ひっそりと群生

ひっそりと持ってるCDの情報やゲームの感想上げたり。購入物の記録など。気ままに。飽きっぽいので途中で止まったらご愛嬌。

【ef - the latter tale.】感想

【男性向け18禁】



なんとなくminoriのノベルゲーム作品を最初からプレイしたくなったので購入part9。



2008年05月30日発売
minori(解散)』※リンク先公式HP(18禁)
ef - the latter tale.】(PC)(18禁) ※リンク先wiki
以下ネタバレ含めての感想です。








10作に一個は名作と呼ばれている作品を挟んでプレイしないと心が死ぬと学びました。
というわけで、この感想がいつ投稿されるかは分かりませんが、2021年の140作目は「ef - the latter tale.」に。


システム面は7でもインストール可。
インストール時コード認証有り、ディスクレス起動可。
プレイ時間は約13時間30分くらい。


ef - First Fan Disc』『ef - the first tale.』『ef - Second Fan Mix』(※リンク先感想)をプレイしたので本編を開始。
「latter tale.」には三章と四章と終章が収録。


「first tale.」の時点で「演出は凄まじいけれど話は…というかヒロインが…」となっていたのですが、三章が一気に化けてくれたのと、三章、四章のヒロインはとても好みで正直「first tale.」よりも楽しめる要素が多く嬉しかったです。
三章はもう、何もかもがズルい、ヒロインの境遇も、それに向き合う主人公も何もかもがツボで飽きるポイントがありませんでした。
四章も青年×少女好きに刺さる箇所が多くとても楽しく、そして物語の中心人物である夕と優子の過去も展開し、物語としての楽しい所が詰まった後編だったと思います。
一章、二章では単に恋愛物だけで進んでいた物語も、三章では従妹のミズキの件、四章でミズキが語る優子の件、そしてどことなく感じる街の違和感でミステリー調に話が展開され、プレイヤーを飽きさせない構図になっていたと思います。
ただ、後編で一気に化けたとは思いつつも、個人的な好みとして三章の面白さを四章、終章が越えてくれなかったのはちょっと残念というか。
「ef」、アニメの方はフルで見た事は無いのですが、「トラウマシーン集」みたいなのでちょっとだけ肝心な所に触れてしまっている作品でもありました。
なので、「千尋の病」「優子の過去」の辺りはそういう寄せ集め動画で知ってしまっており…そこでのまっ更な驚きは感じる事が出来ず、ちょっと触れ方を失敗したなぁと思った部分があります。
音羽の街の真相」もなんかネット上のどこかで見かけた事があり…この点もまた作品内で驚きを味わえず、失敗しました。
ただ、発売から10年以上経っている作品なので広いネット世界に触れる以上ネタバレは仕方ない物だとは思っています、古典に触れるという事はそういうもの。
ですが、「千尋の病」は病の内容を知っていても楽しめたのですが、「優子の過去」と「音羽の街」に関しては…知っていても知っていなくても自分はさほど楽しめ無かったような気もしています。
千尋の病」はその病に向かっていく二人を見るのが楽しかったり惹かれたりする部分であるのに対し、「優子の過去」は一発のインパクトは大きいのですが、物語の作りとしては「創作では見かけはする」というタイプだと思ってしまったり、「音羽の街」に関しては記述トリックとして利用していたのかもしれませんが、街が2つあったとして物語自体がそんなに変わったか?という気はしています。
勿論「優子の過去」があったからこその夕と優子で、二人が近付いて行く流れや二人の生活はとても見ていて美しい物で二人の関係はとても素晴らしいものでしたし、「音羽の街」がある事で夕の夢が達成された事と、「震災後の強く逞しく生きて行く街の人々」や季節が逆だからこそ「夏のクリスマス」の約束が描かれていたと思います。
ただ、「優子の過去」はその後の二人は良かったのですがどうしてもインパクト重視だなぁと感じた事と、「音羽の街」の記述トリックは記述トリック単品として見るとちょっと薄めに感じたり…もう少し「日本の音羽のココにコレを残したけれどオーストラリアの音羽のココには残っていない」みたいな街での違和感を文章で感じたいとも思いました。
文章で違和感を感じたのがミズキが蓮治の家に来た際に景達の事を語った時の物理的な距離の遠さ、千尋と景がとても遠い所に居るような感覚、ミズキが教会前に花を添えた時に「本当の音羽」と語った事、わざわざ公園の子供を「日本人」と呼んだ事…この辺りで、人での違和感は感じましたが、街の建物に関して記述では全く触れなかったのが残念ではありました。
ただ、その分、流石の背景と言うか。
「日本の音羽」では背景のモブは日本人っぽいキャラで、「オーストラリアの音羽」では背景のモブは西洋人っぽいキャラが多かったので、本当に背景担当の方々は素晴らしいなと。
視覚でしっかりと補っていく所にminoriの美術担当の凄さを感じます。
そういう所もあり、三章は千尋の特異な病からとても面白い流れになったのですが、四章と終章は物語としてはどうしても見慣れた物になってしまっていて。
「見慣れた物を凄まじい演出力で引っ張っていった作品」という印象になった所はあります。
とにかく背景と演出の力が強大で、その力に「物語」があまり追いついていない感じがしていました。
本作は「三章が自分の中での面白さで頂点に達してしまった事」と「どんどん広がっていくキャラの関係は見れたけれど、視点が変わる事で反転する印象や状況、とても大きなどんでん返しは無い為、章構成の群像劇で見たかった部分の半分を見れなかった」そういう感想になりました。
ただ、「物語」としては個人的に見たかった物が見れなかった所は大きいのですが、上記で語ったように演出力は満点を越えて数値化出来ない領域にあると思います。
前の感想でも書きましたが、戦闘の無い日常系のノベルゲームでの静止画演出としてはトップクラス。
動きの凄さ、カメラワークの凄さ、光加減の凄さ、どれもピカイチ。
エロゲの背景で「光でリアルに目が眩む、背景の光が眩しい」と感じた背景は今作が初でした。
この演出を見るだけでもこの作品をプレイする価値はあります。
演出を求めてノベルゲームをプレイするプレイヤーにとっては必須科目かと。
…だからこそ最後のアニメーションには物申したい所があります。
歌唱曲が入ってからのアニメーションは良いとしても、最後の夕と優子の別離はこのクオリティの静止画演出があるからこそアニメーションでは無く静止画で見たかったです。
ここまで素晴らしい演出を見せておいて、この一番良い所でアニメーションはかなり残念でした。
正直EDのアニメーションよりも静止画の方が作画が良かった分余計に。
歌唱曲入ってからのアニメーションは分かりますが、最後のここぞ!というシーンまではキッチリ最高の演出で見せて欲しかったです。


音楽は後編では14曲追加。
後編はバイオリニストの久瀬の話がある為、バイオリン曲が多いのですが、(おそらく)生演奏でどのバイオリン曲も良かったです。
場面に曲が負ける事無く、しっかりと噛み合っており、曲での演出もまた素晴らしかったです。
歌は後編曲の「emotional flutter」もアニメーションと絡み合い融合性が高く、OPアニメーションでminoriらしい強さを発揮していました。
ただ、個人的には前編OP「悠久の翼」がやっぱり好きです。
当時あのアニメーションを見た時の衝撃はどうしても忘れられませんでした。
声は千尋役のまきさんがどうしても群を抜いてました。
千尋はダウナーキャラでは無いのですが、彼女の病がある上でどうしても虚無を持っているキャラで。
彼女の視点になった際に入る地の文の語りは飛ばせませんでした。
他ヒロインは飛ばした箇所もあるのですが、まきさんの虚無語りにずっと圧倒されっぱなしで…
千尋の病から来る「どうしようもなさ」というのが本当に見事で見事で…やっぱりまきさんはどこか諦めているようなキャラの語りが恐ろしい程に上手い方だと再確認。
蓮治役の伊香川さんは三章以外で声を聞く事が出来たのですが、思った以上に高音で驚きました。
確かにこの声だと作中女性と間違われてもおかしくは無かったです。
ミズキ役の安玖深さんは前向きな元気っ子が本当に似合います。
絶対に折れず明るく前に進み諦めかけている青年を引っ張っていく強い少女、安玖深さんにピッタリの役柄でした。
久瀬役の安芸怜須さんは「鎖 -クサリ-」と「Tears to Tiara」でお聞きしていましたが、やっぱりクセがある男性が上手いです。
飄々としつつどこか含みがある男性、似合いすぎていました。
優子役の山田さんは前の感想でも書きましたが凄くお上手で語りに入ると人を惹きつける話し方をされていらっしゃいます。
出演作が少ないのが残念ですが、またどこかで語りをお聞きしたいです。
夕役の壬生さんは…多分、安芸怜須さんと同じくLeaf作でお聞きしていたと思います。
非公開なのですが、あの、同人誌を作るゲームで。
あのゲームでは破天荒な役でしたが、夕は静かに格好良い役で、この方もまた幅広いなぁと思いました。
最後の優子への「愛してる」は優子との日々で言って来なかった言葉だからこそ響くのもありますが、壬生さんのお声と演技でドキッとしました。
途中のミズキから貰った花を嗅ぐシーンもですが、フッとした時に漏らす言葉がめちゃくちゃ格好良く、夕というキャラに合っていました、とても格好良い語り部でした。


エロに関しては…各キャラ一回くらい。
三章が一番好きなのですが一回しか無く残念。
でも、あの二人の関係はあの時しか出来ないと思ったり、そもそも一回でも出来たのはある意味で奇跡とも取れたり…二人の関係を見るとそういう複雑な二人だからこその良さもあるなと。
というか、本作、初回特典でTVアニメのアニメーターとの対談がある為、おそらくアニメ化前提で作られていたフシもあります。
それを考えるとコンシューマ化も企画にあったと思いますし、エロが少ないのも移植やアニメ化の事を考えると納得です。
エロの要素が必須なのは「優子の過去」くらいになるので、エロ要素が少なくても仕方ないかなと思っています。
minoriのその後を見ると一度は全年齢への移行を目指しているみたいですし。
…が、エロゲとしてはやっぱりエロは2回くらいは欲しかったです。



プレイ順は
第三章→第四章→終章
攻略順固定



『第三章』
一番好きな章で個人的に面白さが頂点だった章です。
事故の影響で左目を失い13時間しか記憶を継続出来なくなった少女の話。
記憶喪失は創作で見かけますが記憶障害を扱い、ここまで丁寧に書いた作品はあまり見かけた事が無く新鮮でした。
千尋の記憶障害自体は「アニメの印象的なシーン集」みたいなので知っていたのですが、知っていても楽しむ事が出来る程に構成が良く。
というか「13時間しか記憶を継続出来ない少女と共に小説を作る事で少女を残そうとする」という図が既にズルい。
「記憶」に「創作」に面白いもの盛り合わせセットというか、ロマンの塊というか、自分の好きな物が全部詰め込まれていた、そんなお話で。
三章ヒロインの千尋に一目惚れした三章主人公の蓮治は千尋と一緒に居たくて一生懸命千尋と行動を共にします。
千尋の日記という名の記録に日々書き綴られていく蓮治。
蓮治は千尋と一緒に創作していく中で千尋への想いを募らせて行きますが、ある時千尋に「このくらいの期間が経てばキスをするらしいのでキスをしませんか?」と言われ、千尋と自分の重ねた想いは決して同じになる事は無く、千尋は情報でしか蓮治との関係を築けない事を知ってしまいます。
この一連の流れのエゲツなさがとても上手く、記憶障害の書き方の巧みさが凄く出ていました。
千尋の「想い出」には決してなれない事や手帳の中の記録でしか自分の存在を認知して貰えず、千尋はシステマチックでしかもう自分の事を見る事が出来ない存在というのを突き付けて来て。
自分の想いと千尋の感覚。
感情とデータという圧倒的な壁が立ちふさがるのがエグくてエグくて。
蓮治も本当に良い奴で千尋を決して諦められず、千尋も良い子で迷惑をかけている自分を許せず。
三章は主人公もヒロインも良い人同士で、でもそんな良い人が記憶障害というどうしようもない病気に恋を遮られていて、見ていて凄く心を揺さぶられました。
そんな二人の関係が千尋の描く創作と共に一緒に進むのが凄く印象的で。
絵的な見せ方の演出はどの章も素晴らしいのですが、話の演出という意味ではこの章がトップクラスだと思います。
というか、「誰かと一緒に創作をする」というタイプの話が大好きな自分に刺さった所が大きく。
「創作系」が好きな人にはとことん突き刺さる作風かと。
物語が完成した後、千尋は自分の記憶の性質上、恋愛では絶対に蓮治に迷惑をかける存在になるからと別れを切り出し、蓮治に「蓮治に出会ってからの日記」を全て託し別れを切り出し、蓮治はその日記を受け取り一旦別れます。
選択肢によっては蓮治が諦め、日記を駅で破り捨てるという結末になりますが、千尋を諦められない選択肢を選ぶと駅で再び蓮治の事を完全に忘れリセットがかかった千尋と出会い、また再び出会う所から始める…というのがとてもロマンチックで。
「貴方と恋人になると迷惑をかけるから…」という千尋の「迷惑をかけたくない」という願いを聞き入れた上で、「それでもキミが好きだから」と関係をリセットした上で再び出会うとか、良すぎません?
「例え恋人じゃない関係でも、僕はキミと再び会いたい」という蓮治の強過ぎる想いが最高ですし、そもそも自分は「どんな事があってどんな関係になっても絶対にキミを諦めない系」に弱い為、このラストが凄まじく好きで。
だって、例え千尋にリセットがかかっても蓮治の想いは消えないですし、千尋の「記憶」とも言える「自分の出会いから書かれている日記」を受け取るという事は同時に「千尋の中の自分の記憶を全て自分が預かる」と同義じゃないですか。
そんなん、蓮治は千尋から一生離れられないですよ…好きな人なら尚更に。
「好きだからこそ千尋の別れたい願いを尊重するけれど、好きだからこそ離れたくなくてまた会いに行く」とか…リセットがかかってしまう関係だからこそ別れなければならなかったけれど、リセットがかかるからこそ修正出来る関係というのがニクい。
愛情、恋情、友情、親情、そういう言語化出来ない情で結ばれた関係が大好きなので、恋人関係がリセットしても情は消える事無くまた別の関係で出会う二人が好き過ぎました。
創作の流れも、千尋が描き続けた「世界でたった一人の女の子」のラストを蓮治が書き直しますが、女の子を幸福にするラストで奇をてらうならもっと「実は女の子も創作上の存在で、女の子が男の子を描いた瞬間に神の見えざる手が女の子の隣に男の子を書き上げ二人で幸せになる」とかいう創作らしいラストに出来たはずなのに、いきなり「女の子は男の子と幸せになりました」と飛ぶのが蓮治らしいというか。
唐突に創作がハッピーエンドになったので「あ、本当に蓮治は書く才能は無いんだ」という不器用さが見えて、それでも千尋の書いた物語を幸せにしたい気持ちが見えて、雑さが逆に良かったです。
三章では二人は千尋の記憶のリセットで再スタートしますが、群像劇らしく結局は人はどこかで繋がっていて。
例え蓮治に「蓮治の記憶の日記」を渡しても姉の景とのメールが残っていてメールのやり取りから蓮治との関係や出来事、想いを察してしまい、そして再び出会った蓮治からも蓮治の想いを察してしまったり。
結局、蓮治と一度想い合った痕跡が世界のどこかに残っていて、世界から完全に消す事は出来なくて。
四章で蓮治が再び創作で「自分と千尋の物語」を綴り、千尋に読ませる事で自分との出来事と自分の想いを千尋に伝えるというのは「創作物」の締めくくりとして完璧でした。
世界の痕跡と蓮治の小説により蓮治との記憶は無いけれど蓮治の想いを受け取った千尋が再び蓮治と結ばれる姿は非常に感慨深いものがあり。
蓮治の自分と千尋との小説を千尋に見せている際にミズキに「駄目だったら?」と言われても尚、「駄目だったらまた書くさ」というネバーギブアップや千尋の病から来る虚無や申し訳無さや寂しさという儚さが主人公とヒロインとしてとても良く。
全部の章の中で一番好みの関係を持つ主人公とヒロインであり、一番好みの話の展開で、満足度の高い章でした。


『第四章』
この章で夕と優子の過去も語られますが、四章メインなのは久瀬とミズキなので二人の話で語ります。
余命僅かで全てを諦めている青年と、明るく前向きな少女が出会い、青年を諦めから救っていく話。
青年×少女としてはとても好きですし、久瀬の暗い絶望に対しミズキが圧倒的光で照らし出し、グイグイと陽の光の元へ連れ出す構図は最高でした。
ただ、性癖としては大変好みなのですが、物語としてはそれ以上でもそれ以下でもない所が難点。
三章のように話の構図としてのここが良い!!というのをあまり言えず、二人がジワジワと関係を紡いで近付き、離れ、また近付く流れが良い為、話としては地味になっていたなとは思います。
青年×少女の関係が最高だったり、あとは夕と久瀬の漢の関係が良かったり。
あとはミズキが何故ここまでポジティブで明るいのか、明るく生きようとしているのかが優子との過去に絡まり、そのミズキの性格形成に良さがある為、とにかく人間関係の繋がりが良かった章でした。
途中のミズキを襲う久瀬のシーンは「白パケ系のゲームでこういうのをするのか~」と驚きましたが、後半の「優子の過去」でぶっ飛んだ所はあります。
「優子の過去」の衝撃が大きくて、久瀬のシーンがティーンズラブとかレディコミくらいの印象になってしまいました。
やった事自体は最悪ですが、ミズキが圧倒的光で蹴っ飛ばし、そういう最悪な久瀬の深層心理も分かった上で全てを包み込んだので「ミズキ、つえー」となった所が大きいです。
病気のせいがあり自分と引き離す為とはいえ、襲うのは流石に駄目男なので、駄目男をヨシヨシする少女の構図がとてつもなく好きでした。
ミズキが初体験で痛過ぎて「久瀬さん、殴っていいですか?」とか言うのも強さがあって好きです。
最終的にはミズキを受け入れ最後に愛する事を誓い結ばれて…久瀬の命は長くは無いかもですが、人生の最後に隣に誰かが居て一人では無い事は一種の救いがあったのかな?とも思います。
夕と優子の過去編で「長生きする」と言っていた久瀬の運命がこうなるのもまたどこか皮肉なものだなぁとも感じました。
長生きしそうな人が長生きしないというのが中々にリアルです。
あ、でも、バイオリンを焼く際にガソリンは無いと思います。
ガソリンは周りを巻き込んで大爆発する気がするのでガソリンでは少し無理が…せめて描写を灯油にして欲しかったです。


『終章』
夕と優子の過去は四章で語られますが、二人の感想はこっちに。
夕と優子の学生時代の出会いから同棲、そして別れまで。
夕と優子の交流がかなり丁寧に描かれている為、二人のお互いのかけがえのなさを感じました。
一番衝撃的なのは「優子の過去」かなと。
震災後、孤児となった優子を引き取った家で義理の兄に性的虐待を受ける。
結構最近では黒パケゲーではそこそこにありますが白パケゲーではご法度になっている為、「ヒロインが性的虐待を受けていた」設定は久し振りに見ました。
だからこそ一撃は結構重くパンチがあります。
ただ、それ自体はインパクトがあるのですが、それに連なる義理の兄の処遇に納得出来ないというか。
義理の兄、明良の心理は納得は出来ませんが理解はそこそこに出来ます。
夕と同じく震災で実の妹を失い、義理の妹が来て。
最初は雰囲気が似ているから優しくしたけれど接していく内に実の妹との圧倒的な違いを感じ、「何故お前が妹を名乗るんだ」という理不尽な怒りを見せる。
最悪だけど気持ちの流れとしては分からなくも無いです。
性的虐待を受けた優子を夕が受け入れ、明良と対峙し、復讐は決してせず明良との対話で優子は自分が引き取る事だけを告げ別れる。
ここまでは良い、ここまでは納得出来ました。
ただ、明良の最期が「家に火を放ち、そのまま死ぬ」という流れは解せないというか…性的虐待を加えたんだから法的に裁かれて欲しかった所がありました。
こんなの明良のある種の勝ち逃げというか、勝手に性的虐待して勝手に自分で決断して死ぬとか、好きな事だけして勝ち逃げした感じじゃないですか。
普通に法で裁かれて欲しかったですし、その後の雨宮の義理の父と母の対応も。
自分の息子が養女に性的虐待をしていたのだから、まずはその辺りで優子に謝罪するべきですし、優子を救った夕に対して感謝はすれど二人の間にとやかくはもう言えないとは思うんですよね。
そういう雨宮と優子の件が端折られるのでモヤッとした所はあります。
あとは、学生二人で暮らして就職とかの話が出ている中で妊娠の話題になったのは流石に…それは…計画性が無さ過ぎるというか。
学生で優子には義両親が居るとはいえ、二人共実の親無しで二人で暮らしているんだから、将来はカツカツだろう中で「妊娠しました」って正直どうなのよ?と。
そりゃあバンバン中出ししてりゃ子供は出来ますよ、ヤればデキる、最近の小中学生でも知ってるかと。
エロゲだから中出し描写があるのは結構、でも、それが現実問題に絡んで「二人の生活が困窮します」「二人の夢が叶わないかもしれません」の問題に行くのは流石に…
義兄の性的虐待もあったんだから、もう少し性に対して危機感持って下さい。
というかちゃんと避妊して下さい、な気持ちに。
「義兄に性的虐待を受けたヒロインを救う」→「学生で二人一緒に困窮しながら暮らす」→「(エロゲなので)バンバン中出しセックスする」→「妊娠しました、学生だからこれから大変です」の流れがどうしても歪で歪で。
せめてリアルに描くなら避妊をしてて欲しかったです…二人の関係の描き方はとても丁寧なのに、これじゃ夕と優子がただの性に無頓着なアホに見えて残念でした。
ミズキとの関係は四章で描かれますが、優子が人間じゃない事はなんとなく察してはいました。
前編でも優子は神出鬼没な人でしたし、後編のOPアニメーションは見た事があった為、天から降りてくる優子の描写でなんとなく死者かなーと。
ただ、前編では夕と優子は語り部ではありますが、どういう関係かは分からなかった為、後編で綺麗に二人の関係が描かれていたのは良かったです。
クリスマスの日、優子の命日に一晩だけ教会で会い、自分達が再び出会えるきっかけを作ってくれた四組の男女の話を語り合う物語だったのですね。
命日に一日だけ再会出来るというのはロマンがある為、クリスマスと教会も絡まり厳かな雰囲気がとても好きでした。



全体の物語としては三章以外は自分に引っかかる所が少なく「普通」でしたが、圧倒的画像での演出力を見れたのでその点は本当に良かったです。
群像劇として見たかった「話自体のどんでん返し」や「人物の印象の反転」などは見ることは出来ませんでしたが、全てのキャラクターが繋がって行ったり、紘の姉の凪が過去に関わっていたり、屋上の鍵が優子からミズキへと綺麗にほぼ全員の手に渡って行くというのは群像劇で小物が渡っていく描写が好きなので見ていて楽しかったです。
間違いなくノベルゲーム史に名を残す演出でした。
今後のminoriで今作と同演出が見れる…とは流石に思いませんが、minoriの美術力の高さは本当に素晴らしい為、今後の物語もまた素晴らしい背景や人物画に期待しつつ、メーカーを追って行こうと思います。


(そういえば「Second Fan Mix」と出会いなどが変わっていたので、「Second Fan Mix」は大まかな人間関係を伝えるためのFDで完全に別時間軸だという事を知りました。話が繋がっていると思っていたのでその辺りはちょっと残念でした。)



※ゲームの攻略で検索される方がいらっしゃるみたいなので参考にさせて頂いた攻略サイト様を失礼します。
 参考攻略サイト様:Gamer's Square 様
http://gamerssquare.fc2web.com/index.htm
 ef - the latter tale. ページ
http://gamerssquare.fc2web.com/efthelattertale.htm