当に立派な主人公なの?』
(公式より引用)



プレイ時間は約25分くらい。
分岐無し。


あらすじから察せられるようにメタにメタを重ねてメタを煮詰め調理した作品。
これを一番最初のノベルゲームに選ぶのには適しておらず、そして一番最初のメタ作品に選ぶのも適しては居ないと思われます。
それなりにヒロインを選択するノベルゲームを読み、それなりにメタ系のノベルゲームに触れた方に突き付けられた一つのメタの終着点。
ノベルゲーム、恋愛ゲーム、メタゲーム、その道を辿って来たプレイヤーに捧げられた"終わりと始まり"の物語でした。



『システム、演出』
Light.vn製。
基本性能有り。
画像を俯瞰したりする特殊な構図が多いのですが、そういう構図がグリグリ動く演出がとても良かったです。


『音楽』
ほのぼのからホラーまで。
素材曲の扱い方、切り替え方がとても良く。
特に中盤からのホラーというか恐ろしさ増々のシーンでの音楽はほのぼの曲からホラー曲にスッと切り替わる度に背筋が凍りました。


『絵』
「フリゲや同人ゲームに触れた事がある人は避けて通れない背景」郡の数々。
「例のプール」ならぬ「例の学校」「例の教室」を駆使して「分かる人には分かる」ツッコミがされるシーン作りはとても上手かったです。
同時に「例の学校」ネタが分かる事前提な為、このゲームをフリゲの最初の作品としてプレイするのは向いてないなとは思いました。
キャラクターの立ち絵も、無表情からラストでようやく表情が付く所に「この場面が境界か…」となる区切りの作り込みが上手く。
そして、作品の構造的に「見れない立ち絵」までしっかりと用意されている所も作り込みが凄かったです。


『物語』
彼女達の物語は無い。
けれど、彼女達との物語はある。
そういうお話。
これが楽しく幸せな結末かは分からないけれど、、憑き物が落ちたような、安心したような、そんな気持ちになれました。


『好みのポイント』
ノベルゲーム、恋愛ゲームに触れた数だけ抉って来て。
そして、抉られた分最後に傷を優しく撫でられるような、そんな作品でした。
確認したのですがプレイヤーが見ない&見れないであろう所の作り込みもしっかりとしていて、こだわりを感じました。
短編でのメタでの到達点の一つだと思います。





以下ネタバレ含めての感想です





流石、「虚構英雄ジンガイア」のばかすかさんの作品。
「ジンガイア」は感想を書く前の時期にプレイしましたが、一応プレイ済みです。
「ジンガイア」でも途中の「ゲームと現実が混ざり合う」みたいなシーンがあり、そのシーンでも恐ろしい演出と心抉られる展開で精神力をゴリゴリと削られたのですが、今作はそのシーンを一つの作品として取り出し、解像度を上げたような作品でした。


構図はもう、あらすじから分かるようにメタのメタのメタ。
上記でも書いていますが、いくつかのノベルゲームや恋愛ゲームに触れて、いくつかのメタゲームに触れた人向けです。
…少なくとも今作をフリゲやノベルゲームの最初の作品に選ぶのは悪いとは言いませんがアクロバティック過ぎると思います。
「分かってる」事が前提で話が進むので、ノベルゲームや恋愛ゲームを触れた後に某海底ゲーや某片方ヒロインしか選べないゲーや某文芸部ゲーに触れた人がやった方が良いだろうなーと。
もしくはあの辺りのネタバレを知ってて「あの手」の作品の構造が好きな人向けです。


登場するヒロインは「家族の悩み」「才能の悩み」「心の悩み」を抱えていますが、一切解決もその問題に踏み込む事は無いです。
「らしい」というか、「容赦が無い」というか、「プログラム」という物を認識させられました。
彼女達には上辺だけで与えられた「設定」はありますが、「物語」はありません。
ただ、自分の「設定」を辛そうに語っているだけ。
それでも彼女達の誰かを「選択」して行く。
その先に待つ真相。


真相を知るとかなりSFというのが伝わりました。
まぁ、「画面の向こうに居る貴方」ゲーの一つになるので、そういう要素が入ればSFになるのは当然の流れではあるのかな?
「俯瞰視点」「神の視点」「プレイヤー視点」、そういう所から「選び」、「世界を救う」。
プレイヤーに与えられた快感のような「お約束」要素。
そしてそんなプレイヤーをどこか小馬鹿にするようなヒロインからの言葉。
ノベルゲームを一応は何作もプレイしている身からすると「ぐわーっ!!!」と悶たくなるほど的確な羞恥を突き付けられ、心の中で悶えてしまいました。
「そうだね、その通りだね、知ってる。でも、言語化して欲しくない!!」みたいなそんな気持ち。
人の嫌な部分を的確に突けるのがばかすかさんらしいというか、なんというか。
でも、そんな羞恥によって苦しめるような言葉を吐かれますがどこか放って置けないヒロイン。
それは彼女が「ヒロイン」だからなのか、それとも「プログラム」からの同情からか。
少なくともそういう気持ちを抱かせた時点でプレイヤーが無視出来ない「ヒロイン」という立ち位置は確立していたので上手いなぁと思ったり。
彼女達には「家族の悩み」「才能の悩み」「心の悩み」があるように見えて、本当は何も無く、背景も無く、「彼女達の物語」は何も無かった。
けれど、「人類の再生をする為」「主人公に選ばれる為に振る舞う」、数々のデリートの中で主人公と「彼女達との物語」は確かにあった。
「上手いなぁ」と思ったのは、普通「ヒロインを救いたい」という気持ちはバックボーンがあるからこそそういう気持ちになるのに対し、本作のヒロインはバックボーン無しに「プログラム」という同情の一点で「救いたい」や「幸せな結末が見たい」と思わせてる所。
プレイヤーの感情の掴み方が異様に上手く、「手のひらの上で転がされてるなぁ」と思ってしまいました。


そして辿り着く結末。
作中登場する白ハゲ(白影?)はまさにプレイヤーだと思うのですが、ラストのシーンで二人が浜辺で新しい歴史を紡ごうとした時、ふと穏やかな気持ちで頬が緩んだのですが、そういう気持ちになった後に白ハゲも同じような表情になったので、「やられた!!!」と唸ってしまいました。
どこまでも感情を掌握されてる不快感と同時に、ここまで感情を掌握出来るのかという驚き。
白ハゲと同じような気持ちになった時点で「参りました」でした。
「プレイヤー」という存在の心理を巧みに操り掌握し、把握し、同調される、類まれなるゲームでした。
よくまぁこんな短い中でこれだけ「プレイヤー」心の動きを掴めるものだと圧倒されました。
「ヒロインを幸せにする」では無く「ヒロインに幸せにしてもらっている」。
「全ての作品のヒロインに、「有難う」を」。
「ジンガイア」も凄かったのですが、本作も凄い、というか「やられたなぁ」と思える、そんな作品でした。


(あと、姑息な手段ですが、他ヒロインも別データで見ましたが、一個一個ちゃんと作られていました…作り的にプレイヤーは一つのルートしか辿れないのに、しっかりと全演出が作り込まれていて…凄かったです。普通は創作者は「見せたい」と思って作る人が殆どだと思っているので、「見せない」「見せる気がない」部分も作り込まれているゲームを見るとこだわりを越えた何かを感じてしまいビビります。)
(…こういう姑息な手段「Taihaism」でも使ってしまったなぁという事を思い出しました。創作者の方にはある意味で失礼というか「本来の作り」に歯向かうような行動を起こしたと思っているので、その点はここでお詫び申し上げます。)


ただ、一点。
ノベルゲーム好きですがそんなに引き篭もって無いから!それなりに、多少かもだけど社会やってるから!!とは思いました。
まぁ、あの描写は「プレイヤー」の心象を風景化した物だとは分かりつつ一応。
一応現実世界でコミュニティはそこそこに築いていると思いたいので「オマエ、ボッチ」みたいに決定づけられた所だけは「違うから!!!」と反論したくなりました。
若干その部分に説教臭く感じてしまう所が難点だと思いつつ、そこもまたオタク的感覚で自覚症状があるからこそ響くとも思いつつ。
大丈夫、まだ社会やれてる、大丈夫。
…そういう部分でも不安にさせられました、心臓に悪い作品でもありました。