ひっそりと群生

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【夕暮倶楽部】感想

【女性主人公全年齢】



2020年10月01日配信
『ララライアン・スコ・スコフィールド』様
夕暮倶楽部】(PC&ブラウザ) ※リンク先ノベルゲームコレクション
以下感想です。








タブレットで語り合うのは曜日ごとの奇妙奇天烈な人物達。
摩訶不思議な世界のカウンセリングが始まる。



『一生のお願いは死後も有効なのか?

 札幌市の一部界隈でホラ吹きと名を馳せた常識 夏未(ツネオリ ナミ)が急逝した。
 姪である常識 考子(ツネオリ チカコ)は参加した形見分けでタブレットを押し付けられる。

 帰宅して間もなく届くチャットの新着通知。
 それは地縛霊と化したナミからの依頼だった。

 「私的に診察していた患者達へ、夕暮れ診療所の閉院を伝えて欲しい」

 嘘をつきすぎて誠実の誓いを7歳で結ばされた叔母の言葉。
 死後も誓いが有効なのかは分からない。
 確かなのは生前、世話になってしまった事実だけ。
 キツイ顔して押しに弱いチカは、果たしてこの先生きのこる事が出来るのか?
 LaLaLiend_Sco_Scofieldが令和に送る最新作「夕暮倶楽部」ここに開演!』
(公式より引用)



プレイ時間は約2時間くらい。
分岐は一箇所有り、EDは2つ。


とにかく独特、話も見た目もUIもオリジナリティの塊、これに尽きます。
上記のあらすじにある出来事は一切作中では語られません。
亡くなったナミのタブレットがチカコに渡されたという前提で、ゲーム画面がタブレットの操作画面から唐突に始まります。
アプリを起動するかのようにNEWボタンを押し選択出来る曜日を押すと亡くなったはずのナミから「各曜日に指定の場所に行き、それぞれの曜日主とタブレットで会話し、夕暮れ診療所の閉院を伝えて欲しい」と頼まれます。
「孤独な日曜日」であったチカコ。
「迷夢な土曜日」であったナミ。
「悲痛な月曜日」「軽薄な火曜日」「受身な水曜日」「腕白な木曜日」「泥沼な金曜日」。
ナミの指示通り街の中を彷徨いながら勝手にタブレットの中で繰り広げられるナミと曜日主の会話を読んでいく。
というのが本作の内容。


立ち絵があったり地の文があったりは一切無いです。
あるのはナミの指示通りに歩いているであろう街の背景とタブレットの中でLINEのように繰り広げられるナミと曜日主の会話のみ。
正直に申し上げますと一周目だと「なんじゃこりゃ」になります、実際に私もなりました。
しかし、作中の用語や全体像を把握するとなるほど、これは街を舞台にしたある種の宗教的儀式だったのかなと思いました。


曜日主は全員オブラートに三重に包んだくらいの言い方でとても個性的です。
各曜日で彼らとの会話をし、彼らとのカウンセリングに終止符を打つ事が目的になりますが…
まぁ話が噛み合わないわズレていくわで始終翻弄されました。
しかし、その会話の中で数々の重要な事柄が出てきて。


ナミが何をしたかったのか、チカコは何をさせられているのか。
どこが現実でどこが虚実なのか分からなくなりそうな程困惑してしまう彼らとの会話の行き着く先は…
全て理解出来たとは言えないほど難解な作品で、私の魂の領域では辿り着けない複雑さを持っていますが、複雑でありがならもポップな独自性で頭を叩かれ続けるような作品でした。



『システム、演出』
ティラノ製。
何を押せば進行するのか分からない箇所が多く、若干不親切な所がありました。
セーブロード、音量調節以外の機能は無し。
しかし、会話がLINE形式の為、文字自体は瞬間表示で読む分には問題ありませんでした。
ただ、スキップ機能が無い為、一度読んだ所を飛ばすのはクリック連打になるのと、履歴は無いので読み返しは出来ません。
セーブも2箇所と驚きの少なさ。
セーブは土曜日最後のツネオリ退出後と、EDロール後の全開曜日放画面でのセーブを推奨します。


『音楽』
各曜日主に割り当てられたクラッシック曲が面白すぎました。
曜日主に合いすぎていて。
スピーディーな曲の時と会話のぶっ飛び具合が合いすぎていて笑います。


『絵』
ドット?チップ?
用語が分からないのですが、そういう細かい物で描かれたマップやUI、背景にとにかく目を惹かれます。
チカコが街を歩きながら曜日主との会話が繰り広げられているという設定の通り、会話の背景の場所がこまめに変わります。
その背景の鮮やかさと言ったら、スーファミ時代のドット絵を思い出しました。
ビビッドカラーでパキッと塗られた背景はとてもポップで。
各曜日主のアイコンやナミのアイコンも表情豊かで。
鮮やかさが凄い、ずっと見ていると本当に目がくらみます。
タブレットにLINE形式など時代は現代でありながらも描かれる街からはどこかノスタルジックカラフルな雰囲気で。
とても独創的でした。


『物語』
難しいです。
最初の方は本当に???なまま進みます。
ある程度ヒミツのメモが増えて、用語が分かるようになるとなんとなく彼らがどういう存在でどういう事が起こったのかが分かる感じ。
なので、最初は「超個性的な曜日主との会話を楽しく見守る」で全然大丈夫かと。
後半でもなんとなく状況自体は分かっても、宗教的感覚など理解が難しい概念があったりするので、考えるな!感じるんだ!!で進むのも良いと思いました。


『好みのポイント』
全体から漂うフリゲや同人らしさ、本当に好きです。
商業じゃ絶対に見かけません、類を見ませんしこれからも見ないでしょう。
変わりに変わった曜日主と街とそして魂と。
ポップでカラフルに彩られた街で彷徨いながら繰り広げられるまさに奇妙奇天烈摩訶不思議なストーリーでした。





以下ネタバレ含めての感想です





さて、ネタバレ…と言ってもこれが合っているのか全く分かりませんが、なんとなく思った事を。
・前提に神道の価値観と一部キリスト教の価値観がある。
・ナミは通り魔に刺され亡くなっているが霊魂はタブレットに霊璽している(?)
タブレット内での会話は一部以外霊魂同士の会話、曜日主は亡くなっている。
・チカコはモモくん(月曜日)が好きだった。
・この作品世界では霊魂を別の肉体に移す事が出来る。
・ナミはチカコの肉体を欲している。
・ツネオリの家系は呪術的にかなり特殊
カルメン(火曜日)は薬をやっていた(アイコンはアサの葉?)。
・ダニ―(水曜日)はナミにより肉体を奪われ別の魂を定着させられている。
・クリスティーナ(木曜日)はダニ―(水曜日)の義娘、おそらく「女子中学生変死事件」の被害者。
カルメン(火曜日)はアサクラ(金曜日2)と付き合っていた。
・アサクラ(金曜日2)はニシムラ(金曜日1)の愛人だった。
・霊魂を別の肉体に移す技術でニシムラ(金曜日1)はアサクラ(金曜日2)の肉体に成っている。
・アサクラ(金曜日2)はカルメン(火曜日)の肉体に。
カルメン(火曜日)はニシムラ(金曜日1)の肉体に成り、「従業員射殺事件」で殺されてしまう。
これで良いのかな?高確率で間違っているかも。


神道に関して、これは最初の「孤独な日曜日」でナミが語る葬儀用語がほぼ神道葬儀用語でした。
メモにも用語が載っていますが、神道では仏教のように魂を死後の世界に送るというものでは無いらしく。
そもそも「死」というのが忌避されているので神道にあるのは「神の世界」のみになります。
なので神道では「亡くなった人は神々の世界へ帰って子孫を見守る」という考えになり。
神道での葬式は神葬祭と呼ばれ「故人を子孫の家に留めて守護神になってもらうための儀式」らしいです。
最初に「祭と付いていれば面白そう~」みたいな事を言ってるのはおそらくコレ。


死は非日常という意味になるので、神葬祭(葬式)を行うことで不幸が起きた非日常の状態を祓い清め、不幸が起きていない日常の世界に戻す。
「亡くなった人は神々の世界へ帰って子孫を見守る」という考えで先祖崇拝があり、「祖先は守り神として一族を守ってくれている」という考えがある。
故人は神葬祭の後、祖先神になる。
霊璽(位牌みたいな物)に故人の霊を移し祖霊舎(仏壇みたいな物)に祭ることで一族を守る存在になる。
これが神道の葬式での霊の考え方。
コチラ』(※リンク先「神葬祭について」)に詳しく載っていたので参照に。


多分、本編はナミの魂はタブレットにある状態なんだと思います。
そして、曜日主達は街の各場所で地縛霊のようなものになっているのかと。
本作はチカコがその場に赴きナミのタブレットを使い送魂していくお話なんじゃないかな?と。
各曜日主の生きていた時の最後の会話を流し、夕暮れ診療所の閉院を告げ「神の世界」へ送っていっているのかな?と。


まぁ付け焼き刃の知識なので正確では無いとは思いますが…
その過程で彼らの過去やチカコ、ナミの過去が断片的に明らかになり、この街で起こった事が浮き彫りになっていくという。
その中にはチカコを悩ませるものも存在して。
チカコは作中の月曜日、モモという少年が好きだったのだけれど彼が死んでしまう。
モモはツネオリの家系から見ても死に向かうのが当然なほど救えない運命を背負っていた。
モモを失った事で心に傷を負っているチカコ。
そんな傷心しているチカコにタブレットが渡され、今、目の前で繰り広げられているような会話を読み、曜日主の魂やナミの魂に引っ張られ、そしてモモの件やナミの過去も知り。
チカコは自分の今置かれている状況が幸福では無い事と、今回の送魂で徐々に現実と魂の世界の境界が曖昧になり、肉体と魂の境界も曖昧になっていっていたのかな?と。


そしてナミは神道の知識だけではなく、三位一体など、キリスト教など他の宗教の知識も持っていて。
おそらく他の数々の宗教の知識を手に入れており、呪術的な事が出来、それが「魔女」の部分…かな?
その中で肉体に別の魂を入れる術も身に付けていて、それが金曜日のアサクラ、ニシムラ、カルメンの件になっている。
多分この辺りは大丈夫だと思っています。
ただ、EDの方で語られる過去の想い人、「彼女」に関して自分は理解不足かも。
好きな人が居て、その人との約束の為にチカコの肉体を狙っている事は察しました。


EDではナミの誘いに乗るとナミとの入れ替わりED、誘いを断り閉院するとナミ諦めEDに。
閉院の方でクレジットが流れるので、こちらが正規のEDだとは思っています。
そりゃチカコはまだ生きてる人間なのでね、世の流れに逆らわないならナミの魂が「神の世界」に行くべきで、正しい流れだと。
理解不足な中ででも「彼女」をハチャメチャにナミが想っている事だけは伝わりました。
おそらく「彼女」という存在は過去に他の魂と入れ替わり、ナミの想っていた魂とは全く別者になっていて。
その「彼女」を正しい存在に戻そうとしている中で死んで(殺されて?)しまう。
死んだ自分では「彼女」との約束…星を一緒には見れないからチカコの肉体を狙っている…でいいのかな?
かなり合ってるか微妙な気が……


ですが、ラスト土曜日後半でチカコの心の傷に寄り添うようにカウンセリングを始め懐柔しようとしていった姿は「魔女」。
失った初恋の「彼女」という存在の魂の在り処を探し、チカコを懐柔し自分の目的の為にチカコの肉体を求め続けた間違いなく「魔女」の話ではありました。


神道キリスト教が下地にありつつも、魂の入れ替えなど行われている事はかなり魔法じみていて。
まさにオカルト。
ポップ、ノスタルジー、オカルティック。
曜日主の奇人変人さに笑いながらも読んでいるとフワフワとしてきて、徐々に霊魂と肉体の境界の感覚があやふやになっていく、そんな作品でした。



そういえば、「木曜の男」という小説が作中で出てきますが真っ先に思い出したのがノベルゲームの「街」の方でした。
いや、「街」は所持しつつも未プレイですが、曜日で人が決まってるみたいなそういう要素説明書で見たなーと。
「街」の元ネタも「木曜の男」があるみたいですね、いつか読んでみたいです。