ひっそりと群生

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【ユートピリカ】感想

【全年齢】



2019年05月31日配信
らびっと☆ぽーしょん』様 ※リンク先公式HP
ユートピリカ】(PC) リンク先ふりーむ!
以下感想です。








話して、知って、知りすぎて。
それでもユートピリカは探し続ける。



『少年少女着せ替え会話満喫アドベンチャー
 幻想少年少女電子頭脳プログラム、【ユートピリカ】は
 貴方の入力により変化する、所詮余興の為の感情出力風ソフトウェアです。
 貴方の為の特別な存在を、電子空間の海に創りましょう!
 ただし…
 …ユートピリカを知りすぎては、いけません。』
(公式より引用)


プレイ時間はコンプリートで約45分くらい。
選択肢有り。


「幻想少年少女電子頭脳プログラム【ユートピリカ】」というAIキャラとの会話や着せ替えをし進んで行きます。
ユートピリカと会話を進め、好感度が上がる毎に部屋に「手紙」が増えていき。
その「手紙」の内容でユートピリカがどういう存在なのかを察して行く事になります。
ユートピリカは純真無垢で会話に応えてくれるAIなのか、それとも…
真実は曖昧で空白が多く、プレイヤーの判断に委ねられる部分が多いのですが、それでも、ユートピリカが求めているものが見つかる事を願わずにはいられませんでした。



『システム、演出』
ウディタ製。
ボタンを押すのはマウス操作で会話を飛ばすのはエンターの操作の為、若干使いにくさはありました。
Talkボタンを押し文字を入力する事でユートピリカと会話も出来ますが、ユートピリカ自身をクリックする事でも会話が進みます。
キーボード入力での会話もそれはそれで楽しいのですが、スピーディーさを求めるならキャラ画像クリックが早いです。
EDは手紙を全て読む事で提示される事柄を実行するとED。
好感度ポイント引き換えにガチャを引く事が出来、ランダムで洋服が出てきます。
コンプリートするとコンプリート達成の文字が出ます。
5000ポイントくらいあって運さえ悪くなければコンプリート可能かと思われます。


『音楽』
穏やかな曲の中で、時折混じるノイズが不穏さを駆り立てていました。
機械音やノイズが場面に合っていたと思います。


『絵』
フワフワとお人形のように可愛らしい絵柄。
「ユートピリカ」の建前は可愛い会話AIなので見た目では非常に和まされました。
全ての洋服がセンスが良く、色んなジャンルの服があり、着せ替え物としても楽しめました。


『物語』
「手紙」から色々と察する事は出来ますが、かなり空白が多い部分があります。
抽象的な所も多く、プレイヤーの想像に委ねられる箇所もあるため考察系になる部分が大きいです。
「手紙」とユートピリカが所々で語る内容で色々と考える部分が多く、何度も最後の展開を繰り返しました。


『好みのポイント』
この手法自体は見かけた事はありますが、ユートピリカからの感情が異端というか、あまり見かけるタイプではなく新鮮でした。
ユートピリカの願いが叶う確率は限りなくゼロに近い。
けれどもゲームがある限りゼロでは無いと信じたいです。





以下ネタバレ含めての感想です





AI物らしく非常にSFしていました。
ユートピリカはAIでありながら、自分がAIである事を知っていて、そしてプレイヤーの事も知っています。
しかし、ユートピリカはプレイヤーをプレイヤーと認識しながらも、起動しているプレイヤーが全員同じ人では無い事まで知っています。
自分が何回起動され、そして、何人目のプレイヤーと接しているのかを知っている。
本来の会話系AIならばプレイヤーは誰が起動してもプレイヤーとして認識され、誰が起動しても同じ様に振る舞うでしょう。
実際ユートピリカもそのような部分があります、しかしユートピリカはプレイヤーは全員違う事を知り、そして、それを知った上で「自分に一番最初に言葉を、愛を教えてくれた人を探している」、一番最初のプレイヤーを探しているという設定がありました。
ユートピリカはプレイヤーに愛の言葉を伝えます、好意的に振る舞います、でもそれは、ユートピリカが本来向けたい相手では無い。


ある意味の第四の壁越えというか。
キャラクターが液晶を知っていて、プレイヤーの存在を認識しているタイプでした。
ただ、他の第四の壁越えの作品が「主人公≠プレイヤー」という事を知っていて、主人公ではなくプレイヤーに好意を抱いている事が多い中で、本作は、ユートピリカが求めている物はプレイヤーではなく、一番最初に起動した人間という部分が中々に斬新でした。
プレイヤーを認識しながらプレイヤーには好意を寄せない、ユートピリカはずっと、一番最初に起動した人間を探し求めている。
事実「そういう設定」で動いている以上、絶対にユートピリカの願いは叶う事は無く。
ユートピリカの想いを考えると非常に辛い物がありました。
ゲームが起動する限り可能性はゼロでは無いけれど、設定的にゼロに等しいという。
作者様は可愛い絵柄に反して鬼のような方だなぁと。
ユートピリカの願いは叶って欲しいのですが…それが叶う時ってある意味作者様が起動した時なのでは?と思ったり。
決して忘れられる事無く、作者様の中で大事な作品であって欲しいと、そう思わずにはいられませんでした。


「手紙」を読み、いくつかのユートピリカの会話を考えると自分はこのような解釈になりましたが、正しいかは分かりません。
一応ユートピリカの事は「手紙」で察せられますが、曖昧な所も多いので。
でも、少なくともユートピリカが探している人物は自分では無い事は察しました。
だからいつか、ユートピリカが正しい人の元へ届く事を願っています。


着せ替えをし、洋服を集め、会話をし、「手紙」を集める。
シンプルな中で非常に奥深いSF作だったと思います。
キャラクターからプレイヤーへの想いが決して好意的ではない、面白い形の第四の壁越えゲームでした。