ひっそりと群生

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【交響曲第十番「融合」】感想

【群像劇15禁】



2021年09月01日配信
『ハルノサクラ』様
交響曲第十番「融合」】(PC&ブラウザ)(15禁) ※リンク先ノベルゲームコレクション
以下感想です。








水の粒が落ちる。
世界は流転する、そしていつか再び融合する。



『水の粒が落ちる。群れとなって移動する動物たちのように、我先にと地面に向かって雨は降り注ぐ。
 そうして水の粒は石に跳ねて、草へと跳ねて、既に跳ね終わった水が集まる水たまりへと跳ねて、そうやって様々な音を奏でながら、雨は地上に恵みをもたらしていく。
 ――全4楽章で奏でる、人間讃歌の交響曲。』
(公式より引用)



プレイ時間は約20分くらい。
性描写若干有り。
分岐無し。


空の果てからこんにちは』(※リンク先感想)のハルノサクラさんの作品。


雨の透明さと雨の音と雨の匂いを感じながら少年と少女が洞窟で出会うお話。
序盤は違和感を覚えながらも読み進めていましたが、とある事が分かった瞬間、今まで感じていた違和感の正体に気づき驚きました。
あぁ、だから、ああいう視点の違いだったのか…と。
全4章の中で時代が進み人が進み、やがてまた帰って来る。
そんな壮大さが描かれていました。



『システム、演出』
ティラノ製。
コンフィグ無し、セーブロードもありません。
プレイ時間的に問題は無かったのですが、30分くらいの空き時間が無いとプレイが難しくはあります。


『音楽』
雨の音と虫の雑音が効果的に使われていました。
BGMも、ちゃんと音量調節がされている所にこだわりを感じ、時代は変わっても常に有り続ける雨に普遍さを感じました。


『絵』
基本背景のみ。
一枚だけCG有り。
1章~4章、それぞれの時代の違いが表れていて良かったです。
作中一枚しか無いイラストもこう…運命の二人というか、創生という感じが出ていて。
雨の中で抱き合う男女の絵がとても美しかったです。


『物語』
とても綺麗に纏まっていました。
男女の輪廻転生系が好きだったり、巡り巡る系が好きだったり、そういう方々に刺さると思います。
ネタバレになるのでここでは強く言えないのですが、少女と少年、それぞれの地の文の表現や状況描写がとある事が判明した後に振り返ると上手い具合に描かれていて。
なるほど!と唸りました。
ノベルゲームならではな作りでした。


『好みのポイント』
3章の男女は1章の少年と少女で良いのでしょうか?
なんとなく空気感からそういう気がするのですが…そうだったら輪廻転生系に好みの手綱を握られているので大好きです!
色々な立場で複雑そうな関係はありますが、どの歴史でも男女が好きな人と結ばれているのが良かったです。
(あと、リドミで遊びまくるフリゲ大好きなのでリドミ探しがとても楽しかったです。数字の要素は難しかったですが、リドミへの熱い想い、しっかりと受け取りました!!)





以下ネタバレ含めての感想です





目の無い部族の少女と耳の無い部族の少年が出会う物語。
最初、少女と少年の視点が入れ替わる度に微妙な違いを何となく感じていましたが、二人の違いが分かると同時に、少女の視点の方では背景画像が無く、少年の視点の方ではSEが無くBGMがプレイヤーがギリギリ聞こえるくらいの音量になっている事に気付きました。
地の文もまた違いがあり、それぞれ視覚と聴覚での描写が無いんですよね、上手い、これぞまさにノベルゲーム。
ノベルゲームならではの表現の違いを感じました。


1章では少女と少年の出会い。
2章では少女と少年の双子の娘と息子の物語で二人が男女の関係を持ちます。
この辺りが禁忌感がありつつ、同時に昔話の兄妹婚などの神話感があって好きでした。
3章では現代で男女が出会い。
そして4章で耳の無い人間と目の無い人間が生み出されコールドスリープさせられており、核などで人類が滅びるような描写がされます。
つまり、4章から再び1章に戻る構図になっていて。
最初は違う部族(違う人種or生物)が結ばれるお話かと思っていましたが、かなり壮大なSF&ループ物でビックリ。
序盤の縄文時代のような生活描写から打って変わってSFになり、短い中で多くの時代を周りタイムトラベルしたような気持ちになる作品でした。


それぞれの器官が無い人間の細やかな感じ方の違いを描き、壮大なSF物で纏め上げる。
とても大きな時代をと人間の必ず繰り返す業と運命、けれど「必ず結ばれ同じ物に帰結する」という美しさを見れる一作でした。