ひっそりと群生

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【てんがいちかく】感想

【乙女全年齢】



2020年04月15日配信
相互不理解』様 ※リンク先公式HP
てんがいちかく】(PC&ブラウザ) ※リンク先ノベルゲームコレクション
以下感想です。








私と貴方の距離。



『目が覚めると、真っ白な病室だった。
 ここはどこだろう。
 私はだれだ?』
(公式より引用)



プレイ時間は約20分くらい。
分岐無し。


目が覚めた主人公は何も覚えておらず記憶喪失になっていた。
主人公の前に現れたのは由里大河という青年。
彼は主人公からの質問に応え色々な事を教えてくれる。
自分の事、記憶を失った事故の事、幼馴染の事。
全てを知る事で浮かび上がってくる真実とは…?


もんだいがある▼』(※リンク先感想)の相互不理解様の作品。
主人公の元に現れる大河という青年は主人公の質問に一つ応える度に一度帰って行きます。
彼が帰るとタイトル画面に戻りタイトル画面からのスタートなので周回プレイ必須という作り。
周回し、彼の語る主人公の忘れている事を纏めていくと…一つの事柄に気付いて行きます。
主人公は何者なのか、由里大河は何者なのか、主人公に何があったのか…
全てが綺麗に回収されていくのにはお見事。
短めのミステリーという感じで非常に面白い作品でした。



『システム、演出』
ティラノ製。
メッセージ速度変更は無しですがプレイ時間的にストレスはありませんでした。
繰り返しプレイ必須、一度読んだ文字は色が変わっており、Ctrlで飛ばせるのでこちらも使い勝手は悪く無かったです。
繰り返しプレイにしたのが非常に面白く納得の作りでした。


『音楽』
「もんだいがある▼」でもコミカルな音で笑いを誘いましたが、今作は音が非常に上手く。
気付いた時には「なるほど…」と思いました。


『絵』
立ち絵は大河のみ。
主人公と大河の話なのでこれで良いと思います。
480×640という普通のノベルゲーム画面と逆の大きさで最初驚きましたが…
真相を知ると納得しました。


『物語』
文章は読みやすく、基本会話劇なのでサクサク読めました。
話は…事故+記憶喪失モノかな?
何を語ってもネタバレになるので伏せますが、色々と翻弄されました。


『好みのポイント』
「てんがいちかく」。
天涯孤独の造語かと思いましたが、実際にある言葉でした。
天涯地角、意味を調べるとなるほど…と。
タイトル付けも非常に上手く、話、作り、タイトル全てからセンスを感じました。
様々な真実がありますが、それでも、大河君の気持ちは…本物だと思います。





以下ネタバレ含めての感想です





正直10分くらいグルグルと回ったのでここにヒントを。
他の所でも書かれていますが、SEとメニューです。
…このヒントでなんとか先にすすめました。


本作は非常に上手く、繰り返しプレイをしていくと???となります。
大河君の語る情報を最初はただ質問し聞いていくだけですが、繰り返していく内に整合性が取れなくなっていき。
「あれ…?前の話と関係性や主人公の職業、記憶喪失の経緯が違う…」とひたすらに混乱しました。
メモに彼の語る事を書いて行きましたが、全く同じ事が無く。
繰り返して得られる情報もどんどん前とは違う情報ばかりで本当に困惑して。
「何が真実なのか全く分からない」となり、得る情報も同じになって手詰まりになった時にヒントを出してくれているサイト様を見つけ。


例のギミックに気付き使った時には素直に「やられた…」でしたね。
「主人公が解離性健忘で一日しか記憶が持たない」のでこの繰り返しプレイになっている。
「大河君が何かを隠している」までは想定していたのですが、この瞬間にゲーム画面の大きさやノートの作りのような画面にも納得して。
くぅ、上手い、上手いです…これはやられました。


正直真相自体は結構予想がついていて、最初の主人公と父親の事故がどんどん嘘だと明らかになり。
「主人公は父親に虐待を受けていて大河君が父親を殺した」という証言ではありますが、実は主人公の父親殺しを大河君が背負っていた。
こういう所は予想通りでしたが、数々のギミックが非常に作りが良く。
主人公が自分の名前を思い出した瞬間に全てを思い出し、その名前を思い出す所で初めて名前設定が出来る…というのが乙女ゲーでは高確率で名前を付けるのがセオリーとなっている事と上手く絡まっていて、ここでも唸らされました。


主人公と大河君が全く知り合いではなく大河君が遠くから主人公を想っていた事。
本当は幼馴染でも同じ大学でも無かった事。
この辺りも周回プレイをしていく内に察してはいましたが…
大河君は主人公の近くに居た誰よりも主人公の事を想ってくれていて。


天涯地角。
「二つの土地がきわめて遠く離れていることのたとえ。 また、はるか遠く辺鄙へんぴな場所のたとえ。 「天涯」は空の果て、「地角」は大地の果ての意。 天の果てと地の果ての意から。」
…この意味を調べて知った時に、まさに主人公と大河君の距離で、最初から最後までこの距離が変わる事は無く。
主人公も大河君の行動を受け入れる事は無く真実に向き合いますが、それでも、主人公の事を本当に好きで主人公の為ならば身を投げ出せる一人の青年が居た事だけは嘘じゃないと…そんな風に思いました。


主人公は全てを受け入れた…かのように見えますが、ノートを破り「最初から」を再びプレイできるようになる作りも良いですね。
主人公はまた再び記憶を捨てるのも可能なんだ…と。
家庭環境もありましたが主人公もまた闇が深い。


短いミステリーモノとしても面白く、非常に作りが上手で個性的なギミックでした。
10分くらい悩みましたがとても充実した時間を過ごす事が出来た一作でした、楽しかったです!