ひっそりと群生

ひっそりと持ってるCDの情報やゲームの感想上げたり。購入物の記録など。気ままに。飽きっぽいので途中で止まったらご愛嬌。

【夢見た少女のニルヴァーナ】感想

【男性向け15禁】



2021年08月31日配信
ReTERIAL』様 ※リンク先公式HP
夢見た少女のニルヴァーナ】(PC&ブラウザ)(15禁) ※リンク先ノベルゲームコレクション
以下感想です。








仲間と共に夢と生きる道を探し求めて―――



『学園生活最後の1年を迎える行末在志は、どこにでもある平穏な日々を送っていた。
 だが、ある日を境に"記憶にない場所を見せられる"謎のフラッシュバック現象を見始める。
 その輪郭は日ごとに強くなっていき、真相を確かめるために、在志は"見せられていた場所"へ行くことにする。
 するとそこには、膝を抱えて静かに座り込む、一人の少女がいた。

 「わたしは、ひとりじゃないと……ダメなんです」

 その言葉の意味を、在志は極限状態の中で知ることになる。
 彼女は人の存在を呑む"化け物"であることを。

 ――在志の存在が尽きるまで、あと1年。

 捕食者と被食者。
 決して分かり合えないはずの2人が、決められた運命を変えるために、残された時間をともに歩んでいく――』
(公式より引用)



プレイ時間は約8時間15分くらい。
分岐無し。


呑在鬼(てんざいき)という人外の少女、夢見に出会い「存在」を食われ、存在の余命が一年になった主人公が生きる方法を探す為に夢見と共に夢見の存在そのものや鬼の伝承を探りながら、出会った少女達の秘密や謎、問題を解決して行く。
メイン登場人物の男性は主人公のみで、登場人物はほぼ女性キャラの為、方向性としてはギャルゲー伝奇になると思います。
余命一年の中、出会う少女達と向き合い、交流し、関係を深め、主人公を中心に呑在鬼の問題を解決する為の仲間が増え。
一年の中、主人公は今までの自堕落な生き方を改め、自分の為、そして夢見や仲間の為に奔走し、町の過去を探って行きます。


本作は現在公開されているフリー版と、現在(プレイ時2022年6月)はまだ未発売の有償版に分かれる予定。
フリー版ではクリアした感じですがおそらく「夢見ルート」の中でもニュートラルなED、TRUEとはまた違ったGOOD ENDのみが収録。
有償版では各ヒロインのルートに分かれ、更には18禁になるとの事です。
フリー版では回収されない伏線や謎、一部展開が急速に感じた箇所がありましたが、おそらく有償版で明かされたり追加される展開によって補完されるのだと思っています。
大まかな話の流れはフリー版で理解出来るものになっていました。



『システム、演出』
ティラノ製。
基本性能有り。
ただ、しばらく進めるとメッセージ速度がデフォルトに戻っている感じがしました。
立ち絵の大小によって距離がしっかりと描かれ、遠近が付いていたのが良かったです。
ただ、一部のシーンが重いのか止まる箇所が数カ所あったので、こまめなセーブを推奨します。


『音楽』
おそらくオリジナル楽曲、クリア後BGM鑑賞モード有り。
ピアノ曲が多く、徐々に余命を減らしながら、それでも穏やかな日常を忘れないように生きているのがピアノの旋律に非常に合っていました。
「赤い影」が不穏なシーンで流れる時に怖かったり、「心残り」の物哀しいさが寂しいシーンにピッタリでした。
主題歌の「夢語り」もEDロールで2番が流れるのですが、2番が思いっきり夢見の事を語った歌詞でまさに「主題歌」。
挿入歌の「もしも、ひとつ」もまた最後の方で流れるのですが、夢見の決意をとても引き立てていたと思います。
声は18禁化を考えているだけあって、全員お上手。
調べたら他の同人エロゲなどに出演されていらっしゃる方々で安定感がありました。
ただ、季咲はちょっと収録環境が他と違ったり気になったのと、演技は皆さん良かったので履歴でのボイスリピート機能が欲しいと感じました。
この辺りはフリーなので仕方ないのですが、どうしても気になりました。
演技は美羽役の葵さんのポワッポワした話し方と、あずきの橘さんのアホさは確かにあるけれど真っ直ぐ自分の信念を貫き立ち向かっていく強さのある演技がとても好きでした。


『絵』
立ち絵、CG、共に美麗で、ポーズや一枚絵の構図に違和感もありませんでした。
塗りが本当に綺麗で瞳の色など吸い込まれそうな透明感がありました。
表情も豊かで印象的な場面で一枚絵が入るのでとても良かったですし、傷や血など物語を反映した立ち絵がしっかりと用意されていて細やかさを感じました。
ただ、立ち絵のポーズが一つだけなのと私服があるのに制服が多めなのが少し残念。
もっと沢山動きが見たかったのと、もっと女の子達の私服姿を見たい気持ちがありました。
CG鑑賞モードはあるので美麗なCGをクリア後に拝める事が出来て良かったです。


『物語』
文章は読みやすく、日数単位で進んで行くので切り所も良く読み込みやすかったです。
各章でのヒロインの問題の解決方法や、ヒロインの背負っている物との向き合い方にもとても友情や優しさを感じました。
ヒロイン全員個性的でそれぞれにギャップなどがある所も大変可愛らしかったです。
ただ、7月辺りから駆け足気味に感じたので、フリー版だと後半いきなり進む感じがあったと思います。
一部謎もまたフリー版では明かされない為、物語を全体的に見るとキリの良いEDは迎えますが不完全燃焼ではありました。


『好みのポイント』
町の歴史を知り過去を知っていったり、章が進むにつれて仲間が増えていく流れがとても好みでした。
「どんどん仲間になっていき、一緒に問題解決を行う」という流れが好きなのでヒロイン達が集うシーンは大好きです。
町の歴史の開示や遙か昔の過去回想なども伝奇モノが好きなので心踊りました。





以下ネタバレ含めての感想です





夕月ーーー!!!うおぉおおお夕月ーーーーー!!!
いや、これ、確かに中心は夢見の話なのは分かっているのですが、どうしても夕月の存在が心に残り続ける作品でした。
序盤、めちゃくちゃ健気で優しく明るい妹の夕月が実は既に呑在鬼に食われていて消える所からプロローグがスタートなのですが、そのスタートの時点でプレイヤーからしたら「絶対夕月をなんとかしたい!!」から始まるに決まってるじゃないですか!!
これで嫌な所があるキャラだったらさほど…の印象ですが夕月、本当に良い子で良い子で。
だからこそ今作は個人的にずっと「夕月をなんとか助けたい」話で進んでいました。


故に、前半で夕月の健気さと薄幸っぷりに触れて感情移入している事もあり、メインヒロインである夢見の存在が序盤であまり好ましくなくなってしまったというか…
これで「夕月を食ったのは別の呑在鬼」とかだったら印象が変わったのですが、「実は呑在鬼は夕月を食っていて存在が消えていた為、食った事すらも忘れていた」というのがなんかこう、モヤッとしてしまって。
「食われた存在は存在そのものが消える」のと「夢見と呑在鬼は別人格」なので仕方ないとは思いつつ、夢見は「食べたく無い」とか言いながら人を山におびき寄せて食べてますし、常に「ごめんなさい」とは言うけれど、それ以上の行動を取らず。
謝るだけ謝って改善する姿勢を全く見せず、被害者仕草ばかりするのが凄くモヤモヤしました。
自分の中の呑在鬼と対話しようとするのも後半ですし…しかも、呑在鬼が出ると夢見は全く何も出来ず被害ばかり生み出し。
「皆さんの存在を助けたい、自分も食べたくない」と言ってるのに全く行動が伴ってないんですよね…
更には、そんな夢見を見ててプレイヤーはモヤモヤしてるのに周りのキャラクター達は命の危険に晒されてたり大事な人を失っている事に気付いても「夢見は仕方ないよね」みたいな感じで済ますのも謎で謎で。
こう…「メインヒロインだから特別に許されてる」「メインヒロイン補正」みたいなのを感じ、凄く贔屓を感じて、キャラクター達は夢見の為に頑張るけど、プレイヤー的にはあまり夢見を強く助けたいとは思えないという乖離があった所があります。
これで、「主人公が夢見に助けられた」とかがあればまだ納得ですが、自分の存在を食われても許した上で「夢見にも楽しい思い出をあげたい」となるのがわりと謎行動。
「なんで夢見だけ許されてるんだろう…」と常に思い続ける結果に。
確かに夢見が居ないと主人公の存在消滅をなんとか出来ないのと、夕月の存在を戻す事が出来ない為、仕方無さはあったのですが…
自分だけならまだしも大事な人まで酷い目に合わせておいて「許し」の姿勢になるのに納得出来ないままでした。
まだあずきのように「お前しかなんとか出来ないから、嫌いだけど味方する」という距離の方が納得出来たり、後半の季咲のように嫌悪する方が納得出来。
なので、「キャラクター達の善性のお話」「復讐の連鎖を止める話」であるのは分かりつつも、その善性を納得するだけの夢見との人間関係の構築が無く、ラスト夢見に対して特にお咎め無くハッピーエンドなので単に「ヒロイン補正」になってしまっていたのが残念。


あとは、主人公の行動もあまり褒められたものでは無く。
夢見が「人の存在を食う」という人類からしたら大変な存在なのにアッサリと山から住宅街に下ろしたり、夕日との想い出を忘れていたとは分かっているのですが、夕日の存在を認識しながら部屋を勝手に夢見に使わせたり、夕日の存在をあえて無かった事にしようとしたり。
後半でピンチになった時に全く動けず逆にヒロインの美羽に助けられて「主人公とは?」となったり…
なんか、主人公の行動が浅慮に感じたり役立たずに感じる部分が多かったり、夕日の事をぞんざいに扱い過ぎていて主人公にあまり好印象を持てず。
これで夕日と険悪な関係だったとかなら分かるのですが、プロローグでめちゃくちゃ良い子だったので「何故そこまでぞんざいに扱える???」というくらい妹の扱いが雑なのが謎でした。
自分ですらモヤモヤしたので、これ、妹萌えの人が見たら大変遺憾だと思います…


そもそも呑在鬼が完全に人外だったり、本当に全ての人間から裏切られた元人間だったならあの行動も納得だったのですが、過去編を見る限り元人間であり、生まれは生贄として仕組まれたものであっても小鉄という自分の為に全力を尽くしてくれた兄が居て。
これで小鉄にすら裏切られてたら「それは仕方ない…」となる中で、一人だけでも自分の味方が居たのに「人類全員はクソ」という思考になるのは流石に視野が狭過ぎるというか。
まだ途中のミナナの親に捨てられ、捨てられた先で実験台扱い、逃げた先でもクソ野郎ばかりでロクな目に合わなかったという方が「人間はクソ」の感覚になるのが納得出来たので、呑在鬼の「人類全員に復讐してやる」に関しては小鉄という良い人が居て、更には開始前に夕月にも優しくして洋服まで貰っていて、おそらく今まで呑まれた人間の中には同じように優しくしてくれた人も絶対に居て。
そういう存在を夢見は覚えて無くても呑在鬼は覚えていると思うんですよ。
明らかに過去に自分を貶めた存在よりも時代が進むにつれて優しくしてくれた人の方がきっと多くて。
「人間全員がそんな奴らじゃないというのは長い歴史の中で知ってるはずじゃん…」と呑在鬼に関してもまた浅慮さに眉をひそめました。
後半で皆が「夢見の為」と頑張る中でもその想いを受け取る事は無く、改心する事も全く無い上に、季咲に関しては「一度病気を治してから存在を飲めば更に傷付くから治した」とかいう最悪な行動を取っており、ぶっちゃけ、作中で過去編の人間達よりも嫌なムーブをする為、「いや、過去編の人間よりも貴女が一番最悪やぞ…」という感情にしかならないという。
主人公の行動があまり良い物に感じなかった所や「なんとかする」と言いながらも調べる際には他のヒロインが先導したり他ヒロインの方が頑張って助けたり、メインヒロインの夢見が「こんな事したくない」と言いながらも自分から抗う事をしなかったり、呑在鬼の「人類全員憎い」に関しても過去を見るとちゃんと良い人が居る上で同情出来ないほどに作中一の最悪な性格になっていたり…
主人公とメインヒロインの思考や行動にあまり共感出来なかった所は大きかったです。
ラストもまた「夢見が消えて罪を清算する」のでは無く、夢見は普通の人間として山に居るっぽい為、そこにもまた「ヒロイン補正」を感じ…
やっぱり優遇っぷりに納得出来ない所がありました。


ただ、伝奇としての過去の開示や他ヒロインが出てくる所、ヒロインの過去がどんどん繋がって行く所はとても楽しく。
むしろ夢見以外のヒロインがとても魅力的で。
美羽のポワッポワしながら実はとても強く、「色んな目にあったけど、自分を拾ってくれた人は良い人だったから人間皆悪い人じゃない」という視野が広い所。
季咲の自信家に見えて実は臆病で「一度手に入れた人としての幸せを失いたく無いから夢見を怖がる」という人間的な所。
白菊の優雅に見えて貧乏で「父親の罪を嘆いて自分が必死にその罪を償おうとする」とても慈愛に溢れている所。
あずきの子供っぽくも正義と友情に厚く「思い出した夕日の為に、夢見を憎んでいるけれどそれはそれとして協力をする」という割り切りの良い理性的な所。
そういう各ヒロインがそれぞれで人間的な良さを放っていて、しかも4人共芯があるので見ていてとても爽快で。
7月…白菊編辺りからテンポが早くなっていったのですが、もっと他ヒロインとの交流を見たい!!と強く思えるほどに魅力的でした。
この辺りは有償版で変わるかもですが、各ヒロインのEDを凄く凄く見たいです。


テンポとしては白菊編の解決が早く感じ、伝奇モノとしてもっと戦闘シーン…特に美羽は強いっぽいのでもっとミナナと美羽の戦闘シーンが見たい!と思ったりもしました。
あと7月からいきなり日数が飛んで行くので、もっと細かく区切っても良かったのでは?と。
ギャルゲー的にはイベント目白押しの夏がいきなりぶっ飛ぶのはどうかと…皆で海とかお祭りとかを見たかったです。
謎に関しても、


・「人間恐怖症」が何故この町にあるのか?(呑在鬼が願ったとありますが、何故「存在を食う」以外に「人間恐怖症」をも作ったのかは謎のままなのでそこを深く知りたかったり)
・あずきシナリオはおそらくラストになると思いますが、夢見が普通の人間をしている世界であずきが自害したのが謎で、あずきと母親の豆花さんの謎が明かされて居ない。
・呑在鬼が選別する人間の基準の謎、何故主人公の一族が全員選ばれたのか分からないまま。
・フリー版では1月をすっ飛ばしいきなり2月に行ったり、1月~4月にかけて駆け足気味なので、その辺りにまた物語が挿入されそう。
小鉄と夢見の過去編もまたスピーディーで、鬼を倒した後に望んだのが「呑在鬼としての自分」なのは分かりますが、鬼と夢見の間に何があったのか、鬼をどうやって倒したのかが謎のままなので過去編が詳しく解明されそう。


この点が残っている為、この辺りも有償版に期待しています。


「存在が消えないように何とかする」「妹の存在を取り戻す」「夢見を人の世界に連れて来る」。
序盤で提示される物語の目的はラストで解決している為、一つの作品として解決はしていますが、他ヒロインの謎が残っている為、「綺麗に解決!大団円!!」の読了感は少なかったです。
フリー版なので「物語全体の把握と、夢見ルート一つを丸々収録のEDを一つお試し出来る版」という感じでした。
いやぁ、でも上手い作りだなーとも思っています。
本当に他ヒロインがとても最高の良いキャラクターばかりで、「フリー版では見れないけれど、他ヒロインとのEDや物語をもっと見たい!!」となるのは商売上手ですよ…こんなの買わざるを得ません。
今後の各ヒロインED分岐と18禁シーン収録の有償版が楽しみで仕方有りません。
有償版では駆け足気味に感じた他のスキップした日付も入るかもしれないのと、上記の謎もおそらく解明されると思っているので、有償版…もとい、完全版の販売配信を期待しています!!
あ、あと、個人的に自分の中では夕日があまりにもドヒットだったので、夕日ルートとか無いかな?(チラッチラ)と思ってます(プレイ後の時点では無さそうですが…)。