ひっそりと群生

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【ONE ~輝く季節へ~】感想

【男性向け18禁】



1998年05月29日発売
Tactics』※リンク先公式HP(18禁)
ONE ~輝く季節へ~】(PC)(18禁) ※リンク先wiki
以下ネタバレ含めての感想です。








10作に一個は名作と呼ばれている作品を挟んでプレイしないと心が死ぬと学びました。
というわけで、この感想がいつ投稿されるかは分かりませんが、2021年の150作目は「ONE ~輝く季節へ~」に。


プレイ時間は約11時間15分くらい。
7でもインストール可。
ディスレス起動不可。
7ではBGMがループしませんが、『_inmm.dll』を導入すればBGMループ可能。
修正ファイルが『NEXTON』のサポートに有り。


フルボイス版では無く、初代の「for Windows95」版をプレイ。
履歴無し!既読スキップ無し!!そのままで起動していたら直ぐ落ちる!!!
という開始早々昔のゲームの洗礼を受けました。
履歴とスキップに関しては仕方ないですが、落ちるのは互換モードで95を選択したら落ちなくはなりました。
7以降でプレイの際は互換モードでプレイした方が良いと思います。


Keyスタッフが終結したのが「MOON.」なら、Keyの作風を作り上げたのは「ONE ~輝く季節へ~」と言われている通り、確かに空気感というか雰囲気というか、そういう言語化の難しいKeyっぽさというのは漂っていたと思います。
シナリオは長森瑞佳、七瀬留美椎名繭の担当が麻枝さん。
川名みさき、里村茜、上月澪の担当が久弥さんらしいです。
麻枝さん…というかKey関係の作品はPS2版とアニメ版の「AIR」、PS2版の「CLANNAD」に触れアニメは第1期まで視聴。
Kanon」はPS2版を途中までプレイしていた記憶があります。
久弥さんの作品は上記の「Kanon」とアニメの「sola」を視聴済み。
無意識では分からなかったかもですが、意識して読むと二人のルートで大きく違いを感じる事が出来ました。


麻枝さんはおそらく所々に入る「永遠の世界」関係辺りの文章と序盤の自担ヒロインが登場する共通関係を担当。
麻枝さんの方はとにかく主人公が凄い、悪い意味で凄い。
Key作品のお約束である傍若無人系主人公がモロに出ていました。
KanonAIRCLANNADと進むにつれてアクの強さは減り、リトバスの一部プレイ動画を見た限り完全に払拭されたとは思いますが、当時から話題になっていた「主人公の性格というか行動面のヤバさ」は健在。
ひょっとしたら一番ヤバいかもです。
ヒロインに対しての振る舞いの上から目線さや厚かましさが相当キツイ。
毎朝起こしてくれる幼馴染に対して横暴だったり、転校生の女の子に初対面から失礼かましますし。
果てはその女の子の席が前になると後ろの席から女の子の枝毛を了承も無くハサミで切ったり…サイコか?
いや、流石に98年の作品。
昔の作品を現代の価値観で裁くのは良くないと思っているので、これが当時の感覚だったのかも…と思いますが…
でも、98年の頃の自分が後ろから他人にいきなり髪を切られてギャグで済まされるか?と思ったらそうは思えず。
後にその切った相手と恋愛出来るか?と思ったら絶対に出来ないので、恋愛物として見ると主人公からの行動に対して許容するヒロインに無理があるよなぁとは思いました。
ただ、こういう今で見るとキツイタイプのギャグが面白かった時代というのも確かに存在します。
当時神のように扱われていたド◯フのギャグが今見ると色々アウト満載で現代人は楽しめないみたいな、そういうの。
なのでこの辺りは「恋愛になれるか?」は別としてギャグとして時代換算して見ると一応は許容範囲内。
瑞佳ルートのクリスマスでの行動だけは恋愛物としてマジで許容出来ないですがそれはまた別問題。
良くも悪くも麻枝さんの担当のルートからは凄く「永遠の世界」を書きたい!!というパワーは溢れていました。
「永遠の世界」、結局何だったのか…wikiを見てもどんな物かが箇条書きでしか書いて無く、
・死後の世界と同類または類似した世界である。
・誰もが「永遠の世界」に行くことができる(戻ることは難しい)。
・「永遠の世界」は現実世界でのよりどころを無くしたときに行くことができる。
・「永遠の世界」では案内役となる女の子を1人連れていく必要があるかもしれない。
・「永遠の世界」は主人公だけのものではなく共通領域(パブリックスペース)である。
・「永遠の世界」はその案内役と盟約を結ぶことにより猶予期間が与えられる。
・猶予期間内に現世で拠りどころ(絆)ができれば、「永遠の世界」からおよそ1年で帰還できる。
・「永遠の世界」行きは阻止することができない。
・「永遠の世界」行きとなる人間のことは、およそ1週間前から忘れられ始める。そして、帰還した途端に思い出す。忘れるまでの日数は、どれだけその人を思っていたかによって異なるらしい。
・「永遠の世界」の案内役はその写し身となるものが現実にいるが、盟約付近の記憶はあいまいになる。
という物であるという事しか分かりません。
90年代後半らしいというか、エ◯ァといい、F◯7といい、製作者が自分の「精神世界」をなんとか形にしたいと藻掻いていた躍起になっていた時代だと思います。
00年代から始まる「セカイ系」の前段階な感じ。
カルト的人気を誇るl◯inも90年代なので、そういう作者の深層心理を具現化するような系譜。
なので、麻枝さんは一応エロゲという媒体なので恋愛をさせているけれど、基本「永遠の世界」だけを書きたくて恋愛はさほど興味が無いんだろうなと。
CLANNADの「幻想世界」の原風景を「永遠の世界」の描写からは感じましたが、CLANNADよりは洗練されておらず抽象的な描写が多いので「永遠の世界」に流れにノリ切れず。
それを考えるとCLANNADは上手く「幻想世界」と恋愛描写が噛み合っていたので、表現の成長を感じます。
ただ、「若さ故の勢い」みたいなのはどうしても「永遠の世界」の方が強いかも、そういうのに魅力を感じる人はONEが好きなんだろうなーと思いました。


久弥さんは麻枝さんルートよりも主人公とヒロインの恋愛の流れがスムーズだった印象。
個人的に話やヒロインを見るなら久弥さん担当の方が好きです。
「永遠の世界」描写は麻枝さんとは違うのと、「永遠の世界」自体に重きを置かず、「永遠の世界」があり、主人公が消える上で「消えるのを分かった上でヒロイン達と交流を持っていく」という流れが上手く。
「永遠の世界」を自己の「精神世界」の表現では無くあくまでも舞台装置として使い、主人公とヒロインの交流を重点的に描いていたなと思います。
そういう面もあり、主人公の言動やヒロインへの接し方がキツく無いのは久弥さん担当の方。
久弥さん担当の方が所々でヒロインに気を使ったり、キツくしても後にちゃんと反省したりするので、恋愛物としての良さが凄く有りました。
勢いは無いですが、クセが少なく当たりが良く、ヒロインを大事にする主人公が良かったです。


絵は樋上さん、分かりやすく「いたる絵」。
バランスとかを見ると当時色々言われていたのも確かに分かります、個性的ではありますが。
でも現在の樋上さんの絵を見ているとコチラもまた時代に合った成長を感じます。
樋上さんらしさはそのままに、現代の画風を取り入れているので、「絵は描けば成長する」を痛感します。
継続は力。
エロはあってないような物。
一回だし、数クリックで終わるし…これもまた時代を感じました。


音楽は折戸さんにOdiakeSさんにYET11(吉沢務)さんにM.Sさんに…見るとKeyもですが、Key系の同人を作ってるサークルだったり他のゲームメーカーとの繋がりがある方々。
折戸さんにOdiakeSさんは今でも現役でお見かけするので凄いです。
BGMは当時にしては高クオリティだと思います、KeyとLeafに加えてONEも同人音楽が多かった記憶があるのですが、納得の出来でした。
「虹をみた小径」「潮騒の午後」「雨」「輝く季節へ」が好きです。



プレイ順は
瑞佳→シュン→留美→繭→みさき→茜→澪
の順で攻略



『長森瑞佳 ルート』
メインではありますが、一番ドン引いたルート。
罰ゲームで告白という現代では極刑にあたるような行動を瑞佳にして、瑞佳が素直に受け取り告白を受け入れ恋人に…には全くならず。
受け入れた瑞佳に嘘とはいえ自分から告白したくせに苛立ちを感じ、24日のクリスマス、教室に瑞佳を連れ出し、瑞佳を好きな男子達の前に差し出しレイプ未遂をさせようとしたのには驚きました。
凌辱ゲーかな?「MOON.」が凌辱ゲーだったらしいのでそういうノリになるのかもですが、確実に今そういう流れを組んだら主人公も何もかも叩かれますね…時代だ…
そんな事をした主人公を受け入れる瑞佳も瑞佳で理解出来ないですし、主人公がそこで瑞佳への気持ちに気付き、二人共恋人へ…という流れでその後恋人っぽくなりますが、やった事があまりにもあまり過ぎて全く恋愛で感情移入出来ませんでした。
ただ、過去、瑞佳が主人公に「永遠の世界」の盟約を交わしている描写があるので、瑞佳にとって主人公は特別過ぎる存在で、だから主人公が何をしても受け入れたのだとは思ってはいます。
いますが…瑞佳からの視点が主人公が消えてからのエピローグしか無いのと、そこで特に主人公への執着が語られるわけでもないので、瑞佳の感情が上手く理解出来ず。
「ヒロインが凄く主人公に執着して許容するけれど、理由が分からない」という関係になっていたので、関係性萌え持ちに全く刺さりませんでした。
「永遠の世界」の盟約があるので重要な位置に居るヒロインだとは思いますが、「永遠の世界」も抽象的なので「センターヒロインで重要そうで幼馴染だけど、考えてる事がよく分からない子」で終わってしまいました。


『氷上シュン ルート』
留美ルートから途中分岐できる、吹奏楽部の幽霊部員。
男性キャラですが、彼と関わり聞ける話は「永遠の世界」を語る上で必要不可欠でした。
というかwikiに載ってる「永遠の世界」の情報はほぼ彼のルートで語られます。
これだけ重要な要素を何故ヒロインではなく男性キャラのルートに組み込んだのか…
この重要な部分を分割し、各ヒロインに組み込むでも良かったのでは?と思いました。
ただ、男子同士の会話やエロゲギャルゲの男性キャラルートは好きなので、そこは好きでした。


『七瀬留美 ルート』
後ろから了承無しに髪を切った男と恋愛関係になるルート。
どう見てもお互いサイコパスとしか…
途中、七瀬に対して画鋲を椅子に置いたりする女子からのイジメが発生しますが、ぶっちゃけ主人公のやらかしの方が何倍もイジメなので、「転校生で特に初期好感度が高くは無かったはずなのに何故主人公は許容した???」となる一方でした。
女子のイジメに対して主人公が切れて七瀬がキュンとしますが、「そうはならんやろ…」となるばかり。
その後恋人関係になりますが、主人公の全ての行動がデリカシー無さ過ぎて見てて疲弊しました。
クリスマスに踊りたかったという七瀬にドレスを買ってあげて、ドレスを着て公園で待ち続ける七瀬を描き、良い感じの雰囲気にはしていましたが、今までがあまりにも酷すぎたので「イイハナシダナー」と棒読みで思うしか出来なかったルートでした。


椎名繭 ルート』
「みゅ~」。
と言ってる事しかほぼ覚えていません。
というか今作、ロリ小動物枠が繭と澪の2名なのですが、澪が「話せない」「健気」「主人公と過去に会った事がある」という属性持ちなので、正直勝てる気がしません。
ロリ小動物属性2名は双子とかで出さない限り片方に人気が偏って厳しい気がしました。
澪が強過ぎて人によっては彼女の存在を忘れてプレイしてる人も多そう。
しかも彼女の性格は「子供っぽく」「都合が悪くなると泣く」なので苛立つ人は本当に苛立つタイプ。
wikiでは癇癪持ちと書かれ、作中でも「学校が違う」と書かれており遠回しに言ってありますが、直接的に言うならば知能に障害を持っている子。
ただ、麻枝さんルートの主人公の行動があまりにもアレ過ぎる為、逆に麻枝さんルートの主人公にはお似合いだとは思う所もありました。
主人公は「永遠の世界」に行く程に現実に対し諦めや虚無を感じているので、そういう危うい精神に繭のある意味で危うい精神というのは波長が合ったんだろうなと。
直接的では無いですが、そういう「危うい橋の上に精神が乗っている二人」という点では親しかったと思います。
まぁ、それでもキャラ的には好みでは無いのでそこは仕方ないです。


『川名みさき ルート』
この辺りから久弥さん担当ルートのターン。
みさき先輩はビジュアルや性格が一番好きです。
あと「目が見えない」設定はサブカル方面ではやっぱり強さがあります。
目が見えないから学校の外が怖い先輩を徐々に外に連れ出して行きたいとなるのが凄く恋愛味を感じたり。
卒業後に頑張って外に一緒に出たけれど、主人公は消えてしまうというのにロマンを感じたりしました。
作中しっかりと書かれませんが先輩の視力を失った原因は今在籍している高校に子供の頃忍び込んだ際に、事故ったからなのがなんとなく示唆されます。
ただ、この点は「事故があった高校側の方が彼女を受け入れるか?」という疑問は湧く所が…
フィクションなのでそこはそれだとは思いつつ、学校側からしたら「盲学校に行ってくれ」とは思うだろうなと。
そういう点以外は「先輩を連れ出したい」と頑張る主人公とヒロインの関係は好きでした。


『里村茜 ルート』
現代で言うならツンデレというかクーデレのカテゴライズ。
主人公に対して完全にマイナスの好感度からスタートするヒロイン。
徐々に心を開いて行く姿が可愛らしく、「永遠の世界」に消えた幼馴染を待ち続けている上での性格形成と健気さ、そしてそれに対し嫉妬し自分の茜への想いに気付く主人公などなど、恋愛で美味しいポイントを多く持っているので、人気が高いのでは?と思っています。
茜の感情も分かりやすく、主人公の感情の変化も分かりやすいので全ルートの中で自分も一番好きなルートでした。
でも、どのルートもですが、主人公が「永遠の世界」に行く事は確定なので、再び「大事な人」を「永遠の世界」に連れて行かれる茜はとても不憫に思えたり。
最終的に主人公は帰還しますが、幼馴染と主人公の違いは何だったのでしょう?
茜が忘れず、茜からの想いに変わりは無いかもですが、幼馴染は本当に現実に絶望や幻滅をしていて、帰還する意志が無かったのかもしれません。
主人公は茜が居る為「必ず戻る」という意志を持っていたので帰還出来たのかも。
そういう部分で「永遠の世界」からの帰還条件を提示しているルートだとも思いました。


『上月澪 ルート』
耳は聞こえるけれど話せないヒロイン。
みさき先輩との意思疎通が取れてないけれど、微妙に意思疎通が取れてるみたいな展開、二人の会話を沢山見たかったです。
ロリ小動物系ヒロイン二人目ですが、個人的に繭よりも好きです。
自分のハンデを知っていて、それでも一生懸命動いて、健気に頑張って。
癇癪で泣くヒロインよりはリアル好感度は高いわな、と。
最初は妹のように見ていたけれど、頑張る姿を見て徐々に意識し出すという流れも王道ですが大変良かったです。
ただ、「一度子供の頃に合っていて、その時に渡したスケッチブックを澪が大事に持っている」という設定はルート分岐後に唐突に出た気がするのでもう少し流れを組んで欲しいとも思いました。
まぁ、序盤のルート担当は麻枝さんだと思うので難しいとは思いますが、どうしても急に出た設定の為、驚きました。



「幼馴染が朝起こしに来る」「転校生と登校時にぶつかる」「記号化されたヒロイン」などなど、学園モノエロゲの基礎を作った作品の一つであり、「主人公が世界から消える」という「泣き」にあたる要素を組み込みながら、ヒロインの消滅(変化)ではなく主人公側の変化という独自性を持った作品だったと思います。
恋愛物としては不満を覚える箇所がありながらも、製作者の「俺の精神世界の具現化を見ろーーー!!!」という熱い意思は伝わって来たので、強い熱量を感じた作品ではありました。
抽象的で荒削りではありながらも、現在も続くKeyの独自の系譜の原風景は見る事が出来ました。
当時からするとノベルゲームとしては世界構築の独自さからクオリティの高さが伺え、Leafと並んでいたのも納得です。
これから鍵葉の時代が来たのだなーと思うと歴史を感じました。
エロゲの古典に触れられて良かったです、今後もまた同じスタッフのKey作品に触れてみたいと思います。



※ゲームの攻略で検索される方がいらっしゃるみたいなので参考にさせて頂いた攻略サイト様を失礼します。
参考攻略サイト様:Enjoy Game Life 様
https://tryspace.net/
 ONE ~輝く季節へ~ ページ
https://tryspace.net/game/one/