ひっそりと群生

ひっそりと持ってるCDの情報やゲームの感想上げたり。購入物の記録など。気ままに。飽きっぽいので途中で止まったらご愛嬌。

【さよなら、うつつ。 ~金で買える程度のハッピーデッドエンド追加版~】感想

【男性主人公18禁】



2016年01月31日発売
羊おじさん倶楽部』様 ※リンク先公式HP(18禁)
さよなら、うつつ。 ~金で買える程度のハッピーデッドエンド追加版~】(PC)(18禁) ※リンク先DLsite.com(18禁)
以下感想です。








救いを捨てて愛を求めた先には何が待っているのか…ワンコイン、500円で買える新たな結末は…
それでも、羊おじさんはあなたの側に居ます。



『世界に失望する薬物ヒーローADV『さよなら、うつつ。』の無料配布から始まる、鬱系狂気ゲームサークル『羊おじさん倶楽部』が新たに提出する第三作目。
 現実に絶望する幸福全否定型ADV『さよなら、うつつ。 ~金で買える程度のハッピーデッドエンド追加版~』を、発売いたします。
 『さよなら、うつつ。』を本編として不適切な言い方をすればこちらはファンディスクにあたります。
 追加ルートですが、蛇足ではございません。
 本編のみで完結しておりますが、今作にて完成いたします。
 タイトルの意味も含めて。やればわかります。』
(公式より引用)



選択肢無し。
プレイ時間は追加要素は約3時間くらい。
基本操作などは『さよなら、うつつ。』(※リンク先感想)とほぼ同じなので省略。
本作は「さよなら、うつつ。」のFDでありルート追加verとなっています。
追加部分はフリー版の「さよなら、うつつ。」の物語を一度クリアすると解放。
プレイ開始時点で一度「さよなら、うつつ。」クリア済みかの確認があるのでとても有り難かったです。
「さよなら、うつつ。」をクリアすると「さよなら、ゆめ。」という表題を選ぶ事が出来、新たな物語が始まります。
新たな物語ですが、水夜と会うまでは同じ展開なのでスキップ可。
話は…水夜との出会いで救いを求めなかったらのif。
もしも沙希と共に歩めていたら。
薬を手にする事はなく、夢を、幻覚を見る事はなく、真っ当に生きていた場合の物語。
…と見せかけて、いつも心に羊おじさん。
世の中そんなに上手く事が進むわきゃありません。
サブタイトルの「ハッピーデッドエンド」とあるように幸せ…でも、デッドエンド。
その幸せも誰から見て幸せなのか…そう考えると凄まじく心が踊るハッピーでした。
「金で買える程度の」という所にセンスを感じます。
500円で買える幸せ…なるほど、こういう事なのですね…
それでも、この作品の新たな世界が開かれた展開だったと思います。
「さよなら、うつつ。」が好きだった方で大団円を求めていない方は是非触れて頂きたいです。
ちなみに、追加ルートでのエロシーンは有りません(笑)
沙希は健全(笑)ヒロインなのですね、分かります。





以下ネタバレ含めての感想です





さて…正直に語るとネタバレになるのでこちらの項目で書きますが…
後半かなりメッタメタになりました。
主人公、ヒロイン、作者…まぁ元々が「役割」などで語られていたお話なので個人的には違和感はさほどだったのですが、この展開は間違いなく人を選ぶと思います。
フリー版の「さよなら、うつつ。」は好きだけど、有償版は好きじゃないという人が現れてもおかしくはないレベル。
ただ同時に、この展開になる事で逆に好き!!!となる人も居るので…難しいですね。
個人的にはそのメッタメタな部分まで含めてどこまでも狂気の世界でラリってて好きでした。
結局薬物無くてもメタ世界に触れられる夏月君は真性で狂える人なんだなぁと…それもまた才能。
だからこそ、水夜も夏月を求めたというか。


「本質的に語りえない幸福の追求」
というコンセプト、凄く好きです。
水夜は夏月が狂わないと、世界を捨てないと救えない存在だったのまた痛々しくて。
今回はフリー版では主人公に成れなかった谷口が主人公核として大活躍したり。
それでも、結局主観視点は夏月だけの物で、他のキャラは俯瞰視点で語られる所に、「他の人間は主人公には成れない」というのがまざまざと見えてエグかったです。
ちなみに、自分の事を「勝俣」という萌えキャラの勝俣さんは登場しません、残念。
メタ世界になっていく辺りでの「幸福の在り方」や「救いの在り方」の議論は凄く好きなのですが、難しさはMAXで…凄く哲学的なのもあり自分の文章力じゃ何も語れない所が凄く悔しいです。
…というかそもそも本作は決まった言葉や固まった文章で書くと書いた物が凄く陳腐になるというか。
間違いなく「考えるな、感じるんだ、そして幻覚を見続けろ」的な作品なので、こういう感想などで語るべき作品ではない気がしています。
でも、何か文章で残しておきたいので、残してはおきます。
とりあえず幸福については…特に深く考えないで居られる今の自分はきっと幸福なんでしょう…
世界を救済しようと思ったり、世界を滅ぼしたくなる程の衝動に突き動かされていない今は、自分の幸福を享受しようと思います。


結局、ハッピーデッドエンドになっても「さよなら、うつつ。」本編の方に戻って来たり、沙希は現実には居なかったり。
夏月の「現実」ってどこにあるんでしょうね?
きっとどこにも無くて、彼には「ゆめ」しか無いのかもなぁと思ったり…怖っ!!
メタ要素が出た時点で夏月も登場人物の一人にしか過ぎず、彼には幻覚世界しか無い…と言われたらそれまでですが…夏月、どこまでもハッピーエンドが無くて可愛そうだなとは思います。でも500円なので仕方ない。良いケーキセットでももう少し高い。


正直、水夜も沙希も夏月に行動を委ねてばかりで自分達は手を汚さない系でとても見てて不快だったのですが、ヒロインとしてそういう設定を与えられたのなら仕方ないかな、と許せました。
絶対に肝心な所には踏み込んで来ない所に凄く苛立ちましたが、「さよなら、うつつ。」のヒロインなら、まぁ仕方ない。
沙希とどこまでも分かり合えずエロシーンが無いのが逆に笑ってしまうくらい清々しかったです。
最後の方で画面内から助けようとはしてくれますが…彼女とは違う世界に生きているので触れ合えないのですね…


さて、色々と書きましたが、結論、現実も夢もメタ要素も…もしかしたら何もかもが夏月の妄想の可能性もあって。
最後のあの「ゆめ」と「うつつ」の問答も、全部妄想の可能性もあって…
沙希すらももしかしたら幻覚である以上、どこからが現実でどこからが妄想なのかは全く分からないし、きっとそういう作品である…と個人的には思っています。
きっと、その境界線を探すのはナンセンス。
なので、読みやすい文章で狂った世界をすんなりと受け止める、そんな作品だと思います。
最後の一歩手前まではハッピーが転がっていましたし、まごうことなきデッドエンドで…看板に偽りは無しでした。
鬱屈した世界を夏月とヒロインと羊おじさんと共にブクブクと沈んでいき、少し浮き上がってまた沈んでいく…そんな「完璧な救い」は「完璧な救済と完璧な幸福」と同じくらいに無い事を見せつけられた物語でした。
(一応ジャンル男性視点18禁にしてます…男性向けかと言われると………なので。)