ひっそりと群生

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【愛を見た景色】感想

【男性主人公全年齢】



2022年01月30日配信
Sky On R.imaginAtion』様 ※リンク先公式HP
愛を見た景色】(PC) ※リンク先ふりーむ!
以下感想です。








愛に囲まれた幸せな最高の夏。



『アンドロイドが密かに人間たちの中で生活していると噂される、とあるAIエンジニア養成学校が舞台。
 主人公の叶鈴は、幼馴染の藍里と共に、高校生活最後の夏休みを漫喫するための計画を立てていた。

 叶鈴の友人である壱成、可耶の二人とその日、初めて顔を合わせた藍里は、二人を含めた四人でこの夏休みを過ごそうと叶鈴に提案する。
 この夏休みが終われば海外への留学が決まっている叶鈴は、藍里のわがままを叶えてやりたい一心で、その提案を受けいれることにした。


 しかし、その提案を受け入れた直後、この学校には本当にアンドロイドが存在しているという事実が不慮の事故から発覚してしまう。

 その結果、四人は自らも本当は人間ではなくアンドロイドなのではないかと疑心暗鬼になりながら、夏休みを迎えることになる──。』
(公式より引用)



プレイ時間は約6時間くらい。
分岐有り。


大好きな幼馴染の藍里、友人の壱成と可耶。
一緒にアイスの早食い競争をしたり、釣りをしたり、泳げない藍里の為に泳ぐ練習をしたり。
日差しが強く空が高い夏の中、4人は藍里の「最後の一緒の夏休みを沢山遊びたい」という願いの為に全力で夏を楽しみます。
壱成と可耶はどこか確執があるようで最初は距離が遠く。
それでも藍里の底抜けの純粋な明るさに触れ徐々に近付いて。
「もしかしたら4人の中にもアンドロイドが居るかもしれない…」そんな気持ちが心の片隅にありながらも4人は藍里に引っ張られ、藍里に支えられ、藍里の為に純粋な小学生のような夏を過ごして行きます。
仲直り、疑心暗鬼、謎と真実、それでも過ぎて行くのは今しか無い夏。
学生時代最後の夏休み、友情に、謎に囲まれワクワクとドキドキとゾクゾクを味わう眩しい物語でした。



『システム、演出』
ティラノ製。
基本性能有り。
履歴画面などかなりカスタマイズが行き届いていました。
メッセージウィンドウや選択肢が出てくる時にちょっとした動きに華やかさがあったり。
蝶が飛ぶエフェクトや水の中での水面の揺らぎなど読んでいて目を奪われる演出が多く。
「理事長参戦!」のカットインなど細やかな技術力を感じ、プレイ中見ていて飽きが無かったです。
ただ、途中、ムービーと歌で夏の出来事が描かれるシーンがあるのですが、新◯誠さんのような演出で夏映画のような空気が良いなと思いつつも、ノベルゲームなのでその辺りも文章で細かく読みたかったなという良さと勿体なさを両方感じたりもしました。
あと、2ヵ所ほどBADに繋がる選択肢があるのでセーブ推奨なのと、片方のBADには専用のCGがあるので回収推奨です。


『音楽』
いくつかは素材でいくつかはオリジナルっぽいです。
OP、挿入歌、EDはどれもホワッとしていて優しくヒロインの藍里を中心にムービーが流れますが藍里のキャラクター性を表したような曲で作品に合っていて。
特にED曲のピアノインストは作中で何度か聴くのですが、印象深いシーンで流れる為、とても好きでした。
クリア後にCG鑑賞モードだけでなく、オリジナル曲の鑑賞モードも欲しかったです。
SEもギャグシーンではピッタリで効果的に使われていて良かったです。
ただ、シリアスシーンや日常でピンと来たようなシーンではちょっと違和感があったり。
シリアスシーンのSEが若干合わないと感じたり日常での伏線っぽいシーンでのSEがあからさま過ぎたのでもう少しギャグ以外は控えめでも良かったと思います。


『絵』
綺麗、美麗、本当に素晴らしいイラストでした。
線はしっかりとしていて塗りは淡く優しげであり儚くもあって世界観にピッタリ。
藍里、壱成、可耶、理事長に立ち絵があるのですが、老若男女問わずお上手で立ち絵の豊富さに目を奪われます。
一枚絵も藍里だけでなくどのキャラクターにもここぞ!というシーンで挿入され、場を盛り上げて居ました。
特に立ち絵での[-ω-][><]みたいなギャグ顔と、藍里が手を上げている立ち絵がイキイキとしていて好きでした。
一枚絵はどの絵も好きなのですが、個人的に理事長と髭の大人の後ろ姿の一枚絵が印象に残っています。


『物語』
静かめの時や皆でワイワイしている時はさほど気にならないのですが、主人公個人がテンションが高い時の文章が結構独特だった為、そこは読み辛さがありました。
あと、序盤に少しある結構露骨目の下ネタは作風に合わないと感じたり。
ですが、後半からの流れは良く、藍里と小学生のように皆で楽しくはしゃいでいるシーンはとても好きでした。
藍里が本当に明るくに真っ白な良い子で。
「子供や子供のように元気で純粋な子が居て、周りの人達もまた子供のような心を取り戻しその子の為に全力で遊ぶ」そんな作品や作風がとても好きなので藍里を中心に皆が笑顔でワイワイ楽しく遊ぶシーンは本当に眩しくまさに青春でした。
ひと夏のジュブナイル作品としてキャラクターを取り巻く環境や空気感がとても良かったです。


『好みのポイント』
主人公がヒロインの藍里の事を大大大好きなのが本っっっ当に良かったです!
どんな事があっても藍里最優先。
藍里の願いを叶える為なら例え火の中水の中。
主人公がヒロインの事を目に入れても痛くないくらいに大好きで惚れ込んでいる描写が好きなので、好みに刺さりまくりでした。
藍里もまた嫌味無く素直で小動物のように可愛く、そして「皆と仲良く一緒に遊びたい」という子供らしい願いを抱えどこまでも健気で真っ直ぐでまっ更な心を持っているのが痛いほど伝わって来る、紛うことなき純粋系ヒロインで。
だからこそ主人公がその素敵な部分に惹かれ、優しく明るい藍里を大好きなのも納得出来る程伝わって来て。
「藍里の為に」「藍里ともっと一緒に居たい」「藍里と恋人になりたい」が中心にある話ですが、藍里が中心になっても「なんでこの子が中心なの?」とは全く思わないくらいに藍里の良さが存分に描かれ、「この子の為なら頑張りたい!」とプレイヤーが納得できるようなヒロイン像を描いた上で主人公が藍里を好き好きしているのがとてもとても大好きでした。





以下ネタバレ含めての感想です





「学園にはアンドロイドが居る」という前提と途中の不穏な空気があった為、「4人の中にアンドロイドは居る」というのは当然の事項として受け止めていましたし、誰がアンドロイドでもある程度の覚悟は決めていた部分はあります。
「藍里か主人公がアンドロイド説」「壱成か可耶がアンドロイド説」「大穴でもう全員アンドロイド説」と考えて居ましたが…まさか大穴が来るとは。
中盤で藍里が判明でその真実に悲しくなりつつも、「例え彼女がアンドロイドでも構わない、どうやって夏休みを過ごし、先の短いアンドロイドの延命をするか」という話になるのかなーと思ったらまさかの後半、壱成も判明で覚悟は決めていましたがかなり!!?となりました。
一応予想はして居ましたが、中盤での藍里判明で嫌だと思いつつも謎が明らかになり安心していた部分を上手く突かれたと思います。
壱成判明辺りからはもう怒涛も怒涛。
EDまでジェットコースターの直通でしたし、驚きもありましたが「大穴の予想の中でそう来たか…」という気持ちでした。
4人全員アンドロイド説や途中のLoadingの演出などで仮想現実、もしくは俯瞰して物語が進んでいるというのは考えていて。
真相はある程度予想の範囲内では確かにあったのですが、それでも藍里と過ごす日常の描写、彼女の子供のような純真さ、純粋さ、優しさの描き方がとてもとても丁寧な為、予想をしていても「真実にはなって欲しくない」と作中何度も願うくらいにはあの夏の日常に囚われていました。
「藍里と、この4人でずっとずっと笑っていたい、遊んでいたい、馬鹿やっていたい」そんな子供の時が続けば良いと本気で思うほどに充実した夏。
壱成と可耶の仲違いの件も、真相を知るとあの重々しい1年前の件は現実の出来事では確かに無かったのですが、「仲違いしている二人を取り持つ」というのはやっぱり友情モノとして心踊る展開の為、一つのイベント事として印象的な流れになっていて物語が盛り上がりましたし。
そもそも、AIの判断によって作中の壱成と可耶の子供はあのような結末でしたが、「子供」が「流れ」「亡くなった」という点は嘘では無いんですよね。
AI判断とはいえ上手い具合に纏まっていたと思います。
大筋で見ると「嘘」では確かにあるけれど細かく見ると「嘘」とは決して言えないような「偽の真実」みたいなのに弱いので、現実世界での子供の真相と作中の壱成と可耶の子供の真相のリンクはこう…言い方はアレですが面白いなと思っていました。
「嘘は嘘の中に真実を混ぜると嘘に聞こえなくなる」みたいなの大好きです。


ただ、今作は「遺族救済」の物語である為、死者のその後を捏造しているという点はちょっと唸る部分でもあり。
遺族の救済の為、納得の為に「死者がもしも生きていたらこんな風に成長していたのでは?」を疑似体験させるというのは一種の死者の冒涜を感じたというか死者の意思を無視しているというか生者の傲慢さを感じたりもしました。
「死人に口無し」であり生きている人間が納得し生きて行かねばならないので仕方ないとは思いつつも、死人に口無しの中で好き放題しているなーとも思ったり。
途中でAI藍里が幼少期の藍里と対話するシーンがありますが、「AIの藍里は亡くなった藍里では無く、AI藍里が生み出された瞬間にそれは別の存在になった」これが真実だと思っています。
私は「誰も誰かの代わりになる事は出来ない」論が好きなので、例え同じ姿と記憶を持っていても「同じ」にはなり得ず。
だからこそAI藍里は幼少期藍里と会話していると思っているので、その辺りの「同じでは無い」描写があった事や、BADルートではありますが髭先生と主人公の屋上での会話で「自殺した生徒に俺が行っていた事は自己満足だった」という会話があった事で、そういう「片方の人間の自己満足さ傲慢さ」というのが語られ、それがイコール「死者のAIを生み出し納得する遺族」にかかっており、ちゃんと「死者の意思は無視している」という部分を語っていたのは良かったです。
これはあくまでも遺族の為、死んだ人間に囚われている生者がなんとしてでも一歩を踏み出す為の物語なんですね…
生きている人間には生きている人間の世界がある、だから例え死者の意思を無視してでも生きないといけない。
そんなある意味では生者の傲慢でありつつも、どこまでも「生きろ!!」と伝えてくる力強さがありました。


主人公はどうやっても藍里に囚われて行くのでしょうが…「AIの藍里に会う」それを目標に「生きる」のならそれはそれで一つの目標で否定出来る事ではないと思ったり。
作中で「誰か一人だけアンドロイドを延命出来る」という話の際、他のアンドロイドや壱成をガン無視して脇目も振らず「藍里!!」と言ったのは個人的にめちゃくちゃ好きでした。
「壱成は!!?」と一瞬思いましたが、主人公にとっては藍里こそが全て世界の中心なのが伝わって。
「世界とヒロインどっちを取る?」みたいな展開で全く悩まずヒロインを取るタイプの主人公大好きなので、主人公の作中での藍里至上主義は見ていて気持ちが良かったです。
現実での話を知ると作中での藍里至上主義はもう、納得しか無く。
主人公が藍里好き好きなのも藍里最優先なのもそれはもう納得出来るほど、一生を藍里に捧げていて。
藍里の子供らしさも子供で時が止まってしまった彼女を知るととても納得で。
そんな藍里への後悔と愛を感じ、この物語で一つの区切りが付きつつもこれからも「遺族の為」がある中で、「いつか藍里とまた出会う為」も絶対にあり。
また再び生きる気力をちゃんと持ちながら藍里一筋で研究を重ねるんだろうな…
今度は今までの後ろ向きな姿勢では無く、前向きな姿勢での「藍里に会う」という研究なのだろうなというのが伝わる良いラストでした。


「誰が人間で無いのか」という流れがあり、かなり根底は暗くなりがちな中、夏の日差しの強さや青春の空気感、理事長や髭先生などの愉快なキャラクターで明るく明るく持ち上げて陰では無く陽に話を持っていっていたのはとても上手い作りだと思いました。
「仲間と好きな人と、ワイワイ夏を全力で楽しもうぜ!!」読んでいて懐かしさを感じるほどノスタルジックで。
夏、青春、ジュブナイルが満遍なく詰まったとても良いSFゲーでした。



そう言えば、選択肢で出た「水瀬」という人物を主人公が気にかけていたので気にしながら読んでいましたが作中で全く登場せず。
同梱のオマケ小説でも登場しなかった為、「水瀬」さんだけが気になりました。
一ノ瀬、星野、立花は出ても水瀬は確か出なかったはず…
前作などのキャラクターでしょうか?
他の前作は配信停止中っぽいのでいつかプレイ出来る事を願っています。