ひっそりと群生

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【Medicarium*Valentine】感想

【男女ダブル主人公15禁】



2022年02月23日配信
Neruna.』様 ※リンク先公式HP
Medicarium*Valentine】(PC&ブラウザ)(15禁) ※リンク先ノベルゲームコレクション
以下感想です。








苦いも甘いも、毒にも薬にも。



『魔法学院×先輩後輩×薬物×バレンタイン
 『バレンタイン直前の学院にて調薬研究同好会(部員二人)である我々は
 在庫処分も兼ねて惚れ薬だのモテ薬だのを売りつけて一儲けしちゃおうぜ計画を遂行中なのです!』
 先輩を信仰する元気な後輩と面倒くさい先輩が生徒に薬物を売りつつラブコメするADVです。』
(公式より引用)



プレイ時間は約1時間45分くらい。
分岐有り、ED2つ。


魔法学院調薬研究同好会の先輩信仰三編み眼鏡後輩女子ココットは、同じく同好会の長身長髪眼鏡先輩男子ディズと共にバレンタインまでに4日間、やって来た生徒に薬を売りつけようとしていた。
一日に2人、計8人やって来る学院の男女。
話をして行くとそれぞれには繋がる関係性が見えて来て…
果たして、ココットとディズはやって来る学院生に正しく薬、それともチョコを売りつける事が出来るのか!
そしてココットとディズの二人の関係は進む事が出来るのか!!
ドキドキワクワクお薬仲人ゲー!!



『システム、演出』
ティラノ製。
基本性能有り。
立ち絵会話でのキャラクターの演出が非常に良く、惹き付けられました。
驚いた時のビックリエフェクトや混乱した時のひよこが周るエフェクトなどとにかくアニメ、漫画的演出が豊富。
現在話している人物のみが鮮明になり、話していない人物に若干影が付いたり読んでいてとても快適で。
作中は魔法のある世界なのですが、専門用語にはちゃんと用語説明もあるという痒い所に手が届く仕組み。
作中独自の用語や有名一族などの解説もある為、短編ではありますが広い世界観を見る事が出来ました。
更に驚くほどスキップも早いのでプレイでモタつく事が無かったです。
このツールでここまで早いスキップをあまりお目にかかれないので、見た目の華やかさもですがUIのカスタマイズがとてもお上手で惚れ惚れしました。


『音楽』
ポップでキュートでファンシーな選曲で、魔女と言うよりも魔法少女な感じの音楽で明るさと可愛さがありました。
曲数はそんなに無いのですが曲がとても合っていて、二人がとても仲良しで、仲良く楽しくお薬を売っている姿が「子供がお菓子屋さんを経営する」ようなそういうごっこ遊びの可愛らしさを引き立てていました。
タイトル画面の曲が「これから始まる可愛いお店」を感じさせて好きです。


『絵』
本当にお上手、とにかく絵に力があるタイプで一瞬で目を惹きます。
色合いなどは少女漫画っぽさがあるのですが、絵柄が全部少女漫画に振り切ってるという訳でも無く。
少女漫画と少年漫画の中間と言うか…少女漫画と男性向けタイプの可愛らしい絵柄の中間というか…
絵に詳しく無いので上手く説明が出来ないの可愛さの中にしっかりと拘りと萌えと芯が詰まってるタイプ、とにかく良い、最高。
ディズの長身男子の長髪ツインテといい、「女の子に見える男子、女性に見える男子」など、絵柄に作者様の癖を感じます、良き。
立ち絵のポーズは一つなのですが表情が豊富ですし、上記で語った演出が光りまくるので飽きが全く無く、始終掛け合いが楽しかったです。
ココットとディズには分岐したEDそれぞれでCGがあるのと、各男女カプには選択した商品により正解の方にはCGがあり、「選択した薬の影響が出てるなー」と楽しくなりました。


『物語』
一人称視点が無く基本会話のみで進むのでダブル主人公物。
一応選択を委ねられている側がココット寄りなので、若干女性向けっぽさがある気もしますが、基本は二人には平等に物語が割り振られているので「どちらも主人公」が正解かと。
地の文はほぼ無く会話のみですが、二人の距離感や感情がプレイヤーにはダイレクトに伝わって来るのが素晴らしい。
ココットの先輩を敬う気持ちを全面に出しながらも仄かな恋心が垣間見えたり、ディズのちょっと面倒そうにしながらもココットに対し「敬うだけかよ…」みたいな複雑な少年心と恋心が垣間見えたり。
他の客も会話だけで内心がなんとなく把握出来たり、地の文が無いのに会話と動きだけでプレイヤーにそれが伝わってくるのがとても凄く。
登場人物達の感情を感じるととてもニヤニヤ出来、最高の最高でした。


『好みのポイント』
やって来る男女も最初は単なる一人のお客なのですが、話を聞いてくると他の客との横の関係が見えてきて、そしてお互いがどう思ってるのかも見えて来て…
「登場人物の相関図をプレイヤーが把握して行くタイプ」が好きなのでとても好みでした。
その関係性がとにかく微笑ましくて微笑ましくて。
方向性としては男女カプの仲人ゲーになるのかな?
仲人ゲー大好きなので「関係性把握」と「仲人」でダブルで好きなのに加え、ココットとディズには更に選択肢で高感度変化があり、クリア後に2パターン関係性が変わり。
どちらのEDにも良さがあり、ひたすらに男女カプの良い無自覚イチャラブを浴びる事が出来ました。
クリア後のおまけで前日譚があり、何故ココットとディズがここまでお互いに執着をしているのがも丁寧に丁寧に書かれるので全く隙が無く。
仄暗い過去持ちの浮世離れした眼鏡もっさり系男女カプ好きには絶対に刺さる事間違い無しでした!!
最高の男女カプゲーでございました!有難うございます!!





以下ネタバレ含めての感想です





薬に精通しすぎており毒薬であまりにも有名で三大悪名一族であるブラックウィドウ家に生まれながらも「殺しは嫌だ」「毒薬なんか作りたくない」と思っている少年、ディズと、平凡な薬屋の生まれでありながらも生まれた時から味を感じる事が出来ず親から普通を押し付けられてもそれに応える事が出来なかった少女、ココット。
そんな「異端な家に生まれた平凡な少年」と「平凡な家に生まれた異端な少女」が出会い、惹かれ合う物語…
もう、こんなの、好きに決まってます!!
「欠けた物がある同士が出会い、欠けた部分を補って行く」というカプが好きな自分にべらぼうに刺さりました!!
この関係が描かれるのはクリア後に開示される「前日譚」で明らかになるのですが、ちゃんと二人の関係をしっかりと掘り下げる所に作者様の「関係性を疎かにしない熱い気持ち」を感じます。
ココットがブラックウィドウ家の毒薬を舐めた事で初めて「味」を知る事が出来、毒を受けた事と薬屋の関係で幼少期にディズと出会い、別れ。
そこから弟が生まれ親から要らない存在として魔法学院に送られるけれどそこでディズと再会し。
ディズはブラックウィドウ家に生まれながらも普通の少年で家の命への軽さや異質さに耐えきれず魔法学院に行くも家柄の陰口を叩かれ孤独で居た中でココットと再会し。
ディズはココットの事を覚えていないながらもココットの自分を追ってくる熱量に負け二人で交流を重ね、ディズが卒業するまでの一年、調薬研究同好会を作る事にして二人だけの同好会が出来上がる…
本編中は「先輩を尊敬しまくって好意を寄せている後輩」と「ダウナー系でありながらも後輩の事をちゃんと意識している先輩」の男女カプとして単純に記号化されたカプとしても楽しめたのですが、ちゃんとクリア後深堀りされて、ココットとディズのカプが好き過ぎて悶え苦しみました。


本編の演出などもですが、とにかく作りが丁寧。
二人の過去といい、作中の専門用語を読むと所々暗い設定があるのですが、絵柄や背景、音楽でピンク!魔法少女系!可愛い!!を前面に出す事でそういう仄暗さをかき消したり払拭してたり上手い具合にカバーしていて暗くなり過ぎなかった所に作りの上手さを感じたり。
これがハ◯ー◯ッター的な雰囲気で作られてたら「ポップでキュートな恋愛物!」にはなれなかったと思うので、少女漫画的可愛さを残していたのが短編作として軽く触れられる雰囲気になっていました。


ココットとディズの二人もそれはもう最高なのですが、他の登場する4人の男子生徒と4人の女子生徒が見ていて微笑ましく。
話を聞いて行くと関係性が見えてきて4組の男女カプが出来上がるのですが、薬によってクリア後のEDロールで薬に見合ったEDを迎えているのが面白かったです。
何も起きずそのままの関係性のままだったり、恋愛に関係が進展したり、果ては予想外の方向に関係が進展していたり。
一枚絵は選択に応じた絵が各カプ2枚づつあるのですが、ニッコリニヤニヤ出来たり、ゾクゾクドキドキしたりする絵で、その後の関係がプラス面でもマイナス面でも想像出来る所が楽しかったです。
ココットとディズの関係は主人公でもある為深堀りされるのですが、各キャラクターの関係性も気になる作りなのはGOOD。
スノウとマーチのその後が気になったり、パフィとカノカはどういう二人なのか気になったり、バウンスとメアリは正気を保ってる…?となったり、ローズベル家はどういう家なのか気になったり。
サブキャラの関係性も無視できないほどに気になる作品は名作。
三大悪名一族は毒薬のブラックウィドウと死霊使いのロッテンクロウは出てますがもう一つの家柄も気になったり…
用語説明で出てくる用語を読むだけで世界観が楽しく、「もっとここを見てみたい!!」となる部分が沢山あり、魔法世界の異世界ゲーとしてとても良質な世界観作りでした。


ココットとディズは2つのEDに分かれ、ココットが恋に自覚的になれば卒業後一緒に薬屋経営ED、無自覚だとデートEDで、BADなEDは無くどっちもニヤニヤ出来る関係性なのがもう…可愛い、最高。
薬屋経営EDは会話に長年寄り添った老夫婦のような安定感があり、デートEDはお互いに初心者マークを付けたカップルっぷりが光り。
心理的安定感がある関係も、モダモダ先に中々進まない関係も、どっちのカプも好きなのでどちらも堪能出来て幸せでした。


「薬を売り男女カプを成立させる仲人ゲー」とてもシンプルなゲームなのですが、グラフィックからキャラクターの深堀りなど物語をキッチリと丁寧に丁寧に積み上げていて繊細さが至る所に見える作品でした。
ココットとディズのその後(特に薬屋経営ED後)も気になるのですが、「三大悪名一族」の残り一つや他サブキャラの事も気になるので、「開示されない気になる事で物語の根底が分からず不快になるタイプでは無いけど、それが描かれたら読み手がもっと幸せになる」という絶妙な作りの「気になる」が沢山用意されおり、そういう意味で「同じ世界設定の他の一部分を読みたい!」となる作品でした!
「毒」から始まったココットとディズだけれど、「毒」は「薬」にもなって、最後には「甘いチョコレート」になる!
そんなラブラブニヤニヤ男女カプでとても良いバレンタイン物語でした!!